和田 哲郎

WASABEATディレクター

クラブミュージック専門の音楽配信サイト『WASABEAT』のディレクターとしてサイト内企画や記事執筆を担当。block.fmの番組"WASABEAT MUSIC SHOWCASE NO BIAS"でもTakeru John Otoguroと共にパーソナリティーを務めている。

https://www.wasabeat.jp

2015年のクラブミュージックシーン

 今年のクラブミュージックシーンを振り返ると昨年末から起きていたハウスの盛り上がりの波がきたというのが大きな印象です。怒濤の勢いで新星を輩出していたベースミュージックのシーンは落ち着きをみせ、大きなリリースも既存のアーティストのものが多かったです。
 そのなかでハウスは、ディープハウスシーンでもスウェーデンのレーベルLocal Talkの積極的なリリースやアメリカのオルタナティブなハウスシーンを作り上げつつある、Mister Saturday NightやProibitoなどのレーベルの新しい感覚のトラックはすばらしいものが多かったです。また、昨年末からのEDMに由来するフューチャーハウスの流れは大きくなっていき、Don DiabloやOliver Heldensなどのダイナミックなトラックや、90年代のハウス~ヒップホップ/R&Bのトラックをモダンにアップデートしカバーしたハウスチューンなどのヒットが目立ちました。これは同時に、現在のクラブミュージックシーンの中心的なムーブメントであるEDMがより多様化して定着していっているということだとも言えると思います。日本でもなかなか受容されなかったトラップがUltra Japanのメインステージのピークタイムを飾るなど、これまで限定的にとらえられがちだった日本でのEDMというムーブメントが、ようやくサウンド面で広がりを持ったのも今年の象徴的なできごとと言えるのではないでしょうか。
 来年は勢いを取り戻したハウスシーンが、さらにどのような新しい流れをみせてくれるのか、EDMの多様化はまだまだ広がり続けるのかという点が興味深いです。