多くの優れた才能が集まり、様々なジャンルが交錯するグラスゴーのディープなエレクトロニック・ミュージック・シーン。そんな今最もアツく、濃いシーンの中において、ラスティが一際輝く天才クリエイターということは火を見るより明らかだ。ピッチフォークで執筆するマーティン・クラークは、他の若手アーティストから飛び抜けて注目されるラスティの音楽性を、「過剰にデジタルが溢れるこの世界に生きることの象徴」と言及している。多くの場合、驚異的なスピードで進化するデジタルの世界は、同時に現実世界の出来事を反映する。ラスティの生み出すサウンドもまた、人々をコカインに走らせたシンセ・サウンド、焼け付くような‘80s ポップ風のギター・サウンド、巨額のマネー・ゲームまで巻き込んだ‘00 年以降のR&B、クラシックなレイヴの記憶など、様々な時代をタイムトラベルするかのようだ。‘07 年に発表されたラスティの『Jagz The Smack EP』は、自分たちの音楽をコンスタントにMySpace にアップロードし続けるアーティストやプロデューサーが蔓延する『自己満足世代』に、衝撃を与えるリリースだった。ラスティは、5曲入りのこのEP で黄金時代のエレクトロニック・ミュージックを融合するだけでなく、その後「UK ベース・ミュージック」と呼ばれることとなるダンスミュージックの始まりを示唆していた。
その後の3年間で、「Zig-Zag」、「Bad Science」、そしてブリストルのジョーカーとのコラボレーションが話題となった「Play Doe/Tempered」など、今やクラシック作品として評される12 インチ作品をリリース。そしてジェイミー・リデルやケリス、ザ・ビッグ・ピンク、ニッキー・ミナージュのリミックスを手掛けたのがきっかけとなり、UK 屈指の名門レーベル<Warp>からデビューEP「Sunburst」をリリース。日本のプログレッシヴ・ロックや、16 ビットのゲーム音楽、グライムやデトロイト・テクノに影響されたこの5曲入りEP で、彼は近未来のレイヴ・ミュージックの形を表現した。弾むようなスネアと、波打つようなシンセ、そして沸き立つようなベースが繰り出す唯一無二のサウンドは、ラスティが大きく羽ばたくためのステージを整えた。