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AOKI takamasa "Private Party" Release Tour

●AOKI takamasa

1976年大阪府出身、現在はドイツ・ベルリン在住。2001年初頭に自身にとってのファースト・アルバム「SILICOM」をリリースして以来、コンピューター/ソフトウェア・ベースの創作活動を中心としながら自らの方法論を常に冷静に見つめ続け、独自の音楽表現の領域を力強く押し拡げる気鋭のアーティスト。

ヴォーカルを全面に取り入れた作品やFat Cat RecordsよりリリースされたTujiko Norikoとのコラボレーション・アルバム、op.discでの4/4リズムを用いたミニマルトラックへのチャレンジ、英国BBCラジオ・プログラム[One World]への楽曲提供(The Beatles 'i will'のカヴァー)、YCAMでのコンテンポラリー・ダンサー/映像作家との共同制作など、その活動のフィールドはさらなる拡張を見せているが、AOKI自身の表現が持つ存在感は常に確固たるものであり寸分の揺らぎも感じさせない。様々な表現手法・様々なソフトウェア/ハードウェアを意欲的に試行し、CPUを極限までドライヴさせる一見過激とさえ思えるそのスタイルの中にはリズムとグルーヴ、つまり音楽という芸術表現の最も根源的な存在に対する敬意と探究心が脈々と流れ続けており、そのことこそがAOKIという傑出した1人のアーティストが創り出す音楽をさらに魅力的なものにしていると言えるだろう。

彼自身がその創作活動と同様に不可分なものとして重きを置き精力的に展開しているそのライヴ・パフォーマンスは国内外でかねてから高い評価を得てきているが、そのクオリティと強度は年を追う毎にさらなる進化を続けている。いまやコンピューターをメインに用いてライヴ・パフォーマンスを行なうアーティストは数多いが、彼らの大半が単なるコンピューターの機能的な利便性のみに頼ったパフォーマンスに終始しているのと対照的に、AOKIは「何故コンピューターを用いてパフォーマンスを行なうのか」「コンピューターだからこそ表現し得ることは何か」という事柄を冷静に見つめ続け、自らのライブパフォーマンスの中でそれらを実践し続けている。

最近では2006年には、田中フミヤと半野喜弘の二人が主宰するレーベルop.discから自身6作目となるアルバム「PARABOLICA」をリリース。その後2001年から2003年までのライブを収録したアルバム「LIVE recordings 2001 - 2003」を半野喜弘主宰のCirque.Mavoより発売。そして今年2008年、その才能を坂本龍一に認められ7作目となるアルバム"Private Party"が坂本龍一主宰のcommmonsより発売となる。



○Release Info

AOKI takamasa「Private Party」

2008.09.24 on sale (RZCM-46014) \2,940 (tax in)



AOKI takamasaという音楽家がこれまでのキャリアで追い求めてきたものの本質を簡潔なことばで表すとしたら、それはすなわち「誰も聴いたことがない、まったく新しいかたちのファンク」であるはずだ。学生時代にドラムを叩きはじめ、リズムとグルーヴ・・・つまり音楽と言う芸術表現が持つ最も根源的なパワーに魅了された彼は、溢れる創造力をどこまでも透明な探究心ときわめてインテンスな態度で表現してきた。最初に手にしたドラムセットはのちにサンプラーとシーケンサーへ、そしてコンピューターとソフトウェアへといったようにツール(道具)としてのかたちは変化してきたものの、彼がリズムとグルーヴに対して持ち続けてきた敬意は決して揺らぐことは無かった。それはほとんど畏敬の念に近いものだと言っても差し支えないだろう。彼にとって、コンピューターとソフトウェアは彼自身の創造力の中からとめどなく溢れ出すあらゆるファンクネスを音というかたちで発露させるためのツールのひとつでしかなく、それは決してコンピューターとソフトウェアの機能的な利便性に頼ってのものではない。

ここに届けられたAOKI takamasaの新しいアルバム「Private Party」は、彼が考えるまったく新しいファンクが濃密に詰め込まれた、ひとつの到達点と言えるマスターピースだ。一聴してすぐに彼の音だと分かるエッジの鋭いリズムと暖かいベースライン、透明で涼やかなコードに彩られたタイトル曲 [Private Party](Tr.1)で幕を明けるこのアルバムは、これまでになく有機的でしなやかなファンクネスに満たされている。彼がアルバム中ほぼ全編にわたって手弾きでプレイしたというベースラインは、まるでそれ自体が意志を持った生き物のようにリズムの隙間を縦横に這い回り、自身のヴォーカル以外にもTujiko NorikoによるヴォイスやDamiana Terryによる詞など気のおけない友人たちを交えながら実にプライヴェートで密度の濃い、固有のリラックスしたムードを創り出している。それはまるでかつてのソウル・シンガーやミュージシャンたちが日夜スタジオに籠って創り上げた名演・名録音が持つムードにも近しい密度感と言ってもいい。アコースティックな方法論に逃げ込まず、あくまでソリッドなエレクトロニック・ミュージックというスタンスを貫きながらこれほど有機的で人間の体温にきわめて近いグルーヴを獲得した作品はかつて無かったのではないだろうか。おそるべき傑作。

Text: Kohei Terazono



ぼくたちはAOKIくんのような、若くて才能のあるミュージシャンをサポートしたくて、コモンズを立ち上げたようなものなんです。ですからとうとうAOKIくんがコモンズの仲間になってくれて、とてもうれしいのです。

ぼくはAOKIくんの音楽を、いわゆるエレクトロニカの一つとはとらえていません。もっと広がりをもったポップスではないでしょうか。一方でAOKIくんの音楽は、エレクトロニカと言われる音楽の中でも、ずばぬけて緻密に作られていて感動ものですが、それだけではなく、強力なグルーブとすぐれた音色のセンス、それにユーモアというか、独特のおかしみも感じられます。

たくさんの可能性を秘めた才能ですので、これからどういう音楽を作っていってくれるのか、とても楽しみです。 坂本龍一