INTERVIEWS

Derrick May

ワッツ・アップ!元気そうだな。今回は何の用だ?何か起こったのか? オー、シット!その仕事ってのは何だ?「ELECTRONIC TRIBE」の件か? オーケー、わかった。じゃあ早速やろうぜ。 そうさ。今日(12月5日)は今年初めての雪が降っているよ。 今から、たぶん3月ぐらいまでは冬の北海道と同じで、雪がたくさん降ったり気温がものすごく寒くなる。さぁ、質問を始めてくれ。 (しばらく間が空いて)カモーン!お前は俺のことを知っているだろ? オーケー、わかったよ。名前はDerrick May、もちろんデトロイト出身で在住のアーティストだ。レーベル”Transmat”を運営している。俺が一番好きな国は日本だ。そんなこと言うと大抵の人たちは俺が心にもない、お世辞を言っていると思うが、本当に日本が大好きだ。日本人は俺が日本のことを一番好きだと言うとぜんぜん信じてくれない。俺にとっては彼らが信じてくれないことが逆に驚きだけどな。たとえば彼らの多くは海外の人達が日本食を大好きなことを知らなかったりするんだ。おもしろいよな。世界が日本という国を本当にどう思っているかを気付いていないわけだからね。彼らの多くが、日本以外の国の人達が日本の文化や生活様式に興味があることを知って驚くってわけさ。 そうだな、とにかく日本がすばらしい国だということを知らない人が多い。もっとより多くの人たちにそのことを気付いてもらいたいよ。日本は本当に驚くべき国であり、日本人はすばらしいメンタリティを持っているんだよ。 初めて日本に行くことが決まったときは、夢が叶ったから心からうれしかった。やったぜ!これでYMOや坂本龍一、そしてプラスティックスに会えるぞ!って最初に思ったよ。プラスティックスを知ってるか?80年代の日本のニューウェイヴのポップグループだ。当時の日本の音楽やアーティストがいかに重要かを理解するべきだぜ。 今、改めて考えて思うことは、当時の俺はシーンのはるか先を走っていたんだなってこと。何年も経って初めて実感するよ。俺は幾つも特別な曲を創ってきたと思っているが、その中でも「Strings Of Life」はとくに強烈な感情を持っている。何か違う次元の存在を感じたといってもいいだろう。この楽曲を好きだと言ってくれる人たちも、きっと何かを感じているんだと思うぜ。上手く説明できないんだけど、多くの人達が愛してくれる曲を生み出したときの気持ちは最高なんだ。まるで彼らが俺の意識を共有して俺の夢を愛してくれているとさえ思える。しかも10年も20年も愛され続けるわけだ。

最近、何年も聴いてなかった、昔に創った曲をまとめて聴いた。「Nude Photo」、「The Beginning」、「R-Theme」をはじめとする楽曲だ。当時の感情が蘇ってはきたんだが、あのころは今の自分とはまったく違う感覚を持っていた。今、俺が音楽を創るとしたら、以前のものとは全く違うものが出来上がるはずだ。俺もいろいろな人生経験を積んだからな。昔の俺はとても情熱的だったし、常にそうであろうと心がけていた。 情熱の種類が違う。今、俺が持っている情熱は多くの人たちに音楽を理解してもらうことで、昔に持っていた感情は自分自身が音楽を理解することだ。そういえば俺は今、日本の侍についての「Book of Five Rings」という本を読んでるんだが知っているか? 著者は日本人で、侍がいた時代の侍の人生について書かれた本だ。侍の考え方や戦略や精神の知識について書かれている。知らないんなら本当にいい本だから調べてみんなにも教えてやってくれ。(注:日本語題は「五輪書」で宮本武蔵の著した兵法書。地・水・火・風・空の五巻からなる)その本にある精神論は俺が常に考えていることに似ているんだ。どう説明していいかわからないけど……、たとえば、どうしてもう音楽を創らないの?とよく聞かれるんだけど、多分、創ることはできると思う。単純にやりたくないって訳ではなく、自分が言いたいことや表現したいことがないから創らないんだ。理由がないし、燃えるような情熱もない。 情熱を失ってはいない。ただ俺の情熱がほかのことに向かっただけだ。たとえば俺は自分のレーベル”Transmat”を運営してきて多くの若い奴らを育ててきた。Aril Brikha、Jay Denham、Shake Shakir、Carl Craig、Stacey Pullen、Kenny Larkinといった奴らだ。俺が彼らへ手助けをしたり、ある時は先生や師になれたことを本当に誇りに思う。今の俺の情熱は道案内であって、それが長い期間続いているんだ。 以前は俺もクラブシーンのことを批判することがあったが、最近はそんなに文句を言えないと思う。結局一番大切なのは音楽と、それを創り上げるエネルギーだ。クラブのサウンドシステム、照明機材なんかは、実は、そこまで重要じゃない。ただ純粋に音楽と向き合うことが大事なんだ。それをわかっていない若い連中が多いけど、彼らの所為じゃない。問題は年上の経験者がすぐに姿を消してしまうことでシーンに穴を空けてしまうことだ。もっとDJとしてリスペクトされるべきだった多くの奴らが、ドラッグに溺れてパクられている間にシーンが変わり誰も残っていなかったりする。代わりにトップの椅子に座っているのは経験不足の甘ちゃんだったりする。だからダンスミュージックのシーンは大きく変わったり、サイクルが早かったりするんだ。良い才能を持つ者も何人かいるけど、多くはダメな奴らばかりだ。 今はまずまずってとこだが、10年ぐらい前は本当に悪かった。個人的にはDJがラップトップPCを使い始めたのはよくなかったと思う。制限のあるプログラムを使ってプレイするんだぜ。本来はテクノロジーのおかげでプレイできる曲の幅が広がるはずなのに同じ曲ばかりをプレイしたりな。それは本当によくないことだ。若い連中の多くは経験が足らず、どうやって音楽をプレイして魔法を起こすかを知らないんだ。 そのとおりだ。教育がないから多くの奴らは姿を消していくし、シーン自体も直ぐに変わったりしてしまうんだ。そういう奴らは全員同じ曲をプレイして同じことをする。ほかに、どうやっていいかわからないんだろう。きっとプレイ中もラップトップでメールをチェックしたり、twitterやfacebookでお喋りしてるんだろう(笑)。 今年はとてもいい年だったな。”Transmat”からリリースしたGreg Gow、Zak Khutoretsky、DVS1の楽曲がヒットしたし。今月末には、またGreg Gowの曲をリリースする予定だ。俺自身は今までと同じようにDJとして世界中をツアーしていて今年もいろいろな都市へ行くことができた。ああ、振り返ってみてもすばらしい1年だった。 デトロイトの”Transmat”のオフィスにアートギャラリーをオープンする。それに”Transmat”をもっと力強いレーベルにするために音楽だけじゃなく、ビジュアルやアート的な要素も取り入れてウェブをより作り込んだりもしていく。やりたいことがたくさんあるから忙しくはなるが、俺は物事をよりよく改善したり学んだりすることを決して嫌だと思ったりしない。そう、それは本当に重要なことだ。それはマジで大切なことだから、みんなに伝えてくれよ。 答えは単純だ。いいか、よく聞け。日本、そして東京よりもいい場所なんて地球上にない!俺は、そのことを前から知ってたし20年近く日本がベストだと言い続けている。こんなにエネルギーを感じるオーディエンスはほかにはないし、こんなに愛に溢れている人たちもいない。音楽を通して、ここまで感じあえるのは日本だけなんだ。本当に信じられないぜ!それに「ELECTRONIC TRIBE」はいいパーティなんだろ?去年のガルニエは盛り上がったって言ってたじゃねーか。 イェー!カモーン、メーン!お前はみんなが日本のことを何て言っているのか知っているはずだろ? エネルギーに溢れていて献身的、一晩中音楽を一緒になって楽しんでくれるのが日本の奴らだ。マラソンを一緒に楽しみながら、ずっと走ってくれるようなもんさ。しかも絶対にギブアップしないし止まることもない。タフな奴らだ。 オォー、俺はヒロシ(ワタナベ)が大好きだ!ヒロシがいるのはナイスだ。大好きなアーティストの一人だしな。彼の楽曲はどれも最上級のものだし、自分の子供の写真を使ったアルバムのアートワークも美しい。子供の写真を使うことで、彼は自分の音楽を自分のルーツに戻していると思うぜ。自分を正直に表現することを恐れたりはしないし、真実に忠実に真摯に音楽を創り出しているはずだ。それはとても大切なことだし、日本の他のアーティストにも見習ってもらいたい。とにかく俺はヒロシを尊敬しているよ。 なるほどな。ヒロシが出演してくれて俺もうれしいよ。 正直、よく知らん(笑)。とにかく「ELECTRONIC TRIBE」でプレイするのは待ちきれないぜ。 なにっ?マジで?知らないけど、それは気になるな。まぁ、ラインナップを見る限りグレートなパーティーになるのは間違いないだろう。 普段よりもいろいろな人たちが集まるからな。クラブシーンのことをよく知らない年に数回しかパーティーへ遊びに行かない人たちもたくさんいるだろう。そういった人たちは新年のお祝いをして楽しみたいだけだろうかな、それ以外のことはあまり望んでいないし俺も望んではいけない。それでも自分のやるべきことをしっかりと理解していればマジックを起こせて、彼ら自身が驚くほどに感動を与えられることを信じている。だから大晦日だってことで遊びにくる人たちでも、いつもクラブへ遊びにくる連中でも分け隔てなくプレイをしている。客に対しての心がけや誠実さは完全に一緒だ。お前はDJしているときの俺のことを知っているだろ?めちゃくちゃ楽しんでいるのと同時に真剣に考えてもいるんだ。 あたりまえだ!繰り返しになるが日本に来てプレイするのは常に名誉なことだ。俺にとって日本は最高の場所だからな。それからいいか、よく聞け。このパーティーに出演するためにほかのいくつかのオファーを断っているんだ。お前たちが一番最初に話をしてくれたけど、年に一度しかないむずかしい日だ。俺は少し考えなければならなかった。わかるだろ?だがあるとき、日本からのオファーだ、何を考えてる!カモーン!ベイビー!と思って決断したのさ。 俺も今回のオファーをしてくれたことに感謝しているよ。お前たち日本人のことを愛しているし何でもする気だ。それに、お前たちならすばらしい雰囲気と最高のプロダクションを作りだしてくれるのは間違いないだろう。俺はお前たちが大好きだから誰もゲストを招いたりしない。パーティーへ遊びに来たい俺の友達は全員入場料を払ってもらう。当日は、とにかく俺だけが会場へいく。 東京は世界のダンスミュージックのシーンにとって非常に重要なポイントだ。多くのクラブがあり、少し前の話だがレコード屋もたくさん存在していた。そんなマーケットは東京だけだし日本のダンスミュージックは今でも、まだとても力強い。ただ、それでも俺は東京のシーンのことを真剣に心配している。「ELECTRONIC TRIBE」に行くことを決めた理由の一つは日本の若い奴らに真のダンスミュージックを体験させることで、音楽の力を理解させる必要があると思ったからだ。そこからインスピレーションを得てシーンを共に盛り上げたいんだ。若い奴らの力が必要なんだ。それから俺と同じくらいの年齢で俺と同じことをできる奴はまずいない。これは真実だ。それでも誰かにシーンを続けていってもらいたいから俺は自分ができることをシェアしたいと思っている。アフリカ人でも中国人でもヨーロッパ系でも人種は関係ないんだ。とにかく誰かがシーンを引き継いで強くしていければいいと思う。 I love you, mother#!@%er ! よし、じゃあこういうのはどうだ。Derrick Mayはセクシーな女が音楽を楽しんでいるのが大好きだ!そうだ、いっそのこと男は入場できないようにしてガールズオンリーのパーティーにしようぜ。俺にはそれがリアルなパーティーだ(笑)。 オーケー。繰り返しになるけど俺は日本が好きだし世界のダンスミュージックのシーンは日本に注目している。まず日本人がそのことを理解して、世界に誇れるシーンを創っていくことが大事だ。少し前までの俺のお気に入りのクラブは”Space Lab YELLOW”だった。そこでプレイするじときは毎回オーディエンスを別の次元へ持っていこうと努力していたし、実際何度も奇跡的な瞬間を生み出してきた。もちろん「ELECTRONIC TRIBE」でも俺は同じ努力をする。2010年の、そして2011年のベストパーティーを創るんだ。しっかり用意しとけよ。カウントダウンはもう始まっているんだぜ!