井上 揚介

OTAIRECORD CEO

2000年6月にレコード&DJ機材店OTAIRECORD、オーディオショップOTAIAUDIO CEO。2013DMC JAPANを復活に導き、OTAIRECORD DJ UNIVERSITY学長。ビートバトルBEAT GRAND PRIXオーガナイザーでもある。

http://www.otaiweb.com

ひねくれた感性の枯渇感

 昨年のコラムでも触れたが、アナログレコードの復活やアナログシンセなど、原点回帰の要素が多く見られたことが印象的。また音楽業界の中ではハイレゾという言葉も飛び交っていた。こういった大きな流れによって新しい音楽の体験をできた方もいると思う。それを素直に喜ぶ一方、そのカルチャーの掘り下げがもう少しあっても良かったように思う。ハイレゾだったらすべて高音質ということでもないし、アナログレコードが一番良いという盲目的なスタイルを持つリスナーもちらほら見られた。
 今の音楽業界は素直すぎる部分があるかもしれない。皆性格が良いというか良い人ばかりで。みんな良いって言っているけど本当に良いの? これって実は嘘っぽくないか? そういった疑いもなく……、さらーっと流行している感じに危機感を覚えている部分もある。もうちょっと、ひねくれた感じが欲しいって思うのは私だけでしょうか? 表現の世界のひねくれ者って歓迎されるべきものだと思いますし。個人的には、OTAIRECORDとしてもプライベートでもいろいろあった年で、何とか生きて無事このコラムをかけていることに安堵している。
 今年印象的だったのはトラックメイクバトルBEAT GRAND PRIXの開催である。200名近い応募があり、泣きながら審査したことが印象深い。大会も充実していて、トラックメイクのシーンに多少のトピックを提供できたのではないかと思っている。また、今年はOTAIAUDIOというオーディオショップの責任者にも就任して、オーディオ業界にも力を入れたが、実際に入ってみると非常に趣味的で奥深い業界で大変刺激になった。この刺激を皆でもっとシェアできるようにいろんな形で皆さんにも共有していきたい。
 来年も幅広くアンテナを張って、客観的な見地から音楽をいかにして楽しむかを考えていきたい。