3月28日からJAPANツアーが始まり、3月31日にミックスCD「Boogy Bytes Vol.4」をリリースする女帝ELLEN ALLIEN。彼女にアルバムの内容や、現在のテクノシーン、日本でのレコード屋やクラブの相次ぐ閉店、2008年の動向などについて語ってもらいました。
−これまで日本には数多く来日されていますが、今回は「Bpitch Control」のミックスシリーズ「BOOGY BYTES Vol.4」のリリースツアーということですね。まず「BOOGYBYTES Vol.4」の内容を教えていただけますか。またアルバム制作の意図、前回作品との関連性なども教えてください。
日本にはCDのプロモーションのためだけに行くのではなくて、日本でプレイして、日本の人々とすてきな時間を過ごすために行くのよ。日本の文化からそのバイブスをを得るために、また戻ってくる必要があると感じていました。元々旅行をしたり、他の国の文化を知ったりすることは好きなの。
知っている人もいると思うけど、以前から「Boogy Byte」シリーズはBpitch Controlからリリースされています。今回の「Boogy Byte 4」と、ロンドンにあるクラブ「Fabric」からのミックスCDシリーズのために、去年私が制作したミックスCDとを比べると、「BB4」のコンセプトがわかりやすくなると思います。
「Fabric」のミックスは成功したんですが、おもにダンスフロアに焦点を当てたものだったので、「BB4」では違うことに挑戦しようと思いました。なにかもっとこう、アートなものを作り出そうと。それによってもっと私が抱いている、現代のヨーロッパのダンスミュージックの印象というものを表現する幅が広がるのではないのかなと。
それによって選曲もすごくアーティスティックになってきたと思います。やっていく中で、どんどんコンセプトがはっきりしていきましたね。「Boogy Bytes」の選曲をするときは、私が好きな曲や、好きなアーティストの楽曲は幅広く受け入れていました。新しいクラブを盛り上げるためだけの音楽を作り出すことはそんなに重要ではなくて、もっとサウンドアドベンチャーを作り出すような、1つ1つのトラックが重要なんです。多くのミニマルのトラックは、騒々しかったり特別なメロディーを持っています。このミックスは最近の私のテイストそのものなのです。
−「BOOGY BYTES」のジャケットは毎回様々な話題を呼びますが、どういった経緯であのようなデザインにされるのですか。
この一連の撮影をしてくれたAxel Jansenは、ベルリンで展示会をしていた写真家で、主に音楽家、俳優、政治家などの写真を撮っているの。そこで私は彼にBpitch ControlのミックスCDのコンセプトに合わせて作品を撮らない?と聞いてみたの。写真はすべて私たちアーティストが動いてる写真なんだけど、その意味っていうのは、「how you can feel inside while a life like we have(リスナーが私たちのような人生を送るとき、どう感じられるか)」を映し出すってことなの。私はこのアイディアがとても気に入っていて、そして実現につながったのよ。私たちの生活はめまぐるしく動いていて、それを「BB」のリスナーも体験できるようになっているのよ。。
−「BOOGY BYTES」にはLucio Aquilinaなどの若手からRicardo Villalobos、Gaiserなどの大御所まで幅広く収録されていますが、最近特に注目されているアーティストはいますか?また注目されているレーベルなどはありますか?
実際ヨーロッパのダンスミュージックは移り変わりがあるの。新しい世代のアーティストが現れて、彼らは何かしらの異なったバイブスをもっているの。彼らは私たちみたいに過去のダンスミュージックのあり方とうか、そういったものへのつながりは強くなくて、そのかわり、ありふれてない、新しい音を作り出すんです。
私はもちろんそういった移り変わりを受け入れるし、それがすごく好きなの。だから私の興味は私自身がどう変化するかに注がれて、時代によるサウンドの移り変わりにもっと注目するようになったわ。それが新しいアーティスト、若いアーティストを選ぶ理由だし、そこにあるレーベルや名前というものは考えない。
CD全体を私が求める雰囲気に作り上げるには何がほしいか、そのための選曲なんです。始めはたとえ実験的で、ゆっくりであろうと、全体のミックスを見ると動きが見えるんです。そういったモーションは近年リリースされている多くのエレクトロニック・ミュージックを象徴しているものだと思います。そうやってなんだかんだ1つのジャンルとしての輪が成り立ってるんです。
−今回のミックスCDの中には「BOOGY BYTES Vol.2」を担当したSascha Funkeの楽曲も収録されていますね。彼は「レーベル初期からの中心人物」ということですが、レーベルにおいて彼はどういう存在ですか?
Sascha Funkeは、すばらしいアーティストであると同時にとても仲のいい友人よ。彼はレーベルの初期からのメンバーで、私自身前から彼の音が好きなの。彼は「ロマンチックテクノ」とでもいうべき彼独自のサウンドを持っていて、私はそれをすごく尊敬しています。だから彼が私のレーベルにいることや、彼と一緒に働けることをすごく誇りに思ってるんです。
今発売されている彼のアルバム「Mango」もすばらしいと思うわ。アルバムの中でも、アーティストとしての進歩をうかがえると思うわ。「Mango」は「テクノ」であることにこだわった、2008年でもっともすばらしいアルバムの1つになると思います。
−最近ModeselektorやPAUL KALKBRENNERなどBpitch Controlのアーティストが日本に来日されていますが、みなさんにとっての日本のイメージはどうでしょうか?
私たちはみんな日本が大好きなのよ。私たちにとって、日本からのブッキングオファーは成功、そして純粋に私たちの音楽が受け入れられたことを意味しているの。日本はエレクトロニックミュージックの中でとても大切な市場だと感じているわ!
日本とドイツって似ているところがあって、それが私をこの国でミニマルなサウンドを奏でたいという欲望に駆り立てるのよ。東京の道ってときどきドイツを思い起こさせることがあるのよ。それぞれの文化に触れたときに生まれる感情はまったく違うにせよ、私は日本が大好きよ。
日本の人々ってアーティストに対してとても好意的で、敬意をもって接してくれるわよね。それにみんなほとんどヒステリックにならないし。とても安心できるのよね。そのあたりはヨーロッパ人として、日本人から多くのことを学んだわ。私たちはみんな、その中でプレイできるのはとても気持ちよくて、最高なことだと思っているわ!
−今回は東京、大阪、名古屋と三カ所を回りますが、各地での過去のパーティーの印象を教えてください。またこれまででもっとも印象的だったパーティーはありますか?
私は大きなフェスや大型のクラブでもプレイしたこともあるし、小さな町をツアーで渡っていたこともあるわ。でも毎回できるだけオーディエンスに近づきたいって思うから、どちらかというと小さいクラブでプレイするのが好きなのよ。
私って元来「世界」というものに興味を持っていて、ドイツの白人文化がどのように、私を――つまり女性DJ、プロデューサー、レーベルオーナー、ミュージシャンである私をどのように変化させているかということに興味があるの。なぜかって、それが私を成り立たせている要素だから。
この世界にはいろいろな人種や文化が溢れていて、私はその中でもとりわけ感覚論的なものにすごく惹かれるの。建築、グラフィック、ファッション、食べ物とかね。でも日本の文化はこのうちのどれをとっても他国の文化と違っていて、比べてみるとすごくおもしろいのよ。とくに、ミニマリスティックで必要最小限に切り詰めたアプローチをするところがね。それと比べるとドイツってまったくスピリチュアルじゃなくて、もっと重たい感じなのよ。
−日本に来日した際はCISCOによく行かれるということですが、ここ最近の日本ではCISCOや他のレコード屋、そしてクラブも続々と閉店してしまっています。この現状をどう思われますか。
ホントひどいことだわ! CISCOは私が東京で最初に見つけたレコード店で、大好きなお店だったの。彼らは、私たちのサブカルチャーを動かす上で重要な、海外との幅広いネットワークを持っていたわよね。本当に残念なことだわ。知っていると思うけど、ドイツではクラブやバーの中でタバコを吸うのは禁止されているの。すごい革命でしょ!?それが起こる前はみんなクラブやバーでタバコが吸えなくなることをとても恐れていたけど、でも実際それが起こった今では、みんなそれを受け入れているわ。若い人たちがこの動きに流されずに、何らかのムーブメントを起こしてくれることを願っています。そして絶対何か起こってくれると信じています!
−あなたは楽曲制作、レーベルオーナー、ファッションブランドのデザイナー、ジャケットなどのアートワークとあらゆる顔を持ち、高い評価を受けていますが、どのようなところからインスピレーションを受けているのでしょうか?
アートと人生ね。私はアート、音楽、文学、旅行、ファッション、もの、暮らし、食べ物、ヨガ、そして友達と家族を愛しているの。そこからくる私の様々な経験や、私の人生の生き方、それらが合わさって、また合わさって、大きなインスピレーションとなるのよ。
そこから生まれるアイデアを頭の中で整理するのは、おそらくあなたが想像する以上にむずかしかったりすると思うの。でも私のすばらしいチームのおかげで、私はやりたいことをすべて実現できているのよ。
私の狙いはただ単に色々な経験を重ね合わせるだけじゃなのよ。私が尊敬したり、一緒に何かを作り出したいと思っている仲間が入ってこられるような、チームやコミュニティー、集団を作り出すことなの。
だからBpitchや、私に関連する人やもの(たとえばSascha Funkeとかね)は、みんながそれぞれのアイディアや情熱を、試し、交換するところで、私にとっては本当にかわいい一種の宇宙のようなものなの。
−日本でも今年からあなたのブランドが展開されるそうですが、これについて教えていただけますか? またどこで買えるのでしょうか?
わたしのウェブサイト(http://www.ellenallien.de)で見れるわよ。噂どおり、私たちのコレクションを日本で必ず披露する日が来るわよ。夏には小さいけれどもTシャツのコレクションが上がるし、冬にはレディースのコレクションをもっと大々的にやるつもりよ。
−では2008年ELLEN ALLIENとBpitch Controlの予定をお聞かせください。
今はアルバム「SOOL」を作り終えたところ。その中には亡くなった私の祖母――Friedaのために書いた曲もあるのよ。彼女は今でも私の人生の中でもっとも大切な人の1人なの。私自身いつも彼女のことを考えていて、彼女の存在をいつも強く感じるし、いつも隣にいてくれていると思っています。
サウンド的には、一貫して必要最小限の音量とメロディでつなぎとめられている作品ね。私ってめったにボーカルトラックを使わなくて、今回は3曲だけしかボーカルを使っていないし。プロデュースはAGF、Holger Zilske、Apparatと一緒にしていて、ミニマリスティックなアレンジになるように務めたの。私自身そのできばえにすごく満足しているわ!
あとはさっきも言ったように「Ellen Allien Fashion」からは夏には小さなTシャツのコレクション、冬にはより大きい規模でのレディースコレクションが控えているわ。
−最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
みんな、音楽に対する情熱で私を何年もサポートしてくれて本当にありがとう!あなたたちがいつもわたしのインスピレーションとなっているのよ!みんなが本当に楽しんで私のプレイを聞いてくれるから、私はあなたたちの前でDJプレイするのが大好きです!!!
本 当 に ど う も あ り が と う !