ARTISTS
>

The Glimmers

Eskimo

時は'80年代初頭にさかのぼる。モーとベノエリー(ダヴィットのニックネーム)は'80年代のNYCのヒップホップのルーツを描いた『Beat Steet』にハマる。ヒップホップ、ブレイクダンスそして、グラフィティの3種の神器。地元ベルギーのゲント(ブルュッセルの西50kmに位置する都市)にいた彼等にとって、これからまさに起ころうとする新しいムーヴメントはとてつもなくエキサイティングだった。ブロックパーティにスクラッチにエレクトロサウンド…クオリティの向上なしにはここまで大きな飛躍はありえなかっただろう。キャプテン・ロック、アフリカEバンバータ、クラフトワーク、ハービー・ハンコック、そしてもちろんグランド・マスター・フラッシュらのサウンドに強く影響され、モーの家の屋根裏部屋でテクニックとスクラッチとビートのミックスをひたすら練習した。彼等は機材をべノエリーのたった4平方メートルの地下室に移し、腕を磨き、ついにお客さんの前でプレイするための準備を積み重ねた。そして、そのチャンスはゲントにあるミストラルというクラブで訪れた。学校の前と昼休み、そして放課後にプレイした。ありとあらゆる、音楽的にクレイジーだと思われることを実践した。お約束ごとを守るには若すぎたので、ポップだってなんだってプレイした。U2、マドンナ、プリンス、ティアーズ・フォー・フィアーズ。それらのトラックをバリー・ホワイトやボハノンのオールドディスコにそして大好きだった、ヒップホップやエレクトロのトラックに溶け込ませていった。その時から、彼等には音楽的なファシズムつまり偏見は一切なかった。もっとも大切としたことはダンスフロアとその永続的なヴァイブしかありえなかった。やっと(!)16歳になった彼等はゲントのバーVliegend Peerdで毎週金曜日レジデンシーももち、初期のエレクトロニック・ボディ・ミュージックの要素をその魅惑的なミックスに落とし込むようになる。当時ベルジアン・ニュービートとして名をはせた、DJ Olivier Pietersの12インチをわざとピッチを遅くかけ、ディープでグルーヴィなサウンドに強く影響を受けたのだった。常に新しい音楽に敏感で寛容だった彼等はこれらのサウンドを新たなレジデンシー、Fifty Fiveで昇華させ10時から朝の7時までプレイし続けた。ニュービート、初期のアシッドハウス、ディスコ、ニューウェーヴ、クラシックなロック…
'90年代に入ると、モーとベノエリーはベルギー国内中から殺到するオファーに追われるようになった。彼等のセットはシカゴやデトロイトからって来た未来的なサウンドや808 Statesのような実験的なエレクトロニカやファンクの効いたカットの数々で構成されるようになる。しばらくすると多くのDJ達は同じ方向に進み始めた、そこでもまた彼等は誰しもが進まない方向へと歩み始めたのだった。何よりも音楽が好きで、どんなスタイル、ジャンル、ムーヴメントの音楽だって決して拒むことはしない…。その後R&Sからもコンピレーションがリリースされた「Free the Funk」や「Kozzmozz」といったパーティへ定期的に参加し、'97年より自ら始めたパーティ「Eskimo」によって、彼等の存在はヨーロッパ全土に知られていくようになったのである。
2000年に彼等は最初のEskimoのコンピレーションを制作し、彼等のニュービート、ファンク、ダブ、ハウス、テクノ、ヒップホップ、ニューウェーヴ、そして、エッジの効いたポストパンクディスコの融合は世の中にあふれた平坦でつまらない直線的なMixものとは一線を画した。彼等の音楽的な理念は以下の言葉に集約されている。
「ミックスして融合。音楽的な視野を広げよう。未来は過去の中にある現在。過去は未来を投影する…」。
現在では彼等はミラノのファッションショー、パリの雑誌のパーティ、そしてロンドンのクラブパーティ『Bugged out!』などで頻繁にプレイする。そして、ニュービートのコンピレーション『Serie Noire 1』と 『Serie Noire 2』をリリースし、さらには『Culture Club Volume I』、『Culture Club Volume II』をリリース。さらにはプロダクション名義であるDirty Mindsで[Crosstown Rebels]、[Eskimo]、[Wally's Groove World]、[Blue Note]、[Relish]といったレーベルからリエディットやリミックスをドロップしていく。彼等のDJとしてのスキルを存分にトラックに落とし込んでいるのだ。2004年にはこれまでの作品を集めた『The Glimmers Remixed, Re-edited And Phucked Up1』をリリース、2005年に入ってレーベル[K7!]より全世界に向けて、『The Glimmers DJ Kicks mix』を、昨年は『FABLICLIVE 31』をドロップした。最高のパーティのサウンドトラックとでも形容しようか。20年以上も前にグランド・マスター・フラッシュによって受けたレッスンを見事に開花させたのだ。彼らの冒険はまだまだ始まったばかりだ。

http://www.glimmertwins.com