本特集のスペシャル企画として、本企画の発起人DJ MAARとデモトラックを作成したDJ Pi-ge、そしてPioneer DJのプレスを担当している大上氏の対談を敢行。DJ MAARのスタジオに赴き、それぞれのデモトラックを3人で試聴してのレビューや、それぞれがどのようにRMXを使ったかのか、オススメの使用方法などをディスカッションしてもらった。RMXの潜在能力をどうしたら引き出せるのか、トラックメイクのヒントとなるだろう。
取材:clubberia
- 既に皆さんから楽曲を頂いているのでそれを聴きながら対談しましょう。まずは、ASHRAさんのですね。
DJ Pi-ge:みんなはRMXをPlug-inのコントローラーとして使ったの?
Pioneer:Plug-inだけの人もいますし、RMXから録音してってのもありますね。
Maar:俺は、RMXしか使ってないよ。
DJ Pi-ge:じゃあそこにドラムサンプルとか入れて?
Maar:そう、プリセットの素材から自分の好きなやつ選んでバーッと録って。1個のテイクで10個くらい録って。何回も聴き込んでどんどん絞っていったやつを10分くらい録って。「それだけでかっこ良くない?」って大上君に言ったら、「もうちょっと遊んでくださいよ」とか言うからSE貼って(笑)。それに関しては、Plug-inで触った。ASHRAもほとんどこれ単体で作ってたよ。RMXに関しては、このやり方が手癖も出るし面白いと思う。RMX本体の音を録音して、それで細かいところはPlug-in使ったりして整えてっていうのが1番面白い使い方だと思うな。
DJ Pi-ge:PCの音をRMXに突っ込んでっていうのは?
Maar:いや、今回はもう全部これで組んだ。BPM揺れるなってとことかあって。でもそれも面白かった。リアルタイムで追従してるから揺れるっぽいんだよね。でも、それで生じるズレも面白かった。
RMXの制作での使い方は、ウワモノだけこれに突っ込んでいろいろ触って録音して、後からオーディオデータを切り貼りする感じが面白いかも。
DJ Pi-ge:僕は、そういう風にやりました。後は自分でちょっとオートメーションを書いて、微妙なとこで遊んだ。フィジカルで触るとエフェクトの掛かり方が一気にくるから。もう1曲の方はRMXだけでやるんだったら壊しにかかるような作り方をしようかな。
- 次はPi-geさんのトラックですね。
DJ Pi-ge:もうTool Houseですね。
Maar:うわ、俺の曲が1番おかしいかも、、、やばいな。もう1曲はスマートにやるよ(笑)。ドキドキするね、自分の曲かかるの。
Pioneer:Pi-geさんのトラックは、かなり手が込んでますよね。あまり展開が無いように聴こえるけど、レイヤーがあって繊細に動いている感じがわかります。
Maar:うん、かなり微妙に動いてるよね。このピアノってサンプル?鍵盤弾いてリバーブしたって感じ?
DJ Pi-ge:自分で弾いて作りました。
Pioneer:リバーブもRMXでかけたんですか?
DJ Pi-ge:うん、Spiral系のダウンかアップかで地味に動かして戻したときの音が好きだったんで。
Maar:それ、わかる!
- 次はHabanero Posseさんですね。
DJ Pi-ge:この企画、バラエティーに富んでていいですね!これは男気があって。俺も次の曲は、男気系でやろうかな。
Maar:タンクトップ以外は不可!みたいなね(笑)。あとは、心に闇のある女の子が聴いてそうだな(笑)。
Pioneer:(笑)。こうして聴いていくと、同じRMXを使ってるのに、人によってReverbの深さとか質感が全然違うのも面白いですね。
- 次はMaarさんのですね。
Pioneer:これは、とにかくRMXをいろいろ触って頂いてますね。
Maar:使える機能は全部使ってみようみたいな。
DJ Pi-ge:めちゃめちゃいいですね!
Maar:RMX-500を使うのはビートメーカーの方がいいかもね。RMX-500はリズムが触りやすいし、組みやすい。
DJ Pi-ge:確かに。Maar君のトラックは、1番ライブ感ありますね。他の人はみんな作業した感じが出てるけど。
Maar:ボタン4つ押しとかやってるからね(笑)。
DJ Pi-ge:やばい!コンボで何とか拳出そうですね(笑)。普通にパソコンだけで作ってる人に対しては、RMXみたいな機材があった方が面白いと思うよね。
Maar:あとビートメーカーがラッパーとフリースタイルのLiveとかやるのに絶対いいと思う。俺はそのイメージでやった。RMX-500だけでリズム作ったにしてはいいビートができたと思うよ。
- 次はSEKITOVA君のトラックですね。
DJ Pi-ge:美少年Tech Houseだね(笑)。ピッチャー返しみたいな曲だな。
Pioneer:これはまだ作ってる途中の曲で、完成したのがもう1曲あります。
Maar:良くできてんなー。
Pioneer:こっちが完成してる方です。これはRMX-100とRMX-500両方使ったみたいです。こっちのほうが、彼の感覚で機材を使い分けて、やりたかったものに近いのかな?制作途中の方の曲は、ちゃんと企画に寄せようっていう、まさにピッチャー返しみたいな感じかもしれませんね。
Maar:偉い!寄せてみたんだね(笑)。
DJ Pi-ge:バット短く持った感じだ(笑)。しかし皆さん素晴らしいですね。
Maar:よくできてるよね。
Pioneer:嬉しいですね。全部、ちゃんとフロアトラックですね。
Maar:でもこれって、フロアトラック以外作れなくない?(笑)。
DJ Pi-ge:いろいろ無視すればできますよ(笑)。
Pioneer:(笑)。何やってもフロアトラックになるんですね。次に機材出すとしたら全然違う方向考えたいですね。メロディーやハーモニーを中心にいじれるとか。
Maar:RMX-500は、ラップができたらマイク突っ込んで相当面白いことできるんだろうけどね。俺がラッパーだったら1個でリズム走らせてやってみたいな。
DJ Pi-ge:ステップシーケンスとかあったら面白いかもね。リズム組むだけじゃなくて。プリセットのサンプルでもいいし、それこそSDでサンプル音入れてやってもいいし。
Maar:俺、RMX-1000ではサンプル突っ込んで並べてとかやった。
DJ Pi-ge:それ、俺もやりました。
Maar:結構組み合わせられるし、組み合わせ考えるの面白かったな。ちなみに走らせながらプリセットを変えれたりできるの?
Pioneer:CUSTOMIZE SHIFTボタン使って変えられます。CUSTOMIZE SHIFT押しながらINSTRUMENTを押したらプリセットが変わっていきます。
Maar:おおっ!やってる途中に変えられるっていう技を今覚えた(笑)。やっぱりメーカーの人に聞くとやる気が出る。
Pioneer:徐々に変えてくと面白いですよね。ずっと遊んでられると思います。
- 制作面でRMX-1000とRMX-500の大きな違いって何ですか?
Maar:リズムはRMX-500の方がすごい良かった。作った曲を友達に聴かせたら今後ずっとこれで作った方がいいよって言われたよ。結構すごいの出てるよって(笑)。
Pioneer:大雑把に言うと、RMX-1000から特にリズム部分を抽出して特化させたのがRMX-500なんです。
Maar:DJ用のエフェクトだったらRMX-1000が面白かった。なんでかっていうと帯域ロールとかで実はさりげなく変なことができて。
DJ Pi-ge:確かにDJ用だったらRMX-1000がいいかもしれないですね。
- RMXは普段の制作で使ってるPlug-inと違う部分はありますか?
Maar:やっぱり、フィジカル感じゃないかな。とんでもなく変なのがたまに出てくれる。
Pioneer:直感性ですね。
Maar:そうそう。あたかも自分がビートメイキングうまいのかと思っちゃえる感じ。
Pioneer:プリセットの割に多才ですからね。制約があるからこそ、イマジネーションが刺激されるかもしれないですね。
Maar:ライブをやる人には、本当にいいかもね。
- Pi-geさんは、今年のフジロックではどちらを使ってたんですか?
DJ Pi-ge:フジロックではRMX-500を使ってたけど、WOMBでRMX-1000も使ったことあるよ。
Maar:チャンネルに返すタイプのSend/Returnで使うの面白そうだな。
DJ Pi-ge:チャンネルに返すタイプでやる時は、Returnで1チャンネルつけて、抜き差しだけで遊んでる感じ。それはフジロックでやったし、たまにWOMBでもやってる。サウンドバイトとそれでやってた。RMXである程度フィックスしちゃえば、後はミキサーのフェーダーで遊べる。
Maar:確かに。昔、チャンネルで返して面白いことやってた気がするなあ。
Pioneer:この子(RMX-1000)はどうですか?
Maar:ロールの3連が触っててすごく面白かった。タッチで拍数が変わるじゃん?これいつも3連にしてて。ピッチも変えたりしちゃって。
Pioneer:RMXでピッチを変えれるのはRMX-1000だけです。
Maar:そうだよね。このピッチがまた面白いんだよね。でもRMX-1000は、やっぱりISOLATE FXがいいよ。
Pioneer:ADDでHIだけやったら…
Maar:知ってる!ハットだけすげえシャッフルすんだよね。それ超やってた。あと真ん中の声だけブルブルさせたりとか。結構いいんだよね、派手すぎなくて。
Pioneer:そのへんのアイディアは、DJM-2000で帯域ごとにかけれるようにしたところから来ているんですよ。
Maar:あとはやっぱりVINYL BRAKEだよね。軽くかけると1番びっくりするんだよね。いきなりかけるとそういう曲っぽいから。
Pioneerは、ガチガチのプリセットを作らないところがいいよね。固めすぎてなくて。他のメーカーとかは、チャンネルを選ぶしかないとかあるから。RMXは自分で組み合わせられる。
Pioneer:自由度ありますね。
Maar:DJM-900NXSだと、CFXでLow切りながらReverbの拍数を上げていくとピッチダウンしてくじゃん?あれを拍数に合わせてまた戻すと、今度は上がってくんだよね。それで尺に合わせてドンってやると割とみんなびっくりする。シャワシャワしすぎないし。
Pioneer:RMX-1000は結構意外な人が使ってくれているんですよ。DiscoのレジェンドのJohn Moralesとか。こないだは、Terre Thaemlitzが使ってました。軽く使う程度かなと思ったらガッツリ使ってくれてて。この前Maurice Fultonと共演してた時に見たんですけど。
Maar:Maurice Fultonどうだった?相変わらず?あの人って作る曲とDJ全く違くてさ。忘れもしないよ、初来日の時にDARUMA君と"LIQUIDROOM"行ってさ、ずーっとDJがGarageでキレて帰ったよね(笑)。
あとJames Murphyが来た時も、それこそElectro Crashだ、Brooklyn Disco Dubだって言われてたけど普通にHouse Classicsかけてて、その時もキレたんだけど、今思うとあいつが合ってたわ(笑)。
Pioneer:キレ過ぎです(笑)。リリースしてるトラックとDJが全然違うってのはよくありますよね。特に海外DJは、やっぱりリリースしてる感じを期待されちゃうと思いますけど。
Maar:そういえば、今ライブやりたがる子多くない?Seihoとか含め。うちの弟(TAAR)もDJよりライブやりたがってるもん。
DJ Pi-ge:でもいい傾向じゃない?
Maar:うん、いい傾向だと思う。海外っぽいよね。
DJ Pi-ge:なんかね。デモ渡し合って。
Maar:みんなそういいながらDJもやるんだけど、DJもなかなかいいんだよね。死ねばいい(笑)。みんなよく聴いてんなぁって。たち悪いよね(笑)。
Pioneer:(笑)。勉強出来てスポーツ出来てイケメンみたいな。
Maar:James Blakeとか歌まで歌っちゃいますからね。困ったもんですよ。
DJ Pi-ge:今そういう新しいのはどこでやってんだろう?
Maar:でもネット系ってあんまクラブ来なくない?来ないけど作ったらフロアの曲みたいな。でも、10代の子たちはクラブ来れないから曲作るしか無いよね。
DJ Pi-ge:触る時間は長いほうが成長度も違うからね。
Maar:でもネット系特有のパターンがあるんだよね。あと、ネットで聴くからメロディーに走ってリズムがあんまこない。フロアって感じじゃない曲が多いかも。
DJ Pi-ge:俺足が疲れるまで踊ってないとダメだと思うんだよね。
Maar:わかる!俺もシラフで12時間とか踊ってたもん。今思うと何だったんだろうって感じだよ。次何がかかるのか気になってしかたがなかったんだよね。
DJ Pi-ge:酒も買いに行けないんですよね。あと、帰ろうとするけどいい曲かかって引き返す、みたいな。
Maar:そうそう、そうだった。
- 最近の制作のトレンドっていかがですか?
Maar:4つ打ちもベース系もメロディーを大切にするようになったよね。やっぱメロディーの手癖で1番オリジナリティーが出るから、そこにいってる気がする。そこはやっぱりある程度の知識が無いと作れないから、そこでみんな勝負してて。今まではトラックものでイェーイみたいなのが好きだったけど、やっぱ歌えるメロディーとか心地よいコードの動きには勝てなかったりするじゃん。
あとは、メロディーがしっかりしててリズムを崩してく、リズムで遊ぶっていうのが多い気がしますね。やっぱDeep HouseとかDiscoが流行ってるのもメロディー先行だと思うし。Disclosureが売れたのもDixonが人気あるのもわかるし。たぶんメロ線の時代だと思いますよ。ちょっと前までビート線だったけど、どのビートにも慣れてきたんじゃない?Dub StepにしてもFootworkにしてもHouseにしても。リズムのアイディアは、一通り出ちゃったような感じはあるよね。もちろんそこにメロディー乗っけてきたらいい曲だし。だから作る側は、結構大変ですよ。また勉強し直してる。音楽理論とか。
DJ Pi-ge:ほんとそうだよね。そこで差が出るのは事実だし。
Maar:そうそう。やっぱりさっきのPi-ge君の曲じゃないけど、繊細な動かし方をするじゃん。そのアイディアはやっぱすごいよね。俺の課題だと思ってる。ループしてる気持ちよさを残しつつ、飽きさせないっていうのは1番難しいからさ。Pi-ge君のは、音色に対する音の置き位置がばっちりだと思いました。
DJ Pi-ge:どんな安いシンセでもプリセットでもどっかを揉まないとっていう。どの音が好きで、だからこうなんだよっていうのが作れないと、やっぱり次のステージには行けない気がしますね。今は、普通に4つ打ちなんてパッパッと貼付けて、ブレイク入れて何か入れてってやればHouseっぽいそれなりのものができると思うけど、やっぱり自分が買うレコードがなんでいいかっていうのを解剖した方がいいと思う。その発見はすぐにはできないけど、やっていくうちにああこういうことか、ってなるから。もしこれをみて何か始めようとしている人がいるんだったら、好きなものに対して自分で解説できるようになると、もっと良くなると思う。それで自分のアイディアが生まれてくると思うし。やっぱりオリジナルと言いつつまだずっとコピーなんで。僕の中ではカバーしてるつもりなんで。
Maar:みんな何かしら参考にしてるからね。音符使ってやってる時点で何かに近くなちゃうし、自分が蓄積してきた音楽もあるし。まあそれをちょっと変換するだけだったりもするじゃん。この曲では、エフェクトがハットにかかってたから、俺はピアノにかけてみよう、みたいな単純なこともあるだろうし。あと全体的に今までより立体的な音作りをするようになったかな。昔は立体的って言っても左右上下くらいだったんだけどもはやみんな奥行きの軸まで使ってるから面倒くせえなあーと思って(笑)。それで、わーってなってChicago House聴いたら、やっぱこれじゃんって実際なるんだけど(笑)。
Pioneer:そういう流れを演出するのがDJなんでしょうね。ずっとレイヤーの深い曲かけてて、いきなりビートの効いたChicago House入れるみたいな。一晩かけて物語になってて。
Maar:両方あるよね。制作で言うと、繊細なものもざっくりしてるものも含めて、フィジカルって強いんじゃないかなと思う。メロ線になってるのもそうだろうし、ボーカルものが強くなってるのもそうだろうし。人の手癖というか、良くも悪くもオリジナリティーが出せると思う。それにフィジカルで作業するのは楽しいよね。
DJ Pi-ge:遊べるしね。
Maar:遊べるのが1番でかいかもね。適当にバーッと打ってみて、それを音変換したりもしてるし。
Pioneer:意外とそういう細かいところは使えるようになってるんですよね。
Maar:俺、買って満足しちゃうタイプでさ。買ったのに結局PCで作ってるみたいな…。ちゃんとやろ。ほんと、こういうインタビューちゃんと受けれるようにちゃんとやろうと思った(笑)。
Pioneer:ちゃんとやって深みが出るやつはいい機材ですよね。使うごとに変わってくるとか。毎回同じ使い方になっちゃうと面白くないなと思っちゃうし。
Maar:他にどういう使い方があるの?蚊がいたら置いておけば、みたいな(笑)?
Pioneer:いやいや(笑)。デング熱ですか?
Maar:でもさ、とんでもない使い方する若い子たまにいるもんね。カオスパッドもDJ用に作られたけど、DJ用ではなくてライブパフォーマンスする人たちに刺さったし。今でも使ってるもんね。マイク突っ込んだり鍵盤突っ込んだりとか。
Pioneer:間違った使い方はイノベーションの宝庫ですよね。次は、RMXと同じ形でメロディー系の作って、合体させたら曲ができるみたいなのを作ったらいいかもしれないですね。
DJ Pi-ge:それにステップシーケンスが入って、シリーズのみんながカシャっとはめていけるみたいな(笑)。
Pioneer:それ面白いかもしれないですね。何かに特化したシリーズ。
DJ Pi-ge:音色とかサイトでダウンロードできるようにして。ストアで買うとかね。そういうのもほしいよね。
Pioneer:あ、そういうのもいいですね。今後の展開を乞うご期待ください。