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「聴いたことのない音楽、見たことのない映像を求めて」 日本科学未来館に集う、デジタルアートの探求者たち。 MUTEK.JP 2017いよいよ開催

 「聴いたことのない音楽、見たことのない映像を求めて」が、昨年のMUTEK.JPのキャッチコピーだった。だが、今年の「MUTEK.JP 2017」を表現するには、言葉が足りなくなっているかもしれない。それほどMUTEK.JPは、わずか1年で拡張した。その大きな理由として、日本科学未来館(東京都江東区青海2-3-6)での開催がある。規模の拡大はもちろんだが、国立の科学博物館であり先端の科学技術を紹介している、日本科学未来館だからこそ出せるムードをMUTEK.JPに加えることができたと思う。それに最先端技術を用いたパフォーマンス、インスタレーション、ワークショップといったコンテンツが揃うMUTEKにとってうってつけの場所なのだ。昨年がX軸(音楽)とY軸(映像)の2次元だったとしたら、今年はそこに日本科学未来館だから出せるムードという軸も追加されて、さらにコンセプチュアルなイベントができあがった。音楽とテクノロジーによるMUTEKというコスモスが3日間だけ出現しようとしている。


マストで抑えておきたいプログラム3選
 これまで発表されたなかで、誰もが注目しているプログラムがある。それを“マストで抑えておきたいプログラム”としたら、①小室哲哉と脇田玲によるオーディオビジュアルインスタレーション、②冨田勲に捧げる空間作品、③ドームシアターでのプログラムすべて、が挙げられる。


小室哲哉と脇田玲によるオーディオビジュアルインスタレーション
90年代J-POPシーンの象徴が100%アートに振り切る
TETSUYA KOMURO & AKIRA WAKITA「Scalar Fields」

小室哲哉がMUTEKに出る!? 耳を疑うような発表だったが、商業的なイメージが強いJ-POPシーン、そこでトップに君臨していたあの小室哲哉がアートに振り切る姿を見てみたい。そして、その姿を日本で見られるのは「MUTEK」でしかない。今回彼は、自然界の目に見えないモノをテーマに科学と美術を横断するアート活動を展開する脇田玲と共同でパフォーマンスを行う。彼らはどんなことを行うかというと、靴のソールの周りの圧力伝播を独自に開発した物理シミュレーションで8K映像に落とし込み可視化。その映像に小室哲哉が音楽を加える。(11月5日)


星になったシンセサイザーの第一人者
巨匠、冨田勲に捧げる空間作品

「Clair de Lune -Sound Program Structures-」

シンセサイザーの第一人者、冨田勲。1974年、世界的にみてもかなり早い時期にシンセサイザーを用いた楽曲「月の光」を発表。ビルボード誌の第1位を獲得し、日本人として初めてグラミー賞にノミネートした人物だ。その巨匠が昨年の5月に亡くなった。インスタレーション「Clair de Lune -Sound Program Structures-」は、冨田勲に捧げる作品だ。彼の「月の光」を使用し49個の球体LEDが音楽と同機。音の種類が、それぞれの球体を表し、光量が音のボリューム、浮遊する高さが音程を表わす。つまり、光の構造体が音楽を表す作品となっている。(11月3日、4日、5日)


普段はプラネタリウム!!その天井に高精細な映像を当てると…
ドームシアターで体験する没入体験

A/VISIONS 1

ドームシアターで行われるプログラムは、会場に行ったら是非体験してほしい。このプログラム、毎回100人限定で楽しめるものとなっているので、希望者が殺到しそうだ。とくに3日、4日に出演するMAOTIKや5日行われるRez infiniteがオススメだ。Rez infiniteは水口哲也がプロデュースした共感覚アドベンチャーゲーム。それを投影し100人で同時体験しよういう試み。さらにKEN ISHIIが出演しRez infiniteとコラボレーション。KEN ISHII本人のTwitterによるとゲームに合わせて7.1サラウンドで音をダブ処理してライブミックスするとのこと。
※11月3日、4日のドームシアターのプログラムと5日Rez infinite×KEN ISHIIのプログラムへの参加は、当日18時より6階受付で整理券が配布されます。5日Rez infiniteのみの参加は、事前にhttp://peatix.com/event/316789で参加申込みが必要。



読者にオススメしたいプログラム3選
 前述した3つのプログラムは誰にでもオススメしたいものだが、次の3つは、クラベリア読者に向けてオススメしたいものを挙げる。


極限まで真っ暗な空間で聴くエレクトロニックミュージック
MONOLAKE

初日、メインホールの最後を飾るMONOLAKE。この日、彼はホールを極限にまで真っ暗にした状態でライブを行うという。そこにマルチチャンネルのエレクトロニックミュージックが放たれる。体験者は、何かを見ることでも、ステージ上の演奏者を観察することでもなく、音響により迷子になり連れ去られることなるという。脳感覚と身体感覚が出会う、奇妙な新領域を体験できるだろう。(11月3日)



光るコマが奏でる音
MYRIAM BLEAU

Soft Revolvers (short) from Myriam Bleau on Vimeo.

モントリオールを拠点とするデジタルアーティスト、MYRIAM BLEAUの作品は、今年の「MUTEK.JP」のなかで最もユニークだ。彼女の使う楽器は4つのコマ。これを回すと回転に同期して光り、音を奏でる。一見、突拍子もないアイデアだが、そういえばクラブカルチャーの周りでは、回転はひとつのキーワードとなっていることに気付かされる。ターンテーブルしかり、ブレイクダンスしかり。
本作品はArs Electronica PrixArs 2015、Digital Musics and Sound Art 栄誉賞を授与している。(11月3日)


ライブミュージシャンとして生まれ変わった
コンピューターミュージック革命の先駆者

JAMES HOLDEN & THE ANIMAL SPIRITS

かつて国際的DJだった、JAMES HOLDENがヘッドフォンを外した。2000年代初頭のコンピューターミュージック革命の先駆者がライブミュージシャンとバンドリーダーとして劇的な生まれ変わりを遂げたのだ。エレクトロニックミュージックにスピリチュアルなジャズの要素を取り入れた本プロジェクトは、彼の初期トランス時代への回帰とも見て取れる。クラブシーンを賑わせてきた彼の進化を見逃すわけにはいかない。


 想像してみてほしい。何かを初めて体験するときの、ワクワク感やドキドキ感。そして少しの困惑もエッセンスとなり、あなたの感性を刺激する。そんな、見たこともない映像、聴いたこともない音楽を求め続けた探求者たちが一堂に会する3日間が、いよいよ始まる。

 

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■MUTEK.JP公式サイト
http://mutek.jp/

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