─お2人とも神戸以外でもDJをやっていますが、よその場所でやってこそわかる地元との違いだったり、地元のよさはありますか? 上田: これはテリーのほうが経験豊富なんで、テリー君に答えてもらいましょう。 テリー: なんでですか(笑)。よくも悪くも、お客さんが素直かなと思いますね。なんとなく踊ってるんじゃなくて、その日に対しての意気込みの強さとかあるのかなと。おもしろくなかったら踊らないし、おもしろかったら踊るし。だから、今日ミスしたなとか、今日よかったなとか、反応がダイレクトに返ってくるんですよね。 上田: 確かに、ちょっとのミスっていうかグルーヴを壊すと一発で引いちゃうんですよ。その代わりスイッチ入った時はすごいというか。神戸は、他にクラブもないし、朝まで遊べるとこも少ないですし。それで、夜遊び=TROOPCAFEをみたいな部分もあって。だから目的意識が強いのかなと思いますよね。 ─上田さんは、WOMBの10周年のときにDJされてましたよね? 上田: あのときは、1階ラウンジのオープンだったのでなんともいえないんですが、WOMBのメインフロアでやったこともあるんですよ。変な話、いいも悪いもないんですよ。やっぱ好きな人が来てるから。WOMBやageHaってよりアミューズメント性が強いクラブだから、遊びに行く側もほかのクラブに行くよりもモチベーションが高いと思うんですよ。それを見てるとTROOPCAFEに来てるくれる人も、けっこうモチベーションが高いと思うんですよね、わかんないですけど(笑)。でも、この質問むずかしいですよ、むずかしいというかうまくいえないですよね(笑) テリー: 神戸のシーンって捉えるとうまくいえないんですけど、TROOPCAFEに関していえば、ほかのお店や都市に比べるとほんとに好きなことをやってるなと思うんですよ。伝えたいものをやっていけてると思うんです。だからどこに行っても絶対負けたくないですし。負けてないなという気持ちもありますしね。 上田: 僕らがイメージして制作しているのって、神戸や関西圏を見てっていうより、WOMB、ageHa、AIR、elevenを見て、じゃあ僕らはどう行こうかっていうのを表しています。だから、そこと一緒に日本のシーンを作っていけてると思うんですよ。 インタビュー中 テリー: ロンドンがあったり、ベルリンがあったりとか、いろいろな音楽都市があるじゃないですか。それと同じ感じで「日本=東京?いやいや、神戸もあるよ」っていう風に、世界からも見られるようなものにしたいですよね。 上田: 僕の口癖が「神戸最高」なんですけど、クラブシーン関係なしで神戸を世界に発信したいっていう地元愛は、どの都市の人にも負けないですよ。やっぱりそういう気持ちを一緒に持ってくれてる人たちと制作してることって多いんですよ。コミュニティも大きく分けて1つしかないから、いがみ合いもないですし。 神戸電子専門学校が中心となっている映像・情報処理の世界のハブ都市にする活動や、神戸ファッションウィークとも一緒にお仕事してるんですよ。神戸のみんなが、音楽に限らずそれぞれの分野で神戸を世界に発信していこうとしてるんです。神戸はね、日本で1番いい都市なんですよ。僕らは地方都市だからこそ街が1つになれるし、地元を愛する人たちで何かを作ろうと思えるんですよ。音楽にしろ芸術にしろ、大きい興業って東京と大阪じゃないですか。でも神戸って大阪と隣接してるんで、最新のものを体感できるから、みんな洗礼されているんですよね。でも、悪くいうわけじゃないんですが、ほかの地方都市って、最新のものに触れる機会が限られてしまうと思うんですよ。地方性もありながら都会性も体験できるのって特殊な街だと思うんですよ。だから、絶対おもしろいものってできると思うんですよね。 (右上へ続く) |
インタビュー中 ─テリーさんが主催している「Bush」に関してお伺いします。イベントのコンセプトなど、メイキングに関する基盤となる部分を教えてください。 テリー: 今は、有名なアーティストを呼んでパーティーをやりつつ4年になります。始めのほうはコネクションもなかったですし、大きいパーティーはできなかったんですけど、今やっといろんな繋がりもできてきて。 ビッグアーティストを呼んで開催するのが「Bush」で、TROOPCAFEでも店のブランディングとしてイチオシのものとしてやらせてもらってるんですよね。あとアンダーグラウンドなシーンに特化したパーティー「Summit」も定期的に開催していて、こっちは本当にディープな音でお客さんがついています。「Bush」来年の5周年を目標に、レジデントDJだけでできるパーティーにしたいんですよ。そこに音楽だけじゃなく服屋さんだったり、サブカルチャーを含めて地域密着型のイベントにしていきたいですね。あくまで地域密着でありながら、でもそこから発信できるものっていうのは、ほかでは絶対真似できないものになると思うんですよ。東京もでワンマンでやっていけるDJって限られてるじゃないですか? 一そうですね。 テリー: そういうアーティストがお手本であって、ワンマンでやるスタイルができないと、シーンが活性化しないと思うんですよ。それを神戸から発信することによって、新たな文化ができると思うんですよ。やっぱり地方の人って、何かあったらすぐ東京行っちゃうじゃないですか。僕はやっぱりこっちで生まれたんで、時間はかかると思うけど、地元をどうにかしないとやってる意味がないなと思います。 一たしかにゲストDJありきのイベントより、レジデンシーがしっかり盛り上げていて、支持されているイベントのほうが楽しくなりますよね。 Bush VJ映像 テリー: 日本のDJってめっちゃうまいと思うんですよ。やっぱりそれをもっと発信していかないと、クラブに関わる人がそれを伝えていかないと、始まらないと思うんですよね。それは、東京ではなく地方都市の神戸でもできると思いますよね。場所はそんなに関係ないですよね。 上田: 一昔前なんですけど、リリースが売れて来日した外タレアーティストを見に行ったら「あれ、DJできてないじゃん」みたいない人ってたまにいませんでした?でも今いなくなったよね?一時期多かったやん。 テリー、クラベリア: うーん(苦笑) 上田: ドラムンとかおったんすよ。「お前できないじゃん」「DJ下手じゃん」みたいな。だから、僕たちはゲストDJをむかえるときに絶対DJって決めてたんですよ。コウさんにしてもTomiieさんもフミヤさんもオガワさん(AFTER HOURZ)にしても、僕らが思う絶対なDJなんですよ。DJに来て欲しいですよね。
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─昨今のDJの評価がリリースありきになっているのはしょうがないんですが、もう少しDJって評価されてもいいと思うんですよね。 テリー: 僕は今トラックメイキングもがんばってますけど、確かにいい曲をリリースしてもDJが良くなかったら出演範囲も狭くなるような気はしますが、どちらもできるにこした事はないですね……。 DJ TELLY @ Bush -4th Anniversary Special- feat.STEVE BUG ─上田さんから見た「Bush」の印象は? 上田: 結局、みなさんわかってくれてると思うんですけど、TROOPCAFEっていったらDJ TELLYがいて、っていうところがあるじゃないですか。もちろん僕らのメインイベントなので、僕らがやりたい海外のトップアーティストを呼んで、全国的にもアピールしてきたイベントなんですよ。でもそれだけじゃなくて、そこに地元発信の、ファッションブランドとのタイアップや、いろんな会社とコラボレートしてきて。 今は、お酒のブランドのサザンカンフォートとタイアップしていて、サザンカンフォートのオフィシャルミックスCDを作ったんですよ。その第1弾ミックスを担当したのがテリーで。次回は、大阪発の鞄ブランドとタイアップして、Bushオリジナルノベルティーを作るんですよ。それぐらい「Bush」はイベントとして1つの形になってきてるんですよね。あとBushから派生したミニマル主体のイベントで「Summit」っていうのがあるんですよ。1回目のゲストがフミヤさんで、あとはREBOOTやMASOMENOSも出演したイベントですね。こっちは、とにかく音を聴きにきてほしい。余分なものを削って音に集中できるイベントになってますね。 TROOPCAFE店内 ─クラブミュージックは以前に比べると市民権を得たと思いますが、クラブカルチャーに関しては、どうしても悪いイメージも付きまといます。今後クラブシーンをよりよくするために、シーンに関わる人が大切にしなければいけないこと、よりよくしていくために必要なことは何だと思いますか? テリー: すっごい個人的な意見ですが、少し前まではポップスでもそうだと思うんですけど、山下達郎や小田和正みたいに本気でポップスを作り込んで来た人たちが売れていた時代だったと思うんですよ。今って、逆に真剣にやってる人たちが売れにくい時代だと思うんですよ。興業が先攻してしまってる気がするんです。だから雑誌見ててもおもしろくないですよね。たとえば雑誌見てて「こいつがほんまにヤバイんかな?」って思いますし、、、でもクラブシーンでも、ちゃんとやってる人にスポットを当ててやっていくってことがクラブシーンを残していく手段の1つだと思うんですよね。じゃないとディスコとの区別がつかないじゃないですか?だからやってる側も、ほんとにやりたいことを伝えていくってことがオーディエンスにももっと伝わっていくと思うんですよ。「もっとちゃんと伝えていくもんあるやん」って思うんですよね。 ─メディア側にも問題がありますよね。どうしてもスポンサーを大きく取り上げるようになっていくと、メディアの個性もなくなって、本当に伝えたい部分がなかなか伝えわらなくなる。悪循環っていうか。だからクラベリアだからできるこの企画をスタートさせたんですけどね。 上田: 一緒なんですよね。いいものやんないといけないし。ただ、今の状況ってそんなに悪くないと思うんですよね。僕は高校のときからディスコ行ったりしてたんですけど、20歳になったらナイトクラビングは卒業するっていうのがイメージだったんですよ。今は、20歳にならないとデビューできないじゃないですか。だから感覚が違うんですよね、かたや20歳で卒業、かたや20歳で入学なんだもん。20代前半の人って下手したら石野卓球さんも知らないって人いますもんね。僕衝撃だったんですよ。僕にとってはあの電気グルーヴですよ。"LOOPA"(石野卓球主宰のテクノレーベル)ですよ。でもそんな中、僕らの同級生のおっさん連中も遊んでて、40代でも遊んでるみたいな人たちもいて。そんな環境ってなんかおもしろいですよね。むしろ熱いと思うんですよね。 (右上へ続く) |
─5年後のクラブシーンってどうなってると思いますか? 上田: 僕らは、どちらかというと今に流されたくないんですよ。逆に今しんどくても、これはまじヤバイからって思ってやってますし。たとえば「なんで今こんな音やってんねん」って言われたら「5年後この音でパンパンやで」って言いますよね。僕いつも言ってることがあって「日本のクラブのシーンがなくなってもTROOPCAFEはあるよ」って思ってやってるんですよ。 テリー: やってる側が目的を持ってやっていかないと、何も作れないと思うんですよ。さっきも言ったんですけど、別にディスコならディスコでいいし、クラブならクラブでいい。ただぶれずにしっかりやっていかないと、次世代の人達のやれる場所が減っちゃうと思いますし、そういう場所を作っていくっていうのが大事な仕事だと思うんですよ。 僕も永遠の若手の気持ちですが、僕より若い世代の方に憧れてもらうようにならないといけないわけなんですよね。やってる側がぶれてしまったり、軽い気持ちでやってしまったら、その子たちに言えることって、すごく少なくなってしまうと思うんですよ。だから、そういった部分を大事にしなかったら、クラブシーンってなくなってると思うんですよ。ただ僕らは「ほかがなくなってもTROOPCAFEはある」って気持ちでやってるんで。 TROOPCAFE店内 ─お2人にとってクラブとは? 上田: なんなんすかねー。俺かな(笑) 僕にとってクラブは?って言われてもわからへんわ。でも70歳になってもフロアで踊ってる気がするわ。一生踊ってると思う。クラブって何って聞かれてもわからへん。なんでもないねん。ちなみにテリーにとってクラブとは、神戸ビールです。 一同: (笑) 上田: 表現の場であり、勉強の場であり。でもアイデンティティを確かめる場所ですかね。自分の存在を確認する場所というか。めっちゃかっこよく言いたかったんですけど、めっちゃダサイじゃないですか(笑)。あなたにとってクラブとは?「自分を確かめるとこかな」って(笑) テリー: 誰やねんていうね。 上田: でも、そうなってしまったんですよね。でも好きなものがわかるようになった場所であり、好きな人がわかるようになった場所でもあり、自分に何が足りないかわかるようになった場所であり。自分がダメになる場所でもあり(笑)。20歳からの14年間週末を99.9%クラブで過ごしてるんですよ。僕めっちゃクラバーなんですよ(笑) インタビュー後 左から上田氏、DJ TELLY氏 (END) |
TROOPCAFEAddress: 神戸市中央区北長狭通2-11-5 グランドコーストビル B1F Access: 三ノ宮駅から徒歩4分 Phone: 078-321-3130 URL: www.troopcafe.com/ clubberia TROOPCAFE club page:http://www.clubberia.com/clubs/112-TROOP-CAFE/ 1998年11月に「情報発信基地」をコンセプトにオープンし、2004年9月に神戸の中心街に移転リニューアル。サウンドシステム (DYNACORD COBRA SYSTEM)、バースペース、ラウンジスペース、インテリアなどの全ての要素をパワーアップし、毎週豪華なラインナップで神戸のナイトライフ、サブカルチャーシーンを盛り上げている。 特にヨーロッパの旬なダンスミュージックを中心に展開。テクノ、テックハウス、ミニマル、ドラムンベース、エレクトロ、プログレッシブだけでなく、ジャズ、ハウス、クロスオーバー、ディープハウスなどのサウンドも毎週末楽しめる。 |
DJ TELLYダンスミュージックをキーワードに様々な要素を取り入れたプレーで、独自の世界観を披露している。現在は神戸TROOPCAFEのメインDJとして数多くのパーティーをプロデュースしている。DJ TELLYは、ヨーロッパの旬なダンスミュージックをいち早く紹介すべく『Bush』『Summit』などの自身のパーティーを立ち上げ、 SATOSHI TOMIIE、KO KIMURA、DJ EMMA、FUMIYA TANAKA、DUBFIRE(DEEP DISH)、RADIO SLAVE、SANTOS、HECTOR ROMERO、AUDIOFLY、SEBO K、D’JULZなど国内外問わず今のクラブシーンで活躍し続けるトップアーティストを招き開催し成功をおさめている。まさに関西クラブシーンを牽引しているキーパーソンとしての地位を確立している。そして、DJ活動においては関西でのプレーだけでなく、WOMB、ageHa、YELLOW、AIRなど、東京のビッグクラブでもプレーするなど高い評価をうけ、活動範囲を着実に広げている。 楽曲制作にも力をいれ、KO KIMURA主宰のFUTIC RECORDINGS TOKYOからbreakmidi名義でEPをリリースし、さらにGrand Galleryから発売されたコンピレーションCD『TIME AND SPACE』にも収録される等、breakmidi a.k.a DJ TELLYとして変幻自在に現場のリアルなサウンドを表現している。 またCMの制作、野外でのインスタレーションなどの活動を勢力的おこなっている。 2008年4月には、PIONEER SVJ-1000とDVJ-1000を駆使したフルオリジナルのAUDIO-VISUALのSHOW CASEを初披露し話題を集めた。常に世界を見据えた最先端のサウンドとスタイルを披露しているDJ TELLYの終わりなき挑戦は続いていく。 myspace |