舞台は今から20年前、2000年代初頭の台湾・桃園。台湾クラブ史上もっとも絢爛にして獰猛だったこの時代、「たった一軒のクラブによって、台北中のすべてのクラブが潰される」とクラブ関係者たちが慄くほどの存在感を放っていたのが、桃園でわずか数年だけ営業した怪物箱「獅子王」だった。週末の一晩で6,000人を動員したと語られるフロアでは、おもにハードなハウスやトランス、ブレイクビーツに中国語圏のヴォーカルを織り交ぜた独自の中華式ADMが猛威を振るっていた。それはやがてこの地に根付く「台客式」、大陸の「慢揺」、ベトナムの「ビナハウス」などへと変貌を遂げてゆくことになるのだが──。
今回、旅の水先案内人として初来日を果たすのは、「獅子王」の開業から閉業までレジデントDJ/照明監督として活躍したフィメールDJ、FION。さらに日本からは、90年代後半に台湾の巨大レイヴに参加し、2005年にクローズした青山「MANIAC LOVE」でテクノ黎明期を支えたDJ SHUFFLEMASTERの緊急参戦が決定した。
今夏の過酷な東南アジアツアー、そして10月の西日本ツアーを経て精神的にも深みを増したOMKクルーによる最先端ADMセット、進化を止めない凶暴サウンドシステム「MMP220」の爆音も必聴。一年の締めくくりは“ソイパ”で踊り乱れて、穢れを祓い清めよ!
FION
台湾東部・花蓮出身のFIONは、台湾原住民である阿美族に出自をもつフィメールDJという点で、この分野における代表的な先駆者である。1990年代初頭よりキャリアをスタートさせると、その類まれなリズム感覚と技術を武器にテクノ、ブレイクビーツ、ヒップホップなどをジャンル横断的にプレイ。2000年代に入ると、「獅子王」の開業とともにレジデントDJ兼照明監督として一時代を築いたクラブを支えた。現在は、同じく「獅子王」のレジデントDJを務めていたパートナーの@Lとともに〈bpm production〉に籍を置き、台湾各地のレイヴやフェスティバルで活動を続けている。
DJ SHUFFLEMASTER
1994年よりDJ/プロデューサーとしての活動を開始。佐久間英夫とのレーベル〈SUBVOICE〉からリリースしたシングル作品は軒並みヨーロッパで高い評価を獲得し、キャリア初期からヨーロッパツアーや世界のビッグクラブ、ビッグフェスで成功を収める。東京・青山「MANIAC LOVE」ではレギュラーパーティ「HOUSEDUST」を主催、中でも1998年のジェフ・ミルズ来日の一夜は今なお伝説として語り継がれている。2001年にはベルリン「TRESOR」と契約し1stアルバム『EXP』をリリース。ハードミニマルの金字塔となった同作は、2023年に再発され話題を呼んだ。