ヘッドフォンって意外とどのメーカーも忘れてると思うんですけど、フィット感って本当に重要なんですよね。

- Beatsというブランドに対して、どのようなイメージをお持ちでしたか?またご使用は今回がはじめてでしょうか?

 前のアルバムを出した時にレコードショップでBeatsのヘッドホンで試聴できるようしてくれていたのですが、そのヘッドフォンが壊れてしまっていて(笑)。それが僕とBeatsの最初の出会いです(笑)。

 Beatsはその時にその存在を初めて知りました。でも現場とかでは使ったことがなかったのでこういう風に使わせてもらうのは、今回が初めてです。

- まずStudioの方を実際に使われてみた率直な感想をお願いします。

 これは会社の人がここにいるから言う訳じゃないですけど、耳がすごく快適でした。ヘッドフォンって物によっては耳が締め付けられるんですよね。深夜に曲作ってると疲れてきて注意力が散漫になって、ヘッドホンで集中して聴きたいなっていう時があるんですよ。それで音色を作ったり、自分でしたミックスを確認したりして気付くと何時間も経ってたりするんですよね。その時に1番困るのが耳が痛くなることなんですよ。 このヘッドフォンは、そこに関してすごく快適でした。密閉感もあるのでボリュームをそこまで上げなくても音がよく聞こえるんです。総合的にすごく作業がしやすかったです。

 Studioってノイズキャンリングが付いているんですよね。だから充電が必要なのですが、それを知らずStudioをそのまま制作に使っていたら、いきなり音がフェードアウトして。その時は充電式ということを知らずに使っていたので本当にショックでした(笑)。昨日はあきらめていつも家で使っているいわゆるスタジオでは定番のヘッドホンを使ったんですけど案の定1時間後には耳が痛くなりましたね。

- 昨日はこのヘッドホンでどんな音を聴かれたんですか?

 昨日は、ドラマの劇伴の作業です。本当に役に立ちました。だからなおさら途中で使えなくなってしまって困りました(笑)。もう1つMixrで試したんですけどタイプが全然違うんですよ。音作りにはStudioの方が向いていますね。

 あと移動中の作業にすごい使える。僕は、もともとノイズキャンセリングが好きなんですよ。でも、今普段使っているのはノイズキャンセリングが付いているのに、小さすぎて隙間から音が入ってくるんですよ(笑)。その点Studioは、オーバーイヤーなのでフィット感がすごく良くて。ヘッドフォンって意外とどのメーカーも忘れてると思うんですけど、フィット感って本当に重要なんですよね。世の中で部屋でヘッドフォンをして音楽作る人っていうのは遥かに少ないから省かれてしまうのはしょうがないんですけど、気がつくとすごく長時間になってしまう職業なので。これってすごく重要だと思うんです。だからStudioは良いっていう人多いと思いますよ。

ぴたっとフィットしてあまり雑音が入らない状態で、ほどほどのボリュームでもちゃんと音が聴こえるヘッドフォンを選ぶことが重要ですね。

- 今仕事で作られている音以外は聴かれましたか?

昨日はiTunesに入っている音楽を聴いたりしていましたね。実際の耳当たりもソフトだし音もすごくソフトですね。ヘッドホンとスピーカーで全然音って変わるから、音楽作る時っていろんなモニターでチェックするんです。それこそ最後は小さいラジカセで確認したりもします。そういう中の選択肢の1つとしてすごく良いと思いますね。大きい音ってなんでもかっこ良く聴こえるんですよ。小さい音で他の雑音や生活音が入らないような状態で聴くっていうのはなかなか難しいことなんですね。小さい音でもカッコ良く聴こえるのはStudioのいいところですね。もちろん爆音で聴いても良いと思いますけど。

- 付け心地がすごく良かったということでしたが、逆にこういうヘッドフォンは選ばない方が良いよっていうアドバイスはありますか?

ヘッドホンは耳に直接あてる物なので、ハイが強すぎる物は絶対に買わない方が良いって思います。たぶん耳を悪くします。一般の人ってハイが強いのかローが強いのかって、なかなか分からないと思うんです。だから信頼できるお店の人見つけてちゃんと選ばないと耳痛めちゃうんで。僕なんかもずっとDJやっているせいか、左耳だけちょっと悪い気がしますよ。

- 耳は消耗品だと聞きますしね。

そうなんですよ、だからヘッドフォンで音楽を聴きたいっていう人はヘッドフォンにちゃんとお金をかけた方が良いと思います。じゃないと聴覚障害になってしまうので。ハイが聞き取りづらくなったり。爆音にしないと聴こえないヘッドフォンっていうのは周りの雑音が入っているってことなんですよ。でもそれで爆音にしてると耳に相当な負担がかかってしまうので、本当はこういう風にぴたっとフィットしてあまり雑音が入らない状態で、ほどほどのボリュームでもちゃんと音が聴こえるヘッドフォンを選ぶことが重要ですね。

- このStudioはどのような音に向いていると思いますか?

僕は、音がソフトだ、静かだって言ってますけど、きっと結構な雑踏の中にいても強弱が激しい曲でもちゃんと聴こえるような気がします。だからビート1発でバーンといく音楽というよりは強弱のある音楽を聴くとこういうヘッドホンの良さがもっとわかるかもしれないですね。ポップスというようりは、クラシックだったりジャズみたいなアコースティックで人間が演奏する曲が合うかな。そういう音楽って強弱がすごくあって、ダイナミクスの差が激しいので、音が小さくなってくると聴こえなくなってしまうんですよ。Studioにはそういった障害が少ないんじゃないかな。

ミッドテンポとか生音とか、強弱の激しい音楽はすごく綺麗に聴こえると思います。

- イヤホンとヘッドホンで迷った時ってどうしたら良いんですか?

 音として考えると絶対ヘッドフォンの方が良いと思いますよ。さっきの雑音の話じゃないですけど。音を出す物ってサイズにある程度比例するんですよ。物が小さいとそれなりの音しかでないんですよね。音楽のジャンルと音への拘りは別として、片手にiPhoneを持ってイヤフォンで爆音の音楽を聴いてる人をよく見かけますけど、あれは本当に耳痛めると思いますよ。

- 話は変わりますが最近のヘッドフォンのパッケージってすごいですよね。これってほんとに商品なの?って思いました。それくらい高級仕様で。

完実電気:Beatsはそういうコンセプトなんです。開けた時に感動を与えたいっていう。

Nozaki:我々は今、クラブよりの話になっていますけど、音楽全般で見るとものすごい量の音楽ファンがいて、その中にものすごい数の音楽マニアがいて、さらに音響機器好きな人がいて。そういう人たちはやっぱり高級思考の物を求めていたりするし、単純にこんなヘッドフォンが届いたら嬉しいですよね。うちのスタッフが初めてこれ持ってきた時に、俺ずっと靴だと思ってたもん(笑)。ちなみにヘッドホンっていろんなところが出しているけど売れてるんですか?

完実電気:売れてるブランドと売れてないブランドの差がありますね。Beatsはアメリカでは1番売れています。他のブランドと大きく違うのはアーティストが作ったっていうところですね。EMINEMなどが所属する〈Interscope Records〉の会長、Jimmy IovineとDr Dreが立ち上げたのでミュージシャン目線なんですね。

- このStudioの音を言葉にするとどうでしょうか?

僕が今家で使ってるのは、レコーディングスタジオに100%置いてあるような、いわゆる標準とされるヘッドホンなんです。僕は物足りなく感じるんですけど、その物足りなさがいわゆる標準なのかなっていうイメージで使っていて。それと比べるとこれは低音がすごいんですよね。それぞれの製品の特徴なんでもあり、好みとかその時に作ってる音楽にもよると思うんですけど。R&Bとかはすごく綺麗に聴こえると思います。低音がすーっと伸びて綺麗に出るだろうし、中域の楽器がすごく優しく出ますから。

僕は自分の楽器がピアノなので、昨日もピアノばっかり聴いてたんですけど、そういう音がすごくまろやかで綺麗に聴こえてきました。どっちが気分よく作業ができるのかっていったら、僕はStudioですね。ただ世の中の標準がフラットなものになっているので、ついつい低音を出し過ぎてしまうんですね。家で作った音源をクラブでかけたらクラブのスピーカーを一発目で飛ばしちゃって(笑)。それぐらい物によって違うので、僕はこれがすごく好きなんですけれども、全員が全員これが好きかどうかは分かりません。ただ、僕の意見を言わせてもらうと、ミッドテンポとか生音とか、強弱の激しい音楽はすごく綺麗に聴こえると思います。

- 次にMixrをDJブースで使ってみていかがでしたか?

これットもフィ感がすごく良いですね。耳を覆うタイプではないけど、音がガツンときてすごくいいかも。やっぱり大きい音で鳴らしてみないとね、家だと分からないですよね。

- DJヘッドフォンと普段制作されるときにヘッドフォンは分けてますか?

DJ用のヘッドフォンは、消耗が激しいからすぐにダメにしてしまうので、よほどの事が無い限り家の作業用ヘッドフォン持っていきません。だからこういう高いのを持っているのは少し不安(笑)。無くしたらショック大きそう(笑)。

-今、固めの4つ打ちを聞いて頂きましたがどうでしたか?

すごくいいですね。StudioよりMixrの方が標準タイプにパンチ力が加わったという印象です。Studioは、すごく下の音まで包み込むように聴こえるんですが、それは曲によっては、ボワーンって輪郭がぼやける可能性があります。でもMixrはDJ用というだけあって、低音もゴンッて来ますね。これだと音も取りやすいですね。

Ryota Nozaki (JAZZTRONIK)

野崎良太が率いる特定のメンバーを持たない自由なミュージックプロジェクト"JAZZTRONIK"。プロデューサー、作曲家、ピアニスト、そしてDJとして様々な顔を持ち、彼が生みだす音楽もドラマや映画音楽からジャズ、テクノ、ハスウ、そしてディスコまで行き来する稀有な存在。
大編成楽団を率いてJazztronikによる架空の映画のサウンドトラックをイメージしたコンセプトアルバム『Cinematic』を4月9日にリリースしたばかり。