■JAY'ED // PROFILE
JAY'EDの"強み"は「ハイブリッドの美しさ」そのものにある、と評したのはソウルシンガーのORITO氏だったりするのだが、実際"彼"の語感及びリズム感はたった一つのルーツからくる類のものではない。日本人の父と、ポリネシア系ニュージランド人の母の間に生まれ、幼い頃はニュージーランドで暮らしていた彼はバイリンガルとして育ち、音楽に関しても洋邦、ジャンル、年代分け隔てなく楽しめる素直さとキャパシティを持ちあわせている。"何より一番好きで、自分にもっともしっくりくる→歌いたくなるのがR&B"だという基本軸こそは揺るがないが、いわゆる"真っ黒(マッチョ)な歌い 方"は好まない、どちらかと言えば非シャウター的スタンス。ナイーブ、センシティヴ、ロマンティックノどうとでも形容出来るが、歌い手としてのJAY'EDの持ち味は総じてスウィートかつエモーショナルな類のものだ。それは例えば、ヒップホップのトラックの上でラッパーのフロウの如き歌い回しを駆使する際もさほど変わらない。つまりは、その繊細でいて、十分に芯の強い特異な歌声こそが一つの共通言語と成り得ているのだ。同性の者が聴いても気恥ずかしさを覚えない…・彼はその事実を誇ってもいいと思う。「正直ここまでキャラクターの立った歌声を持つ若手R&Bスタイリストが(R&B先進国とは言い難い)この日本にいたなんてノ」と、そのパフォーマンスや音源に触れ驚いた人が少なくないのも当然と言えば当然の話だろう。現状のジャパニーズR&Bと呼ばれるシーンを見渡しても、彼とパーフェクトに(キャラが)被る存在など皆無に等しいのだから。活動拠点を地元である大阪に定め、DOBERMAN INCを始めとするヒップホップ・アーティストとステージをシェアしたり、音源上で絡んだりするようになった2002年以降、彼は"表現者"としての自分を改めて強く意識するようになる。初めてフィーチュアリング参加した楽曲となるDOBERMAN INCの「Jam Session」('02)から、ソロ・アーティストとしての初のオリジナル・シングル「Why」('05)までの"成長ぶり"は、その時期('02~'06)の録音物をコンパイルしたコンピレーション・アルバム『The Gift ~just let me know~』('06)のリパッケージ盤となる本作に触れて頂ければ明らかだろう。持ち前の"R&Bマナー"も、リアルタイムで聴き込んでいたライヴ・ マテリアル「Life Time」(オリジナルはマックスウェル)のピアノ伴奏による完全一発録りや、レコーディングで初めて歌ったクラシック・メドレー(それぞれのオリジナルは、アル・B・シュア?サーフィス?ボビー・ブラウン)でしっかり味わえる通りかと。当初"どちらかと言えば日本語詞を書くのが苦手"だった彼は、自身の共通言語の幅を広げることでそれを克服しつつある。メロディーメイカーとしての才能こそは元から光るものがあったが、ソングライターとしてはまだ発展途上な粗引き素材の彼だけに、メジャー・デビューが決定した来る2008年に打ち出す"New JAY'ED像"には期待し過ぎても何ら損はないだろう。得意のファルセットを活かした滑らかなボイシングがその"動き"にも出た、ライヴでのジェントリーなパフォーマンスにも増々磨きがかかっている。敬愛するジャスティン・ティンバーレイク(2002年の彼のソロ公演でオープニング・アクトを務めた り、雑誌取材でインタビュアーを務めたことも)が提唱した"Sexy Back"つまり「セクシーな音楽の復権」に最も近い位置にいる日本人ポップスター、それが今現在のJAY'EDが狙うべきポジションではないだろうか。
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