INTERVIEWS

ULRICH SCHNAUSS

まず思い出すのは両親のレコードコレクションです。父が70年代のジャズ/フュージョンのレコードを持っていました。その中でもAndreas Vollenweiderのファーストアルバムが特に好きでした。

その少しあと、5歳ぐらいのときに僕は腰を悪くしてしまって、治療のため病院へ通わなくなければいけなくなってしまったんです。僕を含む子どもたちがエクササイズをするときにセラピストの先生がPink Floydの'Shine on You Crazy Diamond'をかけたんです。それが衝撃的で、あの曲を買ってくれと何日も母にせがんでテープを買ってもらいました。僕が手に入れた初めてのレコードです。 生まれた時からずっとですね。それを音楽と呼ぶかは別にして、小さい頃は家にあったピアノを叩いて遊んでいました。7歳からはちゃんとレッスンを受けに行きました。エレクトロニックミュージックを作り始めたのはその数年後ですね。8トラックのシーケンサーを内蔵したヤマハのキーボードを使ってやり始めました。 ドラムンベースです。あとは、いわゆるシューゲイズと呼ばれるような、90年代前半のスペースドアウトしたインディーロック的なものですね。シューゲイズは10代のころのサウンドトラックですね。今でも好きですよ。特にアトモスフェリックなものは。 僕は美しいもの作ろうとしていますが、それは現実へのカウンターとしてなんです。ですから、僕の音楽は絶対に「ポジティヴ」とか「楽観的」という風に解釈されるべきではありません。その逆です。 憂鬱さやそこから逃げ出したいと思う気持ちが、僕に美しい非現実的な音楽を作らせるのです。 ドラッグを摂らずにドラッグをやっていると思わせるもの。 僕は自分自身のことを、Edgar FroeseとTangerine Dreamが始めたポップなエレクトロニックミュージックの伝統を受け継ぎ、伝えて行く大勢のアーティストの1人にすぎないと思っています。この音楽が「エレクトロニック」と呼ばれるのは使っている機材のせいですが、大事なのは断然人間の方ですよね。僕自身は特に変わっていません。僕が音楽を作るのは、そうしなければいけないからです。でなければ狂ってしまうでしょう。 Judithの声がすごく好きなんです。僕があのアルバムで使ったシンセの音と非常にマッチする声質なんですよね。当時はそのボーカルを使った、方向性を探求する必要がありました。でも今度出るアルバムはすべてインストですよ。 僕の存在の根幹。嬉しさや悲しさなどいろいろな感情がありますが、音楽がなかったら僕はどうにもなりません。 今の音楽に限っていえば、DnB/Dubstepのアーティストで好きな人が多いですね。ASC、Synkro、BCEE、Consequence、Unquote、 Spectrasoulとか。YMOやYMOのメンバーのサイドプロジェクト、ソロ作品にはものすごく影響を受けました。坂本龍一の'Esperanto'は僕のオールタイムフェイヴァリットの一つです。Makotoの曲もとても好きですね。 シーケンスはMacでLogicを走らせています。好きなプラグインはOhmforce、Universal Audio、Reaktor。あとはハードウェアのシンセ(Oberheim、PPG、Voyetra8)とエフェクト(Roland、Ensoniq DQ4、Publison)を使っています。 シンセで一番好きなのはVoyetra8ですね。素晴らしい、そしてすごく独得な音が出ます。使い心地がいいのはOberheim OB-8です。僕が買った初めての「ちゃんとした」シンセなんですが、90年代から使っているのでふるい夫婦みたいなものですかね…。 曲の素材はすべてバラして、Ableton Liveにフィードします。そうすればその場でリミックスをしたり別のアレンジをしたりできますからね。ラップトップ以外には、MIDIコントローラーを2つ、キーボード、Mackieの小さい卓、あとEnsoniqのエフェクトを使います。 XLANDでのセットは今度リリースするソロアルバムの曲が中心になるので、ほぼすべて新曲ですね。日本のリスナーの皆さんにはずっとサポートして頂いて、本当に嬉しいです。今度の来日もすごく楽しみです! こちらこそ!