機材メーカーから見た現在のクラブシーン

 私は、ベスタクスというDJ機材メーカーに務めていますので、まずはその観点からお話をしたいと思います。
 今年も各社から多くのDJ機材がリリースされましたが、その中心はMIDIコントローラーでした。弊社からもVCI-380というパッド付きコントローラーがリリースされました。みなさんも、クラブやいろいろなショップでMIDIコントローラーを見たことがあるかもしれませんね。早いもので、Vestaxで最初のコントローラー、VCI-100がリリースされてから既に6年が経過しました。当初はそれほど多くなかったコントローラーですが、いまでは各社ラインナップも揃って、どれを選んで良いか悩んでしまうほどです。ただ、多ければ良いということでもなく、同じような機能、価格帯のものが多くなってしまったという言い方もできるのが現状です(弊社も同じ状況です)。また、当初はコンピュータのインターフェイスとしてコントローラーがあったのですが、最近ではi-Pad用のものも増えています。
 今年、SATOSHI TOMIIE氏がi-Padを現場で使用しているところを観ました。レコード→CD→コンピュータ(コントローラー)→i-Pad(コントローラー)へとスタイルが変遷しています。どれを選んでも長所と短所はあるわけで、自分にあったスタイルを選ぶことが大事になってくるでしょう。選択肢が多いからこそ、自分で見極める必要性が高くなります。来年以降、この傾向はさらに強まっていくことが予想されます。
 個人的には、国内外を含めて、ヒップホップのDJはスクラッチライブなどのDVS(Didital Vinyl System)にほぼ移行しきったと思っています。ただテクノDJは国内外ともにまだまだレコード使用率が高いのが現状です。私が関わっているパーティ、FUNKTAXIでのヨーロッパからのゲストは、主にレコードで予備的にCDを使用しています。昨年ほどから欧米では、レコード文化の見直しが盛んだと、よくメディアで話題になっていますが、この傾向と無関係ではないでしょう。
 さて、ここまで説明してきたように、現在はレコードはもとよりi-PadでDJすることも可能な時代になりました。始めようと思えばすぐに簡単に誰もでDJを始めることができます。これは多様性という意味ではおおいに歓迎すべきことだと思っています。しかしながら多様化している一方で、昨今のクラブやダンスミュージック界の不況が深刻な問題になってしまったことが、この2012年ではないでしょうか。風営法の問題のように、単純に集客不足というだけでは解決できない問題もあります。不況が叫ばれて久しいなか、どうやってクラブやダンスミュージック界を盛り上げていくか、みなさんといっしょに考えていきましょう。