ドイツ最大のエレクトロニック・レーベルKompakt唯一の日本人アーティストとしてKaito名義の作品を発表する傍ら、ギリシャのKlik Recordsを拠点としても活動を続けるHiroshi Watanabe。2002年にリリースされたKaitoの1stアルバム『Special Life』に収録された「Intension」がFrancois K.のミックスCDに収録されるなど瞬く間に大反響を呼び、10年以上が経過した現在も色褪せることのない名曲として語り継がれている。その後、Kompaktのコンピレーション・アルバム『Total 6』にも収録された表題曲を含む2ndアルバム『Hundred Million Light Years』をリリース。この2枚のアルバムで一躍Kaitoの名は世界中に浸透し、バルセロナの“Sonar Festival”などのビック・イベントでライヴを披露、屈指のパーティー・アニマル達を熱狂の渦に巻き込んだ。Kaitoのオリジナル・アルバムでは常に対になるビートレス・アルバムも制作され、繊細かつ美しい旋律により幅広い音楽ファンに受け入れられている。3rdアルバム『Trust』に対しての『Trust Less』では更にアコースティックな要素も取り入れ、リスニング機能をより高めた作品となった。本名のHiroshi Watanabe名義では自身最大のセールスを記録した1stアルバム『Genesis』に続き、2011年に『Sync Positive』を発表。タイトルが示す通り、リスナーを鼓舞させる渾身の作品としてロング・ヒットとなっている。またリミックスを機に交流を深めてきた曽我部恵一との異色コラボレーション・アルバム『Life, Love』ではメランコリックな音像と歌声が溶け合った叙情的なサウンドで新境地を切り拓いている。1994年からスタートさせたDJ活動は時代の移り変わりと共に2004年にラップトップでのプレイ・スタイルを確立させ、2009年には様々な表現に挑み続けるべくプロフェッショナルDJコントローラー「TR-1」をVestaxと共同開発。後に現場での感覚を経て「TR-1 MKII」へとアップグレードさせている。一方、ニューヨーク在住時代に出会ったグラフィック・デザイナー、北原剛彦とのダウンテンポ・プロジェクトTreadでは、シンプルで柔らかい上音と乾いたビートの融合を絶妙のバランスで確立し、ハウス、テクノ、ヒップ・ホップなどジャンルの壁を越えて多方面から注目を浴びることに。レーベルnormから限定生産された5枚のアルバムと4枚のEPは不変の価値を持つ名盤として知られている。2013年にはKompaktの20周年を記念して制作された二枚組DJミックス『Recontact』をリリース、更にKaito名義としては4年振りとなるアルバム『Until the End of Time』を発表。新生Kaitoとも言える壮大なサウンドスケープが描かれている。