「dj masdaとNicolas Lutzが見せるDJの深み」
誰でも気軽にDJを楽しめるようになった現在、その行為の価値を感じ取ることは以前に比べて難しくなっているのかもしれない。しかし、選曲、ミックススキル、フロアの状況をつかみ取るセンス、そうした要素が、トラックをつなぎ合わせるという一見単純な作業の中に反映されるDJというアートフォームは、シンプルであるが故に奥深く、無限とも思える可能性を秘めている。現在、ベルリンに拠点を置くdj masdaのDJを聞いたことがある人ならば、その意味が分かるはずだ。テクノ・ハウスを中心としていながら、ときに意外性のあるトラックを忍ばせる彼の選曲には定評があり、数多の現場を相手に培ってきた経験に裏付けられた、高精度のミックスによって紡がれるグルーヴは、意識を惹き込むスリリングな陶酔をフロアにもたらしてきた。今回のMiddle Of NowHereに出演するNicolas Lutzもまた、masdaと軌を一にするセレクターだ。現場のDJのみで確固たる地位を築いてきた存在であり、ディープ、インテリジェント、かつファンキーな楽曲をクリエイティブな並びでスムーズに積み上げて行くロングプレイは特筆に値する。そんなふたりが一夜の流れを作り上げるMiddle Of NowHereは、画一的なDJとは一線を画す深みを感じさせてくれる空間となるに違いない。
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