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LIQUIDROOM 20th ANNIVERSARY -Theo Parrish All Night Long-

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セオ・パリッシュが、リキッドルーム20周年でプレイする理由。

セオ・パリッシュが音楽家としてのキャリアを開始した1996年から、もうすぐ30年。デトロイトのから発表したデビューEP『Baby Steps』では、ドナルド・バードなどをサンプリングした「Early Bird」など、ソウルフルなハウスミュージックを聴かせてくれた。しかし、1997年に自身のレーベル設立後から、独自性を発揮していく。イーブンキックといったダンスミュージックの骨格を残しながらも、まずは徹底的に楽曲から装飾を省き、テンポは概ねBPM110くらいにピッチダウン。「JB’s Edit」などに至っては、サンプリングしたホーンのフレーズの音が、意図的に割られている。常識外れな楽曲の数々に驚かされたものだった。しかし、楽曲の中心はドラムのシンコペーションとファンキーなベースラインが織りなす反復したリズムであったため、大きなサウンドシステムのクラブでプレイされることで威力を発揮。世界中で人気を獲得することになった。から発表された革新的なブラックミュージックの数々は、現在でも世界中のDJやプロデューサー、ビートメイカーへ大きな影響を与えている。また、今年スタートしたばかりのでは、王道キラーチューンをリエディット。キャッチーなフレーズを活かしながら、快楽的なフレーズを徹底的に反復させる。ここではで得た手法を使い、過去の楽曲を新しく蘇らせている。
伝統と革新。ディープなとアッパーなの楽曲は、一聴すると表裏一体のように感じるが、聴き込むほどに双方がマルチバースのように存在していることがわかる。2022年には再びアンビエント要素も包括し、実験性の高い『Cornbread & Cowrie Shells For Bertha』を。そして翌年にはシンガーのモーリサ・ローズの歌を全面にフィチャーした『Free Myself』(2023年)を発表。伝統と革新を行き来する創作が、30年近くも続けているのだ。
 DJプレイに関しても、筆者は作品に近い感想を持っている。黎明期のハウスミュージックに影響を受けた『Sketches』(2010年)発表時の来日パーティで、ダンスホールレゲエや80’sヒップホップがプレイされた。アルバムのイメージとはかけ離れているため、混乱した記憶がある。しかし、プレイに身を委ねてみると、プレイされている黎明期のダンスミュージックならでのラフで太いリズムが、『Sketches』のコンセプトに近いものだと理解することができた。
こう書いてみると、ある意味でセオ・パリッシュは、ファンの期待を裏切るDJに感じるかもしれない。しかし、本当のところは誠実で、ファン思いの人物である。2014年、リキッドルーム10周年記念パーティにて、バンドと共にステージへ立つ予定であったが、メンバーの都合でキャンセルになってしまった。観客の一人として、よくあるトラブルと承知した一方、リキッドルームのホームページには、公演中止のアナウンスと共に、セオ本人による丁寧な謝辞が掲載された。ファンへのお詫びと同時に、本人の無念さも記された真摯な文面は、今もはっきりと記憶に残っている。 
2014年から10年。リキッドルーム20周年記念のパーティで、セオ・パリッシュがオープンからラストまで単独でDJプレイをする。数々の歴史が詰まった会場で、一体どんなプレイを聴かせてくれるのか。新しい伝説の夜が、生まれそうな気がしてならない。