2025年9月、AlphaTheta(旧 Pioneer DJ)より、CDJシリーズの最新モデル「CDJ-3000X」が発表された。CDJ-3000Xは、2020年に登場したCDJ-3000の後継機にあたるモデルであり、クラブ現場で長年使用されてきた定番プレーヤーの設計思想を受け継ぎつつ、クラウド接続やストリーミング対応といった現代的な機能を追加している。この記事ではCDJ-3000Xの主な機能・仕様を整理して紹介する。
CDJ-3000Xは、CDJ-3000をベースに新しいハードウェアとネットワーク機能を追加した上位モデルである。クラウドストレージやストリーミングサービスとの連携、USB-Cポートの追加、大型化したタッチディスプレイなどが特徴となっている。
まず、ディスプレイは従来の9インチから10.1インチの高解像度タッチスクリーンへと拡大された。パネル方式も抵抗式から静電容量式に変更され、スマートフォンのような軽いタッチで操作できるようになっている。ブラウズ画面では最大16曲を同時に表示できるようになり、選曲時の視認性と効率性が向上した。タッチ操作の応答性が高く、波形のズームやプレイリスト操作などもスムーズに行えるよう設計されている。
次に大きな変化点として、CDJシリーズでは初となるWi-Fi機能の内蔵が挙げられる。これにより、USBメディアを使用せずにrekordbox Cloudを通じてクラウド上の楽曲を直接ロードできる機能が搭載された。クラウドストレージとしてはDropboxやGoogle Driveが利用可能で、インターネット接続さえあれば自分のライブラリにどこからでもアクセスできる。さらに、TIDALやBeatport Streamingなどのストリーミングサービスにも対応し、オンライン上の楽曲をその場で再生することができる。ログイン方法はスマートフォンを本体のNFCエリアにかざすだけでアカウント認証が完了する「NFCタッチログイン」や、ディスプレイ上のQRコードを読み取る「QRコードログイン」に対応している。
メディアポートも再設計されていて、従来モデルと同様にUSB-Aポートを備えつつ、上部および背面にUSB-Cポートが新たに追加された。一方で、これまで採用されていたSDカードスロットは廃止され、楽曲再生メディアはUSBまたはクラウド接続に統一された。背面にはUSB-B端子も引き続き搭載されており、従来のHID接続によるPCコントロールにも対応している。
操作面では、新たなCue機能とワークフロー改善が図られている。「Gate Cue」では、Hot Cueボタンを押している間のみ楽曲が再生され、手の動きに合わせた即興的なプレイが可能となった。「Smart Cue」では、最後に押したHot Cueが自動的にメインのキューポイントとして登録されるため、素早く再スタートできる。さらに、「Playlist Edit機能」によって再生中でもプレイリストの順序変更が行えるようになり、現場でのセット構成をその場で変更することができる。ジョグホイールと筐体設計にも改良が加えられた。ジョグホイールのテンション調整範囲が拡大し、より軽い操作から重めの設定まで幅広く対応できるようになった。本体天面はマット仕上げとなり、指紋や傷が目立ちにくくなっている。PLAY/CUEボタンは内部構造が刷新され、押下耐久回数は前モデル比で約50万回の向上となっており、ツアーや常設クラブといったハードユース環境にも耐えられる設計となっている。また、電源ケーブルはロック式に変更され、クラブブースでの振動やケーブル抜けを防止する仕様となった。
音質面でも再設計が行われている。オーディオ回路には新たにESS Technology社製 Sabre DACが採用され、ノイズフロアを低減するとともに音の明瞭度を向上。出力は最大96kHz / 32bit処理に対応し、クラブサウンドにおけるダイナミックレンジの拡張が図られている。加えて、電源回路も再設計され、安定した電圧供給と低ノイズ化を実現したことで、よりクリアで安定した出音が得られるようになった。結果として、従来モデルに比べ、特に高域の透明感と低域の厚みが改善されている。
CDJ-3000Xは、CDJ-3000をベースにネットワーク機能・音質・操作性を新規ユーザーを含めた幅広い層に向けて強化したモデルである。Pioneer DJからAlphaThetaへのブランド移行後も、製品の互換性や使用感は従来通り維持されている。Wi-Fiやクラウド対応など、DJワークフローのデジタル化に対応した機能が加わったことで、より幅広い層の多様な環境での利用が可能になった。
オフィシャルサイト
https://alphatheta.com/ja/product/player/cdj-3000x