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INTRODUCTION


6枚目のスタジオオリジナルアルバム「ラストナイト」を3月26日に発売したMOBY。 全15曲の新作はモービーのホームタウンであるニューヨーク/マンハッタンの自宅スタジオにて制作された。ミックスを担当したのはレディオヘッドやシザー・シスターズとの仕事で知られるDan Grech-Maguerat。新作にはゲストボーカリストも数人参加しており、なかでもハイライトはあのオリジネーターにして最強のMC、グランドマスター・カズ (The Sugar Hill Gang「Rapper's Delight」の作詞を手がけたことで有名)が参加。他に同じニューヨーク出身のバンド「Kudu」のSylviaや、UKからMC Aynzli、そしてNigerian 419 Crewなどとのコラボレーションが実現した。 この制作の背景や意気込みを伺うべくMOBYにメールインタビューすることに成功した。


INTERVIEW


LAST NIGHT

− 今作もあなたの楽曲の特長ともいえる耽美なメロディの曲が目立ちますね。また全体的に80年代後半 90年代前半のような、どこか懐かしいようなアレンジだなと思うのですが、全体的に少し懐かしくもある雰囲気にした理由を教えていただけますか。

そういってもらえるとありがたいような気がするね。実際は80年代を気にして制作したんだ。だから「懐かしい」ってところは同じだね。今はすっかり安全な街になってしまったニューヨークだけど、あの危険な匂いがプンプンしていた、決して治安がよくなかった80年代を思い出して作ったんだ。

− 今回もロック色のある楽曲もあるものの、少し打ち込み的要素が強かったり、一方では「Porcelain」を髣髴させるようなアンビエントな楽曲もあれば、「DISCO LIES」や「the stars」のようにダンサブルな楽曲もありますね。今回はあなたの様々な側面が1枚に集約されているような感じがするのですが、どうでしょうか。

うん、そうだね。よく言われるよ。あまり好きじゃないんだけど、今回の作品はものすごくコンセプチャルなものに仕上がったんだ。自分の作品において、僕自身でここまでコンセプトを掲げるのは、恐らく初めてじゃないかな……。

−「DISCO LIES」のように少しBPMの早いいくつかの楽曲に関しては、完全にダンサブルなアレンジで、かつあなたが「サマーオブラブ」の時代の寵児として頭角を現した91年の楽曲「GO」のようなアレンジが施されていますね。このようにアレンジしようと思った理由やきっかけは何でしょうか。

今回のフィーリングにあったからかな。今作はダンスミュージックの作品なんだ、クラブミュージックではなくてね。僕のダンスミュージックに対しての敬意をフルに表しているんだ。



−今回の制作で主に使用した機材を教えてください。あなたの場合かなりたくさんのものを使われていると思いますので、メインで使用したもののみで構いません。

RolandやAKAIの機材、たとえばTR 909、Jupiter 6、Juno 101などのドラムマシンとシンセサイザーをよく使ったよ。70年代からよく使われてきた定番の機材で、考えてみたら全部日本製だね。




MOBY−3月14日にはアルバムのリリースパーティーが開催されたそうですね。オーディエンスの反応はどうでしたか?このパーティーでのハプニングや印象に残ったできごとがあれば教えてください。

「SXSW (South by Southwest) 」はハプニング満載だったよ。中でも一番印象的だったのが、木曜日のパーティーでJusticeと一緒にDJしたとき、オーディエンスにもステージに上がってもらってみんなで踊ったんだ。150人くらいいたかな。ものすごい盛り上がりで、楽しいパンクロックダンスミュージックみたいだったよ。最終的には消防署からの中止命令が入っちゃったけどね。



−今回パーティーでの共演者はJUNKIE XLやTHE BLACK GHOSTS、TOMMY SUNSHINE、LIES IN DISGUISSEとエレクトロ勢が大半ですが、ブッキングはどのようにされたのですか。

ブッキングに関してはレーベルやプロモーターに任せているのでわからないんだ。自分がオーガナイズするパーティーは別だけど。



−NYではコンスタントにDJ活動をされているようですが、近頃はどのような選曲をされていますか。

いつも違う曲を回しているから、毎回プレイするものはないかな。だからこれっていう曲を選ぶのはむずかしいな。本当に幅広い音楽ジャンルから選曲していて、80年代のハウスを回したり、2週間前に完成したばかりのエレクトロなトラックを回したりしているよ。でも最近はMiles Dysonのリミックスも気に入っているけどね。



DEGENERATES

−ここ1年で印象に残っているパーティーを教えてください。

僕がマンハッタンの「HIRO BALLROOM」ってところでオーガナイズしている「Degenerates」かな。今度はパリからDJ Mehdi*が来てくれるんだ。盛り上がるよ。
*フレンチレーベル「Ed Banger」のDJ。



−また近々野外でライブする予定はありますか?

レイヴっぽい野外ライブはもうほとんどないと思うけど、当分はクラブとかフェスティバルでのライブになりそうだね。

−日本にはいつ戻ってきてくれるのでしょう?

日本でちゃんとツアーしたことはないけど、行く度にいい国だなと思うね。でもアメリカやヨーロッパとくらべて遠いんだよね。でも次回はぜひもう少しゆっくりしたいし、何日間か滞在したいと思っているよ。



−日本にはいつ戻ってきてくれるのでしょう?

日本でちゃんとツアーしたことはないけど、行く度にいい国だなと思うね。でもアメリカやヨーロッパとくらべて遠いんだよね。でも次回はぜひもう少しゆっくりしたいし、何日間か滞在したいと思っているよ。



−余談ですが、あなたのmyspaceのミュージックジャンルが「Japanese Classic Music」となっていますね。なぜでしょうか?日本人の私としては少しうれしい気がします。

あぁ、あれはねちょっとした僕のギャグだったんだけど、ウケなかったかな?僕の音楽とはまったく関係のないジャンルをあえて選んでみたんだ。



−ところで「DISCO LIES」のPVでは「K」で始まる某フランチャイズのファーストフード店を思い起こさせるような人物が出てきますね。これはvegan*であるあなたからのメッセージでしょうか。またメッセージがあるとしたら、どのようなものでしょうか。そしてこのカーネル・サンダースのような役を演じているのは、もしかしてあなた自身でしょうか。

多くの場合、動物保護団体は本当にまじめで、真剣に動物愛護を訴えるけど、このPVに関して1番に考えていたことは、ユーモアかな。おもしろおかしく語ることをメインに考えていたんだよね。これは僕によく似ている人だけど、実は僕じゃないんだ。PVの中で「MFC(=モビーフライドチキン)」が出てくるんだけど、vegan*の僕がフライドチキン屋を経営しているのがおもしろいかなって思って。
* vegan=完全菜食主義者



−veganといえば、あなたのカフェ「teany」の最近の調子はどうですか?最近増えたメニューやお茶があれば教えてください。

じつはもう僕はteanyの経営には携わっていないんだ。本職じゃないしね。今でももちろん顔を出したりはするんだけど、以前ほど近くなくなったんで詳しくはわからないな。
*「teany」=MOBYが立ち上げたニューヨーク・ロワーイーストにあるカフェ。



MOBY

−最後に、政治にも関心の高いことで知られているあなたですが、最近のチベット問題に関してあなたが感じることを教えていただけますか。

本当に残念に思うし、悲痛なできごとだと思うよ。中国とチベットの歴史についてはそれほど詳しい訳ではないけれど、とても不安定な状況が続いてきてるようだよね。僕としてはチベットみたいな独特の文化や伝統がある地域においては、もっと自立性を与えるべきだと思うね。たとえばアメリカでは、50州はそれぞれある程度自立しているんだ。もうちょっと文化や伝統に関して寛容だったらなって思うよね。僕自身ができることは本当に微力だけど、すぐにでも「行動」を起こすべきだと思うし、アーティストとして声高に「歌って」いくしかないんだよね。日記につづるくらいのことしかできないんだけど。



−日本のMOBYファン、そしてすべてのダンスミュージックファンへメッセージをいただけますか。

できれば近々日本に行きたいと思ってるいから、みんなに会えることを楽しみにしているよ。ニューヨークに来て、もし僕を町中で見かけたら気軽に話しかけてね。「teany」にいるかもよ……。






RELEASE

LAST NIGHT
ARTIST:
MOBY
TITLE:
LAST NIGHT

TRACK LIST

    • 1. Ooh Yeah
    • 2. Love To Move In Here
    • 3.257.zero
    • 4. Everyday It's 1989
    • 5.Live For Tomorrow
    • 6.Alice
    • 7.Hyenas
    • 8. I'm In Love
    • 10. The Stars
    • 11. Degenerates
    • 12. Sweet Apocalypse
    • 13. Mothers Of The Night
    • 14.Last Night|lucy Vida
    • 15.CLEF(※日本盤のみのボーナス・トラック)








BIOGRAPHY

MOBY

MOBY
1965年9月11日生まれ 本名リチャード・ホール

小説「白鯨(原題:Moby Dick)」の作者を先祖代々の親戚に持つことから得たニックネームで、アメリカのニューヨークを中心に活動。1991年に発表したシングル「GO!」が大ヒットし、当時のクラブシーンを担っていたOrbitalやProdigyなどのアーティストのリミックスを手掛け、ハードコアテクノ、レイヴシーンでのパイオニア的重要人物となる。

今日までのアルバムトータルセールスは1500万枚を超えるマルチミリオンセラーアーティスト。ハウスミュージックが大好きで、シンガーソングライターとしてのキャリアを貫きながら、DJとしてもスーパースターで、グラミー賞の受賞経験を持つ。映画サウンドトラックなども多数手掛けており、メタリカやニューオーダー、マイケルジャクソンなどといった大物アーティストのリミックスもこなす。 さらに「Voodoo Child」という名義を使い分けながらハードなブレイクビーツやアンビエント作品を発表もしている。 プライベートではカフェ「TEANY」の経営を手がけ、革新を好む雄弁な活動家でもある。またアニメ「ザ・シンプソンズ」のファンとしても有名。

2002年に瞑想的エレクトロニカ「18」、2005年3月にシンガーソングライター志向の「HOTEL』を発表。この年は約3年ぶりとなる日本でのパフォーマンスを「FUJI ROCK FESTIVAL/GREEN STAGE」にて実現させた。

そして2008年3月にクラブシーンに深く根ざした彼のルーツを振り返るアルバム「ラストナイト」をリリース。同じニューヨーク出身バンド「Kudu」のシルヴィア・ゴードンをフィーチャーしている。