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Black Coffee

一躍時の人となり名声を得たことを考えると、アーバン・ハウスパーティーの市場に貪欲に裾野を広げようと躍起になり、ビートにばかり囚われているその他大勢のアーティストのひとりではないかと見られるかもしれない。だが実際は違う。南アフリカ・ミュージック・アワード受賞作品である『Home Brewed』が示すとおり、DJ兼プロデューサーであるBlack Coffeeは、従来の音のあり方そのものに対峙しているといえる。立体感のあるバランスと美しい旋律に組み込まれた、控えめな洗練さと同時に感じられるノリの良いアフロハウスや演出された高揚感。それらはBlack Coffeeが好む本物のアフロポリタン・ハウス、すなわちアフリカの地でじっくりと熟成されていながら、トレンドセッターとしての要素が垣間見られるサウンドなのである。

南アフリカ、クワズール・ナタール州のダーバンで生まれたBlack Coffeeは、音楽を学ぶため専門学校でジャズを専攻した。
2003年のRed Bull Music Academyに、南アフリカの参加者として選ばれたことをきっかけに南アフリカのDJシーンに躍り出て以来、後ろを振り返ることなく前進し続けると心に決め、精力的に活動を続けている。

2005年、デビューアルバム『Black Coffee』をリリースし、同年<Soulistic Music (PTY) Ltdが>を設立。Black Coffeeにとって世に出る足がかりとなったこのデビューアルバムは、ごく基本的な機能だけを備えた楽曲ソフトを使い制作したことを本人が明かしている。「基本的なアイデアを詰めただけで、MIDIコントローラーは一切使わずコンピュータマウスだけで作ったから、アルバムの制作工程をどう説明したらいいのか分からない。」と語る。また彼にとって、歌に楽器の生音を使用することも大事な要素となっており、それによってトラックに魔法がかかったように命が吹き込まれるのである。

卓越したクリエイティブな才能を余すことなく発揮するBlack Coffee。彼が創り出すサウンドは、ファミリーという小さな単位から、コミュニティー、仲間同士、文化、国、そして世界という大きな規模に至るまで、幸福感をもたらしていることに疑問の余地はないのである。