会場となったのは、昨年までBig Beach Festivalで使用されていた砂浜。今年はビーチパーティーの規制も加わり、海辺で音楽を楽しむこともめっぽう少なくなったと思う中でのビーチフェスティバル。心配されていた天気も、たまに小雨がパラつく程度で夕方以降は、東京湾に沈む美しい夕日も見れるなど、なんとか持ちこたえてくれた。
Photo : Masato Yokoyama, Atsuko Tanaka, Masanori Naruse
Text : yanma (clubberia)



Big Beach Festivalの会場を1/2~2/3程度にコンパクトにした規模でもやはり大きい。両ブースのちょうど中間くらいに、SEVEN STARが特別に作ったラウンジスペースがあり、こちらは喫煙スペース有り、イスやテーブル有り、DJブースありと、1日限定の海の家のような雰囲気があった。
序盤は定位置にいるというようりはブラブラして過ごし、LINDSTROMからDJ NATUREに変わり、曇り空だからこそ似合う粘度質高めのドロっとしたハウスにハラハラし、DJ KRUSHの90年代を意識したかのようなアブストラクトを中心としたセットの中にブルースやロック、そしてコンドルは飛んでいくまでミックスする、独自の解釈となるDJプレイを見せてくれた。




ERYKAH BADUが終わり、暫く放心状態が続いた。なんならもう帰ってもいいとも思えるほど満たされたパフォーマンスだった。その空気を切り裂いたのがPUBLIC ENEMY。DJ LORDと生バンド、そしてChuck DのMCに気持ちが弾む。これほど踊りたくなる早いヒップホップも新鮮で、そのままNASの前に踊り納めとDADDY GのDJへ。
太陽が東京湾に沈みかけ、セカンドステージの後ろには虹がかかる。野外だからこそ実現した特別な演出を受けDADDY Gのドラムンベースをはじめとしたベースミュージックで今日一で踊った。終盤には、Massive Attack「Teardrop」をプレイするなど粋な選曲でファンを楽しませてくれた。


ちょうど「ONE MIC」だったか、何かを歌い終わった時だったか、客側にやや背を向けマイクを握った左手を斜めに上げたNASの姿を見た時、ラッパーはマイクをもっとも美しく持つ人種なんだとふと思った。それはNASだったからかもしれないが、その洗礼された形に感動したのを覚えている。
すごく私的な経験になってしまうが、以前、タトゥースタジオでアルバイトをしていた事がある。彫師の先生は、もちろん絵が好きで絵の学校にも通っていた。でも画家ではなく、なぜ彫師を選んだのか聞いたら「自分は裸になれないないから、だから職人の道を選んだ」と言っていた。アーティストの定義は人それぞれ持てばいいのだが、この経験をしてから私の中でのアーティストの定義は「裸の自身を見せてくれているかどうか」になった。
今回、BOREDOMSの無邪気さを見て、ERYKAH BADUの歌声や立ち振る舞い見て、NASのスマートでも感情的なラップを見て、先生の言葉が自然と彼らのパフォーマンスに重なる。「STARFES.14」は、音楽的魅力はもちろんあったが、私にとってアーティストという言葉を可視化してくれたフェスだったのかもしれない。


































