Interview, Text and Translation: Norihiko Kawai
Special Thanks: Carola Stoiber (PullProxy )
スイス・チューリッヒを拠点に活動するus & sparklesが、新作アルバム『Sir Kaboom and Trippy Tweet』を発表した。前作に通じるサイケデリックな空気感を残しながらも、本作ではより温かく、ダンサブルなサウンドへと接近。サイコセラピストとしても活動する彼は、音楽を「身体的な体験」と捉えながら制作を行っているという。本インタビューでは、新作のコンセプトや制作環境、ライブ演奏を取り入れた背景などについて話を聞いた。
Release Information:
アーティスト:us & sparkles
タイトル:Sir Kaboom and Trippy Tweet
レーベル:SelfRelease
発売日: 2026/4/17
ジャンル:Electronica, IDM
購入・視聴
ーー今回のアルバムのコンセプトを教えてください。
us & sparkles (以下us):
私はかなり頻繁に音楽を作っています。ほとんどは純粋に楽しみのためであり、日常生活から穏やかに離れるための手段でもあります。そうした積み重ねの中で、コンピューターの中には大量のスケッチやアイデアが蓄積されていきました。作りかけのトラックがずっと眠ったままになっていることも多く、それらをどう整理し、より一貫性のある形にまとめ、実際に共有できる作品へ変えていくかをよく考えているんです。
普段はまず楽曲をフォルダごとにまとめていきます。まるでDJセットを組むような感覚で、どんな流れや旅路が自然かを考えるんです。そうするうちに、このプロジェクトは「温かみがあり、踊れる音楽」でありながら、前作と同じようなサイケデリックな雰囲気も持つ作品として少しずつ形になっていきました。私は通常、2〜3枚のアルバムを並行して制作し、その中から次に完成させるべき作品を決めます。その判断ができた段階で、細部を磨き上げ、全体を明確に整えていくのです。
ーーこのアルバムの制作環境について教えてください。
us :
制作の大部分は、自分のスタジオで行いました。そこは、私の余ったお金がすべて消えていく場所でもあります。20世紀を代表する作家フランツ・カフカの小説『巣穴』に出てくる地下空間のように、決して完成することがなく、どこか滑稽で、機材に溢れた場所なんです。
制作の中心となっているのはAbleton LiveとStudio Oneです。そこにFabFilter、Serum、Plugin Alliance、Seventh Heavenなどのプラグインを組み合わせています。ハードウェア面では、Jupiter-4、Juno-6、Juno-106、ARP 2600、Moog Voyager、Buchlaといったさまざまなアナログシンセを使用しており、その多くはCirklonシーケンサーで制御しています。
さらに、MoogやBettermakerなどのアウトボード機材もかなり使用しています。すべての機材は大きなパッチベイを経由し、最終的にはStuderのミキシングコンソールへ送られます。
ニューアルバムのアートワーク
ーー前作と比較してビートを多用していますが、どのようなきっかけでそうなったのでしょうか。
us :
単純に、もう少しリラックスできて、踊れるものを作りたかったんです。より動きのある作品にしたかったということですね。あまり重くなりすぎたり、さらに悪いことに、気取ったものになってしまうのは避けたいと思っていました。だからこそ、リズムをより前面に出す方向性が自然に感じられたのです。
ーーあなたは音楽を「身体的な体験」と捉えていますが、本作ではリスナーの身体にどのような変化を起こす設計をしていますか。
us :
結局のところ、私にとって一番の基準になるのは自分自身の身体です。音楽は本質的に身体的なものだと思っています。音は、直接身体に作用するものですから。制作やミックス、マスタリングの際も、たとえクライアントワークであっても、楽曲の流れやグルーヴを常に身体感覚で確かめようとしています。たとえ非常にアンビエントな楽曲であっても、自分の身体がどう反応するかを確かめながら作業しています。
ーー今回の制作過程で生楽器の使用は初期構想から決めていたのですか?それとも制作の途中で必要性が生じたのでしょうか、判断の経緯を教えてください。
us :
それは実際にはセッションの中で発展していったものです。最初は、一部の楽曲で部分的にライブ要素を取り入れる程度に考えていました。しかし、レコーディング・セッションが進んでいく流れの中で、ライブ演奏が徐々にアルバム全体の大きな要素になっていったんです。そして、より繊細なディテールを作品にもたらしてくれました。
ーー各トラックは独立して作られていますか。それとも最初からアルバム全体の流れを前提に構築していますか。
us :
当初、各トラックはかなり独立した存在でした。作品としての統一感が生まれたのは、実際には後の段階で、曲順を決めたり素材を磨き上げたりする過程を通してです。
ただ、このプロセス自体は、普段の私の制作方法において非常に重要な部分でもあります。多くの場合、アルバムの中でその曲がどの位置にあるのかを理解して初めて、私は楽曲を本当の意味で完成させるのです。
ーーあなたのテクノ寄りの別名義v0llでの制作と比べて、us & sparklesの作品ではどの部分でアプローチが変わっていますか。
us :
us & sparklesでは、楽曲がより凝縮され、焦点が絞られているように感じています。一方でv0llでは、私はもっと生々しさや即興性に関心を持っています。クラシックなテクノというのは、ある種のシンプルさによって成り立っていると思うんです。もちろん、良い意味でのシンプルさですが。
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ーー心理療法士としての活動は、制作のリズムや集中の仕方にどのような影響を与えていますか。
us :
おそらく、それは忍耐力として表れていると思います。そして、結果を完全にコントロールすることはできないと受け入れる感覚にもつながっています。例えば「The Poem」という楽曲は、完成させるまでかなり苦労しました。
楽曲として本当に成立しているのか、自分でも確信が持てませんでしたが、ある時点で、その不完全さも含めて受け入れるしかなかったのです。
ーーあなたはスイスのアーティストですが、自国のエレクトロニックミュージックシーンについて教えてください。
us :
いくつか素晴らしい例外はあるものの、現在や過去のトレンドをなぞる傾向があると思います。私は時々、もっと先進的で実験的な姿勢が不足しているように感じるんです。
もちろん、非常に興味深いアーティストたちが優れた作品を作っているのは確かですが、その一方で、少し予測可能に感じられるものもかなり多いですね。
ーー日本から訪れる電子音楽好きにお勧めしたいあなたの国の場所はどこですか。
us :
私はバーゼルのElysiaがとても好きです。現代的なテクノを聴くには素晴らしい場所ですね。それ以外については、どのアーティストが出演しているかによってかなり変わってくると思います。
ーー今後の活動予定を教えてください。
us :
もちろん、これからも音楽を作り続けていきます。そして現在は、このプロジェクトをよりステージへ持ち込む方法を模索しています。今の時代、ライブセットを持たずにアーティストとして活動していくのは、かなり難しくなっていますから。