日米のラップ/ヒップホップ/アーバン・ミュージックに絞って2015年のベスト10アルバム・チャートを作りました。チャートを作りながら考えていました。それは、この音楽文化の複雑さとそれゆえの魅力です。快楽と禁欲、若さと老い、資本主義とカネ、暴力賛美と非暴力、友情と愛情、ヘイトとラヴ、信頼と裏切り、退廃と健全、ドラッグとアンチ・ドラッグ、セックスと愛、仲間とファミリーと地元=フッド……といったいくつもの価値が混在し、時にある価値や思想が恐ろしく過剰に突出します。また、そういう過剰に対する反発も起こる。そのような運動はこのカルチャーの歴史において幾度となく、常に起きてきたことです。が、たとえばネオ・ソウルとギャングスタ・ラップとストーナー・ラップとコンシャス・ラップが同居して、時に当たり前のように混じりあう、2015年現在はそういうより混沌とした状況にあると思います。というよりも、「すべてがある」。それがリアル。つまり、いまこのジャンルにおいては、「何かを選び取る」ことではなく、そのような「すべてがある」ことにどのように向き合うのか。おののきや困惑を伴うそれ自体が選択なわけですが、その向き合う態度が聴き方と生き方に深くかかわってくる。そう思います。どの作品も素晴らしいですが、チャートの順位にはそういう2015年の個人的な考えが反映されています。
10
Travis Scott『Rodeo』
9
C.O.S.A.『Chiryu-Yonkers』
8
Jill Scott『Woman』
7
A$AP Rocky『At.Long.Last.A$ap』
6
GOKU GREEN『HOTEL MALIFORNIA』
5
Vince Staples『Summertime '06』
4
The Internet『Ego Death』
3
Miguel『Wildheart』
2
Donnie Trumpet & The Social Experiment『Surf』
1
Kendrick Lamar『To Pimp A Butterfly』