このアルバム部門に関しては、他のアワードとは異なり、clubberia編集部で2013年にリリースされた作品の中からオススメしたい作品を20枚ご紹介。2013年は、Daft PunkのRandom Access Memoriesのリリースにより、一般層にまでディスコサウンドを届けられたことは1つのトピックスかもしれない。またエレガントな前者のような作品とは別に、アンビエントやドローンや、クラウトロックのような要素が入った実験的な作品であり聴きごたえのある作品も多かったように思う。これらの商品はジャンルを問わずオススメできるので、ぜひチェックしてみてほしい。

Tomorrow's Harvest

Boards Of Canada

Warp Records / Beat Records

何年も昔に作られた隠れた名作と呼ばれる無声映画を見ているかのようだ。過去の作品に比べ、彩りが限りなくモノトーンに近くなった印象を受けた。このアルバムをうまく彩るような言葉を見つけるのが難しい。言葉を必要としない音楽、限りなく純粋な音楽に捉えられる作品だった。

In The Sun

Bomb The Bass

O Solo

セカンド・サマー・オブ・ラヴを代表する名曲「Beat Dis」で UKレイヴカルチャー~アシッドハウスブームを引率したColdcut並ぶ伝説のユニットBomb The Bass。セルフプロデュース作品へと回帰した本作は、80年代のレイヴカルチャーを現代に蘇らせたかの様な快楽的なロックに仕上げている。多様なリズム形成で飽きずに長く聞ける作品。

Random Access Memories

Daft Punk

Sony Music

オリジナルとしては8年ぶりとなる4thアルバムには誰もが驚いた。今までは、ディスコリエディットやネタ使いが、所謂サンプリングが彼らの魅力でもあったが、今回はミュージシャンによる生の演奏で、生音によるエレクトロニックブギーを展開した。刺激的ではないが、非常にエレガントな1枚だ。

Smoke

Dapayk & Padberg

Mo's Ferry

脱力することが最高のパフォーマンスを発揮するかのように、4つ打ちながらもこれほど洗礼された音楽はあるだろうか。レーベル〈Mos Ferry〉を主宰し精力的な活動を行うDapaykと、スーパーモデルのPadbergのコンビによる最新作は、ポップでエレガントなテックハウスの理想形とも言える。

ENGRAVINGS

Forest Swords

Tri-angle

BurialやMorriconeのスピリットを継承する音楽として、各方面からも大絶賛を受けたミスタードローン、Forest SwordsことMatthew Barnesが3年振りにリリースしたアルバム。妖しげなドラムとそれに反するようなフレッシュで美しいシンセやギターに深いリバーブとダブ処理が施されたサウンドは、五感が広がっていくかのような精神に訴えかける世界観を作り出している。

Understanding Is Everything

Ian O'brien

Octave

独自のハイ・テック・ジャズ・サウンドを追求する孤高のUKアーティストIan O'brienの12年ぶりにリリースされた本作は、裸の彼を映し出した作品に思えた。自身の喜怒哀楽の全て、地球のエネルギーを感じるかのような調和が取れた世界観が、自身の身をすりにすり減らし生まれたかのような命をぶつけられたような感動があった。

Overgrown

James Blake

Universal Music

2011年最大の衝撃作となったデビューアルバム『James Blake』から2年、脳が溶け出すようなエレクトロニックな要素はそのままに、Brian EnoやRZAらの助力も得て、より多彩になったビート。ポストダブステップというジャンルをもはや超越し、ヒップホップからハウスまでを衝撃的なまでに再解釈した完璧なアルバム。

The Inheritors

James Holden

Border Community

純粋なまでに自由が生み出した狂気的な美。UKプログレッシヴハウスシーンのカリスマJames Holdenによる〈Border Community〉から7年ぶりとなるニューアルバムは、アンビエント、バレアリック、クラウトロック、チルアウトなどさまざまな要素が混在する音世界で、彼の底知れぬ才能をまざまざと見せ付けられたようだ。

AMYGDALA

DJ Koze

Pampa Music

前作『Kosi Comes Around』から8年ぶりとなったアルバム『AMYGDALA』。ハウス、テクノ、ダウンビートとアルバム自体のふり幅は決して広くはないが、ポップでカラフルなサウンドで非常に聴き心地のよい作品だ。たとえそれがダビーな音であってもだ。彼の豊かな音楽性がそのまま作品に溶け出したようだ。

Vapor City

Machinedrum

Ninja Tune / Beat Records

〈Ninja Tune〉移籍第1弾作品となった今作は、ポストダブステップからジュークを通過し、2013年下半期隆盛を極めたジャングル~ドラムンベースの最深型を提示した。持ち前のエレガントなメロディーは健在で、重厚と軽快を合わせた彼ならではの独創的なビートミュージックを形成している。奇才プロデューサーの記念すべき通算10作目は紛れもなく名盤といえる1枚。

Respect Yourself

Marcello Giordani

Endless Flight

イタリアのMarvin & Guyの片割れMarcello Giordaniによる初のフルアルバム。レーベルは、〈mule musiq〉傘下の〈endless flight〉。90年代初頭を連想させるハウスサウンドとディスコサウンドからインスパイアーされた独創的でローファイなサウンドは、生々しく人間味溢れた作品となっている。ヴォイスサンプルのループ感も中毒的で聞けて踊れる1枚となっている。

Her Blurry Pictures

Mathew Jonson

Crosstown Rebels

Cobblestone Jazzでお馴染みのミニマルハウス/テクノのパイオニア、Mathew Jonson。複雑で手の込んだリズムと、徐々に変化していく楽曲展開、ディープハウス/エレクトロニカからの影響を併せ持つエクスペリメンタルなミニマルテクノが収録されている。これまでの彼のモダンなスタイルを集約したかのような彼らしい作品となっている。

Hyper Fleeting Vision

Mergrim

PROGRESSIVE FOrM

日本のエレクトロニカを牽引する名門レーベル〈PROGRESSIVE FOrM〉からリリースされた音楽家、光森貴久によるソロプロジェクトmergrimのセカンドアルバム。Janis Crunchをはじめとしたヴォーカル、クラシック界でも一線を走る演奏家たちをゲストに迎えて圧倒的にスケールアップしており、電子音楽の境界線を広げたかのような広い視界が得られる。

Ja/Noe

Metaboman

Musik Krause

Robag Wruhmeらのリリースで知られるドイツのレーベル〈Musik Krause〉から、レーベルの中心アーティストMetabomanによる待望のファーストアルバム。活動10年を越えながらアルバムはたった4枚(本作を入れれば5枚)しかリリースしていない超マイスペースレーベル〈MUSIK KRAUSE〉。ジャズやファンク、ヒップホップのエッセンスを取り入れたユニークなテクノサウンドは、ポップなブラックユーモアが感じ取れる作品だった。

Yes It Will

Rafiq Bhatia

Rest Assured

ネクストPrefuse 73、Flying Lotusとも形容されるRafiq Bhatia。N.Y. ブルックリンを拠点に活動する、アメリカ生まれのインド系ジャズ・ギタリスト/プロデューサーのファーストアルバムは、メロウなダウンビートからアーシーなアップビートまで全編にわたる完成度の高さで、生音とエレクトロの融合による中毒性の高いサウンドを描いている。エクスペリメンタルジャズ、ポストロック、ビートシーンの次世代を担う存在なだけにチェックしてほしい。

Black Radio 2

Robert Glasper

Blue Note

昨年、ラジオから最も流れてきていたように思う本アルバム収録曲の「I Stand Alone feat. Common, Patrick Stump」。ジャズとヒップホップを自在に体現し、音楽シーンに旋風を巻き起こしてきたピアニストRobert Glasperが昨年リリースした『Black Radio』の続編となった本作は、よりヒップホップ、R&Bへ歩み寄りながらジャズの香りを残し高貴な音楽へと昇華しているように思う。

Macrochips & Microdips

Samps

Big Love

Washed Out以上の旋風を巻き起こす事間違い無しと呼ばれる注目の新人THE SAMPS。10年代インディ・シンセ・ダンス最重要ユニットの世界初CDリリースとなった本作。ローファイなサンプリング感はデトロイティッシュであり、シンセを生かした浮遊感で彼ら独自の白人ファンクミュージックが楽しめる。〈Big Love〉からアナログのみでリリースしてきた全ての音源に未発表曲を加えて初CD化した日本特別編集盤。

Abstraktsex

Seiho

Day Tripeer Records

恐るべきニュージェネレーションの登場だ。2011年リリースした『MERCURY』も素晴らしい作品だったが、セカンドアルバムとなる『ABSTRAKTSEX』は、どこか冷めたミルクティーのように心地よい。それはリスナーと少し距離感を取ったかなのような冷静さで作られているようだ。すっと入ってくる柔らかさがありながら、輪郭がはっきりしている。まさに「Seiho」としかいいようがないオリジナリティに溢れた作品となっている。

Caregiver

The Mole

Maybe Tomorrow

ユニークなテクノ/エレクトロニカ作品をリリースしているThe Moleだが4年ぶりとなった本作も、そのセンスは健在だった。ダンスフロア映えするハウス/ビートダウントラックでありながら、ダンスミュージックはもっと自由でいいとでも言うかような、一筋縄ではいかないオリジナリティあふれるエレクトロニックサウンドが描かれている鮮烈なアルバムとなっている。

Vapor

Yosi Horikawa

First Word Records

音を建築していくかのような立体感とフィールドレコーディングによるサウンドは、どこか私たちの記憶の栞を思い出させてくれる音楽が詰まった1枚。デビューアルバムとなる本作は、英〈First Word Records〉よりリリースされ、現在も世界を舞台に活躍する注目の日本人の1人だ。