INTERVIEWS

TECHNASIA

個人的にアルバムリリースのような重要なプロジェクトには、時間をかけるのが大事だと思っているんだ。もちろんどんなアルバムかにもよるけれどもね。リリース済みのシングルを集めただけのアルバムとか、1~3曲のヒットとそのほかの簡単に作ったトラックをかき集めたようなアルバムを作るんだったら、もちろんそんなに時間はかからないだろう。僕はアルバムのリリースっていうのはすごく特別なことだと思っているから、そういうリリースの仕方は絶対しないんだ。
タイムレスでどんな時代でもフロアで受け入れられるようなものを、表現していける状態でいたいんだ。ファンにもいつも違った音楽を届けたいと思っているから、そうなるとアルバム制作にはやはり4~5年かかってしまうよ。オーディエンスを驚かせるのがすごく好きなんだ。だからこの5年はまったく長いと思っていない。
最近のほとんどのリリースはオリジナル性が欠けている。DJとして名前を売るためだけに、似たような音のつまらない音楽をリリースする人が増えている。こういう現象が音楽シーンをだめにしているんだと思う。 「Central」は香港にある地区の名前からとったんだ。香港という街にはこの15年間いろんな意味でインスパイアされてきた。Amilが香港出身で、レーベル、マネージメントエージェントなどのすべてを香港においてきたから、香港にいくことが多かった。いろんな場所に行ってきたけれども、香港はどの街よりも活気とエネルギーにみちている。経済は豊かで多様性があってクリエイティブで、それでいて中国という文化に基づいているから不思議な街だよ。「Central」は香港の地下鉄の駅の名前でもあるんだ。そこからいろんな街に線が広がっている。「Central」が象徴するもが好きなんだ。香港において「Central」は別の場所に行くときの分岐点であり出発点だから、僕にとっては同時に多様性やグローバル性を表しているんだ。このアルバム「Central」では僕の音楽の出発点である、「90年代のクラブの中にいるような錯覚」を覚えさせるような音楽を表したかったんだ。 正直いって、Amilが抜けてもトラック作りの過程なんかは、あまり以前と変わらないよ。Amilがいたときも、ほとんどのトラックの制作には僕がメインで関わっていたからね。Amilは主にプランナーやレーベルマネージャーとしてレーベルに関わってきたんだ。変わったことといえば、以前ならAmilと話し合って決めてきたことを、今は自分1人ですべてを決定しなければいけなくなったことかな。それがむずかしいと感じるときもあるけれども、逆にそのほうが自由でクリエイティブだなと思うことも多いよ。 まずDosemは1年半前に"Sino"レーベルのために契約を結んだアーティストなんだ。僕は最近のクラブ音楽のアーティストにあまり感銘を受けることはないんだけど、彼のパフォーマンスを最初に見たときにすごく感動したんだ。あんなにエネルギッシュでエモーショナルなパフォーマンスはそうは見ない。意気投合してすごく仲のいい友達のひとりになった。VivianaはDosemのガールフレンドで、彼女の声に特徴があったから、Doesemが作詞作曲したトラックで歌うように説得したんだ。Bensionはスペイン・ジローナ在住のすばらしい才能をもつ新しいアーティストだよ。Diana AyannaはLA出身のパリに住んでいる僕の友達の1人で、彼女の旦那と一緒にKamasutra Loversというユニットをやっているんだ。 15年も前からずっとCubaseを使っていて、それを変える予定はないんだ。とてもすばらしいテクノロジーが生み出したものだよ。Ableton Liveは好きじゃないんだ。音楽を作曲、アレンジするには最低の製品だと思う。Ableton Liveを使ったアーティストのライブパフォーマンスを聴けばわかるけど、空っぽの質感でどれも同じように聴こえる。僕はデジタル感とアナログ感の両方の感じが好きなんだ。 最近ほとんど休日というものはないんだけどね(笑)。休みの日はたいてい南フランスのコート・ダジュールに住んでいる両親の元を訪れるよ。彼らは12世紀に建てられたお城を購入して、そこを改装して住んでいるんだ。だから音楽制作から離れて、そこでリラックスした時間を過ごしたりしている。パリにいるときは、60年代製のアメリカのSchwinn製のバイクに乗って郊外まで走ったりとか、友達とレストランやバーにいって何時間もワインを飲んだりしている。バスケットボールのファンで、試合をよく見たりするよ。電話がかかってこない深夜に、スタジオでトラックを作ることが多いんだけれども、NBAの試合放送を音を出さずに流しっぱなしにしているよ。 ツアーである国に行って、その国の言葉が話せないという理由で、その土地の人々とコミュニケーションが取れないというのは、ものすごくストレスフルでもどかしいことだったんだ。
僕は母国語であるフランス語以外に、英語とスペイン語が話せて、そのほかにイタリア語とポルトガル語、広東語と中国語を少し話せるけれども、日本語は話せなかったんだ。しかし大島渚の「戦場のメリークリスマス」を初めて観たときものすごく感銘を受けた。日本人が他国の人との違いを受け入れるために、既存のルールを曲げていくにあたってのむずかしさが描写されていたんだ。20歳くらいのときだったかな。日本の文化を理解するために、日本語を自分で勉強しはじめたんだ。 食べ物に関しては日本は世界一の場所だよ。僕はラーメン狂で、とくに福岡のとんこつラーメンが好きなんだ。福岡の"O/D"というすごくいいクラブで何回か公演したことがあって、そこで本当においしいとんこつラーメンに出会った。居酒屋の雰囲気とかもすごく好きなんだ。とんかつ、しゃぶしゃぶ、鉄板焼きもすごく好き。日本のごはんはとにかく最高だよ。東京だとどのエリアにもモダンでオリジナルな日本食レストランがあるし、地方は地方で伝統的なレストランがあって、どっちもすごく好き。東京はショッピングに関しては世界一の場所だと思う。東京に住むのは想像できないけれどもね。東京のライフスタイルは僕にとってはストレスフルでむずかしいと思う。窮屈で何でも高いからね。車の騒音なんか耐えられないよ。みんな働き過ぎだしね。大阪、福岡、札幌、京都とか地方の人はもっとレジャーを楽しむ傾向にあるけれどもね。 日本では買わないね。安い上に、イギリス領で税金がかからないという理由で、いつも香港で買っているんだ。日本で買うのは服!ファッションに関していえば、日本はとにかく最新で洗練された場所で、欲しいものは何でも手に入る。日本でのショッピングはエンドレスだよ。 秋にはこのアルバムのリミックスを発表するよ。自分自身でもいくつか手がけるけれども、ほかのリミクサーが誰かについてはまだ公開できないんだ。"Spectral Sound"のBenoit & Sergioのリミックスも夏には発表される。それと僕のシングル「Force」のリリース10周年を記念して"Whatpeopleplay.com"でもリミックスコンテストをやっているよ。その優勝者のリミックスはDosemとMarc Romboyのトラックと一緒に収録されて7月頭に発表される。僕の別のレーベル"Sino"からもいろんなアーティストのリリースがある。Ken Ishiiや中国のDJ Mickey Zhangとかね。