私は現在オヤイデ電気に勤めています。弊社はDJ機材まわりのケーブルを扱っていますし、以前も機材メーカーに勤務していたことがありますので、その観点から書かせていただきます。
DJ機材もプレイされるメディアの変遷に合わせて、技術的な発展をしています。わかりやすく言いますと、プレイされるメデイアがレコードからCDに変わった時は、機材もターンテーブルのみでなく、DJ用CDプレーヤーが増えてきたことなどが挙げられるでしょう。
ここ数年は、DJ用コントローラーやオーディオインターフェイス付きのミキサーの発展にも先が見えている状態です。機種が飽和して、メーカーによる差異を表すことが困難になっています。これはあらゆるジャンルでの共通点ゆえ、致し方ない部分があります。そのような状況のなかで、リッチー・ホウティンが懇意にしているエンジニアと開発したミキサー、model1はインパクトがありました。アナログ回路搭載ですとか、EQはないがフィルターが付いているなど特徴はさまざまです。しかし私が注目したのは、いくら世界的に有名とはいえ、いちアーティストが主導してDJミキサーを作ってしまったことでした。言葉で言い表すことは簡単ですが、実際にミキサーを開発/生産/販売するまでには、相当な労力や資金が必要になります。プロモーションもPLAY DIFFERENTLYと題して欧米や日本で行われました。日本でのテクニークでのイベントでは、弊社も協賛しました。プロモーションを実際のDJのツアーとしてやることは、リッチーにとっては、なんでもないことでしょう。
このミキサーは既存のメーカーが開発した製品ではありません。元メーカーの優秀なエンジニアがいたり、リッチー・ホウティンだから可能なことがあるとはいえ、アーティストにこんなことができてしまうとは、メーカーで働く者にとって衝撃でした。いろいろ考えさせられました。