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Golden Pudel
80年代よりハンブルグの音楽の移り変わりを見続けてきたクラブ、Golden Pudel。インディペンデントなパンク箱からスタートし、今ではハウスやダブステップの他、ジャンルレスにエレクトロニック・ミュージックの「新しい音」をピックアップしている。ここの愛すべき、または尊敬すべきオーナーのラルフ。毒舌でありながら誰よりも面倒見のいい彼の元には、いつもハンブルグの音楽好きが集まってくる。そんな彼に、Smallville RecordsのJUSTと共に、クラブの歴史や変わらないスピリットについて話を聞いた。

http://www.pudel.com/
http://www.mfoc.de/mfoc.php
interview: Kumi Nagano text: Norihiko Kawai
photo: Asami Uchida special thanks: Just Von Ahlefeld (Smallville Records)
Smallville


● まず、自己紹介をお願いします。生まれはハンブルグなのですか。

ああ、俺はあんまり旅するたちじゃなくってね。でも日本のことはよく知っているよ。ケーブルテレビでドキュメンタリーなんかを見ているからね(笑)。俺はこの箱のブッカー、プロモーターをやっている。Golden Pudelは昔、パンク箱だった。80年代の頃はスクワットされた建物で、場所も違うところにあった。90年代に入って場所をここに移して、エレクトロニック・ミュージック主流でやるようになった。今年で21年目。ハンブルグやドイツ音楽の歴史を見てきた場所でもあるね。

Golden Pudel

●どうしてGolden Pudelに携わるようになったのですか。

RALF :
どうしてって、ブッキングやプロモーションをノーギャラでやる奴が俺以外にいなかったからじゃないか? それ以外、理由が見つからないよ(笑)。以前、ここでよくDJしていて自然とパーティもやるようになっていたからね。

JUST :
彼は本当に顔が広くて、強いつながりを持っているし、何よりお金のためじゃなくて、いい音楽のある本当にいいパーティを作ろうとするから。その点で彼の右に出る人はいなかったと思う。

RALF :
以前、ベルリンのレーベルでアシスタントマネージャーをやっていて、MATTHEW HERBERTのマネージメントなどもしていたりしたが、今はもっとビジネスビジネスしないでやってる。
Golden Pudelは、お金のためにやっていることじゃない。It's Not The Money Thing. たまにプロモーターが「このバンドをブッキングしてくれ」とお金を積んでくることもあるが、そういうことじゃない。あくまで非商業的に、スポンサーなしで「イイ」と思ったことのみをやってきている。俺らは、ミュージックラバーだから。

Golden Pudel

(右上へ続く)
● この街からもそんな空気を感じます。

RALF :
街自体はとてもリッチなところだよ。親の世代は裕福に暮らしてきたけど、それに反発するようなムーブメントがあった。「Fxxx You The Money, Listen To Punk!」といった具合にね。18歳のときに最初に買ったレコードがパンクだった。

●どんなパンクを聴いていたのですか。

RALF :
Punk Is Dead! パンクはもう終わったよ。80年代の頃の話さ、もう忘れてくれよ。当時の音はもう昔のもので、聴くこともないよ。今聴いても何の意味も持たないさ。死んだケネディーが生き返るようなものだから。当時のレコードといったらパンクかエレクトロニック・ミュージックの走りしかなくて、パンクもそうだし、ちょうどYELLOW MAGIC ORCHESTRAなんかもよく聴いてた。

JUST :
Punk Is Attitude. パンクは音楽そのものというよりも、音楽を聴く姿勢、ライフスタイルそのものだった、ということだね。

RALF :
俺は今もある意味「PUNK」だけど、音楽としては聴いてないよ。

● GOLDEN PUDELの歴史を教えてください。

Golden Pudel

RALF :
インディペンデントのパンクシーンから始まって、今はそのときそのときの「新しい音」をピックアップするようにしている。エレクトロニック・ミュージックのね。

JUST :
でもそれは、テレビから流れてくるようなコマーシャルなものということじゃなくて「アーティストの発してるバイブがいいもの」ということ。表面的な音は変わっても、インディペンデントなスピリットはパンクの時代から受け継がれていると思う。

RALF :
音楽の流れは、半年くらいでもう変わっていくだろう? 俺の興味を引く音だから、今はダブステップをかけたりするけれど、数年前までは全く違う物をかけていたし、1年後にもまた違う音をかけているかもしれない。音楽は常に変わり続けるけど、スピリッツや姿勢は以前から変わらない。

(左下へ続く)



Smallville


● ここにくるお客さんはどうですか。

RALF :
20~40代くらい。学生も沢山来るよ。いずれにしても音好きが集まる場所。そして誰でも入ることができるところ。ドアマンがいて、入場を断ったりなんかしないさ。エントランスで2ユーロさえ払えば、誰でもウェルカムさ。ポッシュなクラブに行ってる連中は、1度きりしかこないけどな、ここはダーティーなクラブだから(笑)…トイレの壁には落書きだらけ。アンダーグラウンドな雰囲気さ。

Golden Pudel

● 素晴らしいです! 今もパーティのブッキングは全て担当しているのですか。

RALF :
俺はブッキング部門の総括だから、例えばJUSTがオーガナイズするパーティをここでやったとしたら、もちろん彼がアーティストを選ぶし、その提案に対して俺が意見を言うこともある。でも基本的にはみんなと話し合って決めている。

● スケジュールを見ると、月、火、水、木それに週末…と毎日オープンしているようですが…笑。

RALF :
ああ、ドアの鍵をなくしたから、店を閉められないんだ(笑)

● だからパーティをやり続けている、ってわけですね(笑)曜日ごとに何か特徴はあるのですか。

RALF :
金、土はダンス指向の音が多くなっているが、曜日ごとに色をつけると「今日は●●のジャンルの火曜日だから行く」といった人も出てくるだろう。それじゃあおもしろくない。ある意味、期待を裏切りたい。予想外の音楽と出会うサプライズを大事にしたいんだ。例えば、ハウスをやってる次の日に、とっても行儀の悪いノイズバンドがやっていたり。それも日本から来た…(笑)そんな感じのがいい。

Golden Pudel

● 日曜の夜にはダブステップのパーティが多いようですが、それはあなたがブッキングしているのですか。

RALF :
ダブステップと限ってはないけど、エレクトロニック・ミュージックの中でもよりオープンマインドな音を指向しているよ。日曜の夜は俺がオーガナイズしている。MFOCという名前で、Music For Our Childrenの略だったり、Mother FuXXin Of Californiaと呼んでくれてもいいし(笑)。去年は日本人アーティストも何人かプレイしたよ。大阪出身のライブバンド、DJ SCOTCH EGGなんかがね。日曜は、俺もDJをやるんだ。いつもレコードショップをチェックして、新しい音を常に探しているよ。



(右上へ続く)
● フライヤーもおもしろいですね。

RALF :
c.i.alexの手がけた絵だよ。パンチが効いててイイ感じだろう?

Golden Pudel

● たくさんあるかと思いますが、思い出に残っているパーティのことを教えてください。

RALF :
いろいろあるが、JIMI TENORが6人編成のバンドでやった時、ものすごい熱気だった。小さいステージが、バンドメンバーでいっぱいいっぱいになってね、ここは小箱だから…。

● ところで、どうしてクラブの名前に「プードル」とつけたのですか。

RALF :
ここのポリシーとして「パンク・ダンディー」を掲げているんだけど、プードルは犬の中でもダンディーな感じがするだろう? ポッシュでなくパンクでグラマラスな。そう、パンクなプードルは、いい服を着ているんだ。でも下着はものすごく汚いのを着用(笑)…そんな感じ。

● そろそろ時間になりました。これで最後の質問となります。あなたにとって「音楽」とは。

RALF :
難しい質問だね。んー、例えるなら「食べる」「寝る」「SEXする」と同じくらい俺の人生に必要不可欠なもの。

● ありがとうございました。

Golden Pudel

(左下へ)

※このインタビューはZOOM Q3を使用して撮影されました。
(現在発売中のQ3 HDの一つ前のモデル)賑やかなバーやクラブ、
さらにはスピーカーの前でもクリアな音で撮れるので、欠かせない取材ツールでした。