Matadeo Madrid - 今回のアカデミーの主催地として世界中から厳選された、ロケーションの秘密にせまる。現地に入ってから二日目、シャトルバスにゆられ向かったアカデミーの主催地"Matadeo Madrid"。事前に配られた地図で大きな場所ということは想像していたが、到着してみるとその異空間ぶりにはただ驚かされた。現地スタッフによると、ここは20年前に火災により閉鎖した精肉場の跡地とのこと。(余談だが、ロンドンの名門クラブ fabric の目の前にも Smithfield という精肉場がある。)
その跡地は、その後10年使われなかったようだが、シアター、劇場などを有する総合的なスペイン文化の中心地として生まれ変わりをはたすこととなる。そして2011年「Red Bull Music Adacemy」の開催地に急遽抜擢された。スペイン人のお腹を満たし、闘牛の練習も行われていたような場所が文化の中心地として生まれ変わる、地元の人も想像していなかった変化を遂げてきた場所のようだ。
この精肉上跡地は広い倉庫のような空き地になっており、そこに10個の個別スタジオ、メインスタジオ、ラジオスタジオ、レクチャーホール、食堂、メディア関連のオフィス、そしてダンスフロアまで有しておりそこですべてのカリキュラムが行われる。
特筆すべきは、急遽東京に変わっての開催だったこともあり、このすべてが10週間で建造されたこと。設計者は Langarrita & Navarro という2人組の若手スペイン人。彼らのホームページでもアカデミー関連の記事が掲載されているので参照してほしい。この短期間で世界のDJ、作曲家、アーティストを満足させられるものを作り上げたことからも、彼らの腕前はもちろんのこと、関係者の並々ならぬ努力も計り知ることができるだろう。
- すべての建造物は最低3年間はここに保持される -
今回この"Matadeo Madrid"での開催にあたり、アカデミーは、地元の政府機関とも綿密な協議を重ねてきたようだ。1ヶ月間の開催のあと縁を切るのではなく、施設が地元の文化にとって有意義のある形で残るように、すべてのアカデミーの建造物は最低3年間はここに保持される。総合的な長期の文化支援を軸とした、この地元と密着した取り組みからアカデミーの音楽文化に対する姿勢を、十分にうかがい知ることができるだろう。
さらに施設壁などの至る所にアートワークが施されており、それらすべてがスペイン人の手によるもの。アカデミーはまさに音楽だけではなくアートも自然に同じ場所に共存させることに成功している。
アカデミー開催後、この"Matadeo Madrid"は新たな歴史をマドリッドに残していくのではないか。
all photos by Red Bull Music Academy.