誰もが知るベテランプロデューサー/DJ、マーリー・マール(Marley Marl)は、サンプリング・ループという概念を史上初めて実践した人物。ビッグ・ダディ・ケイン(Big Daddy Kane)、クールGラップ&DJポロ(Kool G Rap & DJ Polo)、ビズ・マーキー(Biz Markie)、マスタ・エース(Masta Ace)、ロクサーン・シャンテ(Roxanne Shante)、MCシャン(MC SHAN)ら錚々たるMCたちを招集、伝説のヒップホップ集団、ジュース・クルー(Juice Crew)を結成。80年代末から90年代初頭いわゆる『ヒップホップ黄金期』に一時代を築いたと言っても過言ではない。
キャッチーなサンプリングと快活かつ力強さ溢れる彼のサウンドは、当時ストリートレベルだったヒップホップを、より身近に、より広い市場にアピールすることに貢献。さらにビートメイカーとしても、イメージするグルーヴを求めてジェームズ・ブラウン(James Brown)のレコードを使用し、サンプリングすることで、独自のドラムループを編み出す。それは従来のヒップホップがドラムマシーンに頼りきっていた機械的なサウンドを大きく変えるだけでなく、自身の80年代のプロダクションに斬新さとモダンな息を吹きかけるものとなった。そんなキャリアを持つマーリー・マールは9月30日、NYのクイーンズブリッジで生まれた。同地区の低所得者用公営団地で少年時代を過ごし、地元のショウやパーティーでDJとしての経験を積みながら、ヒップホップ/エレクトロを専門とするTuff Cityレーベルで数多くのミキシングを担当した。その後、冒頭で述べたジュース・クルーを結成する。ロクサーヌ・シャンテの"Roxanne'sRevenge"(84年)、MCシャンの"The Bridge"(86年)といったヒップホップ・アンセムや、エリックB&ラキム(Eric B. & Rakim)の"Eric B. Is President"やヘヴィD&ザ・ボーイズ(Heavy D & the Boyz)のフルアルバム等で手腕を奮う。88年にジュース・クルーの面々を迎えた初のフルアルバム"In Control, Vol. 1"を発表、90年にLLクールJ(LLCool J)のビッグヒット"Mama Said Knock You Out"をプロデュースしグラミー賞受賞するなど、プロデューサーとして不動の地位を確立させる。90年代に入ると、TLCやローズ・オブ・ジ・アンダーグラウンド(Lords Of TheUnderground)の傑作をプロデュースする。次第にHot97で高い視聴率をマークしたピート・ロック(Pete Rock)とのラジオDJで活躍するようになる。さらには2001年に英BBEレーベルからBeat Generationシリーズの"Re-Entry"を発表すると、根強いファンからの支持を獲得、スーパープロデューサーとしての健在ぶりをアピールした。
そして何と、あのブリッジバトルで火花を散らしたKRS ONEのニューアルバムを総合プロデュースし来年1月にも発表される。
全米の人気ヒップホップブレイズマガジンでは、その伝説のブリッジバトルについて3ヶ月にわたり特集されている。