BEST ALBUM & COMPILATION OF 2011


この「BEST ALBUM & COMPILATION OF 2011」は、他のアワードとは異なり、clubberia編集部の独断と偏見で今年リリースされた名盤を20枚紹介したい。当初ランキング形式にする予定だったが、実際に絞りこんでいく中で、とてもじゃないが順位付けすることは不可能だと感じランキング付けはしなかったが、どれも素晴らしいアルバムなのでぜひチェックしてほしい。(A to Z)

   

DJ Cam / SEVEN (INFLAMABLE)

1994年のデビューアルバム「UNDERGROUND VIBES」で世界を唸らせて以降、アンダーグラウンドヒップホップシーン最重要アクトとして活躍を続けるフランスが世界に誇るDJ Cam。本作「SEVEN」は、2010年頃から発売が噂され、世界中のリスナーが待ち焦がれたまさに待望の1枚! 1990年代中期を彷彿とさせるジャジーなサンプル、深く浸透するアブストラクトな雰囲気、すっと染み渡るゲストヴォーカルの歌声など、これまでのDJ Camファンをもちろん、MASSIVE ATTACK、RADIOHEAD、JAMES BLAKE周辺のファンまでアピールする好内容だ。


   

DJ Jazzy Jeff & Ayah / BACK FOR MORE (Jazzy Jeff)

以前、高いクオリティーを誇りながらフリーダウンロードができたアルバムとして、瞬く間に話題となったDJ Jazzy Jeff / Ayah「BACK FOR MORE」。現在もデータは、5ドル(US)とすごい安く購入でるがが侮るなかれ。絶妙な古典ネタを使ったJazzy Jeffのトラックに、Ayahのムード溢れる歌声がばっちりはまったソウルフルなプロダクションとなっている。ヒップホップ、ソウル、R&Bファンはもちろん、普段この手のジャンルを聞かない人でも聞き入ってしまうと思う。ポジティブな雰囲気が安心感を与えてくれるこのアルバムは、サンプルが届いてからかなりヘビーローテーションだった。ラウンジ系のパーティーや、朝方のフロアで聞きたい。


   

Four Tet / Fabriclive 59 (Fabric)

名門FABRICのミックスシリーズに遂にFour Tetが登場した。あのThom Yorkeが彼の大ファンであることを公言し、現在までにRADIOHEADのリミックスを始め、Thom Yorke/Four Tet/Burial名義で共作のシングルをリリース。また今までにAphex Twin、The Cinematic Orchesteraなど大物アーティストもリミックスを依頼する程の人気者だ。彼が2006年の「DJ KICKS」以来実に5年振りとなる正式ミックスCDをリリースだった。本作にはBurialを始め、Manitoba、Ricardo Villalobosなどの極上トラックを全27曲を収録された。


   

Indopepsychics / INFINITE IN ALL DIRECTIONS Selected by DJ Kensei (PROGRESSIVE FOrM)

東京のアンダーグラウンドシーンで活躍するDJ Kensei、nik、D.O.I.によるプロダクションチーム、Indopepsychics。2002年に発表された2枚のアルバム「MECKISH」及び「LEIWAND」収録曲に未発表トラックを加え、DJ Kenseiがセレクトした内容となっている。 2010年にWARPからリリースされたFlying Lotusの傑作「Cosmogramma」や、Flying Lotus主催レーベルBrainfeederの作品などを手掛けるLow End Theoryの首領、Daddy Kevによるリマスタリングで至高の楽曲群が10年の時を経て甦った。


   

James Blake / James Blake (Polydor)

2011年、クラブシーンで最も話題をさらったJames Blake待望の1stアルバム。ソウル/ブルースの影響を感じるボーカルと強烈なベース音をはじめとした独自の世界観を持つサウンドの融合は、近年様々なジャンルとのクロスオーバー化が進んでいるUKダブステップシーンの中で一際意表をつくものであり、ポストサウンドの象徴と言っていいだろう。


   

Stereociti / KAWASAKI (Mojuba)

東京アンダーグラウンドシーンにて多くのプロップスを獲得しているアーティストStereocitiことKen Sumitani。本作「KAWASAKI」は、彼の出身地である川崎を漢字でタイプしたアートワークがインパクト大であるが、内容は、Nick Sole、Sven Weisemann、Oracyといったレーベルメイトとも共振するこれまでのSTEREOCITIの集大成的な漆黒のディープハウスが詰まった作品となっている。ディープネスとタフネスを兼ね備えたトラックがずらりと並ぶ、まさに、世界中で静かに湧き上がるニューディープハウス/ビートダウンムーブメントの新たな指標となる傑作だろう。


   

Koss, Henriksson, Mullaert / THE Mo"LLAN SESSIONS (Mule Electronic)

ありそうでなかったこのセッション、札幌とスウェーデンのランドスケープ。日本を代表するプロデューサーKoss aka.Kuniyukiと日本でも絶大な人気を誇るMinilogueの2人がタッグを組んだCD2枚組の強力盤。彼らの世界感から生まれた長時間のセッションを凝縮した内容で、ダウンテンポからハウス、テクノといった楽曲でコンパイルされている。また2枚目は2トラックしか収録されておらず、最後のトラック「Horizon」はなんと60分におよぶ大作になっている。約1年越しで完成させたプロジェクトが遂に完成させた話題の1枚。


   

Marcel Dettmann / CONDUCTED (Music Man Records)

ドイツ名門クラブBERGHAINのレジデントにしてOSTGUT TONレーベルの大人気DJ、Marcel Dettmann待望の最新DJミックスCDがベルギーのMUSIC MANからリリースされた。今回のDJミックスには、新旧さまざまなテクノトラックが収録されSandwell DistrictやShed周辺のアーティスト作品も多数収録されている。ハード且つディープに攻める今最も勢いのあるベルリンテクノDJミックス。


   

Minguss / NIGHT OF THE VISION (Izidoa)

日本人女性アーティストMingussが、Hiroshi Watanabeの手による全面プロデュースで制作されたアルバム。Minguss自身が直接デモ音源を渡しプロデュースが実現したという本作は、クラシック?ジャズといったプログラムをアカデミックに習得していったバックグラウンドを持つ彼女が、2ndアルバム「super sonic sound」リリース後に傾倒している、デトロイトテクノなどのクラブミュージックに大きく踏み出した作品となっている。


   

Moomin / THE STORY ABOUT YOU (Smallville)

ディープハウスリバイバルシーンを牽引し続けるレーベル"SMALLVILLE"からリリースされた新鋭アーティストMoominのデビューアルバム。オーガニックでメランコリックなディープハウスサウンドを披露、ローランドやSP1200、コーグなどのヴィンテージ機材を使用し、ミニマルなループサウンドが多層的なレイヤーを生み出していく、まさに"SMALLVILLE"?"DIAL"路線の美麗ミニマルディープハウスサウンド。イーブンキックの快楽性を極めたシンプルなハウスサウンドはシーンでの高い評価を獲得した。


   

Nicolas Jaar / Space Is Only Noise (Circus Company)

Dop「GREATEST HITS」でここ日本でも一気にブレイクの兆しを見せるレーベル"CIRCUS COMPANY"。その"CIRCUS COMPANY"が2011年満を持して届けてくれたの逸材がNicolas Jaar。2008年NYの先鋭的レーベル"WOLF + LAMB MUSIC"からデビューを果たし、Ricardo VillalobosとAphex Twinを引き合いだされ、わずか20才にしてFABRIC、PANORAMA BAR、BAR 25といった人気クラブでのプレイを経験と、まさに新世代クラブミュージックシーン期待の若手といえる存在だ。本作「SPACE IS ONLY NOISE」はいわゆるダンスミュージックの範疇に留まらない様々なスタイルのトラックが収められている。


   

Omar-S / It Can Be Done But Only I Can Do It (Fxhe Records)

Theo Parrish、Moodymann以降のデトロイトネクストジェネレーションとして、今や群を抜いて圧倒的存在感を示しているOmar-S」。これは、無二の個性を映し出した1stアルバム「Just Ask The Lonely」から実に6年ぶりとなる作品で、自身のレーベル"FXHE RECORDS"からリリースされた。クラシックなダンスミュージックが持つプリミティヴな魅力と、デトロイトという「テクノ」にとって特別なエリアで育った感性が一体となり無二の魅力となったオールドスクールハウス。シンプルかつドープ。この手のトラックにおいてのポテンシャルの高さはやはり圧倒的だ。


   

Plaid / Scintilli (Warp / Beat Records)

UKテクノの黎明期に数多くの革新的な作品を発表してきたPlaid。後のエレクトロニカや IDMといったテクノシーンにおいて多大な影響を与え、Aphex TwinやLFOなどと肩を並べる重鎮的存在としても知られる。作はエレクトロニカ、ブレイクビーツ、デトロイトテクノを融合させた彼ら特有のオリジナルサウンドを残しつつ、メロディアスで緻密に組み立てられたサウンドと美しく複雑なリズムで構成されており、正に芸術作品と言えるアルバムに仕上がっている。


   

Radiohead / The King of Limbs (Hostess Entertainmen)

アルバム発売の告知解禁からたった5週間でCDリリースされたが、まずは専用サイトにてデジタル配信および、10インチのアナログ盤やCD、ニュースペーパー、625個のアートワークなどをセットにした"ニュースペーパーアルバム"という形態で先行発売された。2007年発表のアルバム「In Rainbows」では、ユーザーが価格を決めることができるダウンロード形式での販売をいち早く採用して話題となった彼らだが、それ以来3年半ぶりとなる新作もユニークな方法で届けられることとなった。常に変化を求め、革新的な作品だった今作も、私たちの知っているRadioheadとは、まったく違ったものとなっていた。


   

Ricardo Villalobos & Max Loderbauer / Re: Ecm (Ecm)

コンテンポラリーなジャズ、クラシック、アコースティックな音楽を配給することを目的とされ、設立から40年が経った"ECM"で初となる試みが実現した。ミニマルテクノの第1人者であるRicardo VillalobosとMoritz Von Oswald Trioやのメンバーとして活躍するMax Loderbauerの2人が"ECM"作品をリミックスすることとなった奇跡のコラボレート。クラブミュージック的なグルーヴは皆無、張り詰めたエレクトロニクスの空気感に生演奏の音がさしこまれ、呼吸の仕方を忘れてしまいそうな世界観を作り上げている。


   

Roman Flugel / FATTY FOLDERS (Dial)

ドイツ、テクノシーンの重鎮、Roman Flugelが本人名義での初のフルアルバムをリリースした。そしてLawrenceのレーベル"DIAL"からのリリースということもあって、その時点で買いだ。完全なRomanワールド。幻想的なモダンディープハウスから実験的なロービート、エレクトロといった内容に仕上がっている。特質すべき点はベースライン、メロディーラインが今まで聞いたことのないフレーズでありきたりなグルーヴが一切感じられない、唯一無二のトラックばかりであるということ。頭に描いていた”Romanらしい作品ってこんな感じだろうな”って思っていた予想を、いい意味で裏切られた。


   

Thundercat / The Golden Age Of Apocalypse (BRAINFEEDER)

天才ベーシストThundercatの衝撃的デビューアルバムは、 神憑った演奏スキルと並外れた宇宙的感性の両方を兼ね備える超ファンタジックな大傑作となった。Flying Lotusの協力を得てここに完成したアルバムは、彼の魅力を余すことなく伝えるものであり、本格的なジャズ、フュージョンから未来的なエレクトロニックサウンドまでを融合させた時代性を超越する名盤として音楽史に残るだろう。


   

Timmy Regisford / FELA IN THE HOUSE OF SHELTER (SHELTER RECORDS)

NYアンダーグラウンドハウスシーンのカリスマ、Timmy Regisfordが敬愛するアーティストが、Fela Kutiである。そして本作は、彼の楽曲をリミックスした世界初のFela Kutiトリビュートアルバムとなっている。生前のFela本人とも面識を持ち、 今回、世界で始めてFela Kutiの全楽曲を公式にリミックスすることを許されたNYハウスシーンのマエストロ、Timmy RegisfordのFelaの作品に対する並々ならぬ愛情に包まれた全ディープハウスファン必聴の1枚。


   

Xhin / SWORD (STROBOSCOPIC ARTEFACTS)

FREAKS VILLAGEで初来日を果たしたLucyが主宰するレーベル"STROBOSCOPIC ARTEFACTS"から、Lucyと肩を並べる存在のXhin。本作では、あえて4/4ビートを封印し、ごつごつとした硬質なブレイクビーツを展開した。緊迫感溢れるシンセリフ、インダストリアルな重量級ビート、地底深く潜るかのようなヒンヤリとしたサウンドスケープ、Xhinが持つ広がりのある世界観が堪能できる秀作に仕上がっている。


   

砂原良徳 / liminal (KI/OON)

砂原良徳、10年ぶりのリリースとなれば、否応にも話題となった5thアルバム「Liminal」。「自分が感じた世の中の雰囲気をそのままアウトプットした」という本作は、優美なサウンドフォルムをくっきりと浮かびあがらせていた「Lovebeat」から一転、音の輪郭をより抽象的なものへとシフトさせた。「Lovebeat」のような、普遍的な美しさとは対極の、無常さを感じる時間軸があり、彼の電子音楽美学が詰め込まれたような衝撃作となっている。