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WHITENIGHT vol.2

来たる7月12日の白日、渋谷円山町に位置するclubasiaで、Def Der Die Das主催のWHITE NIGHTを開催。

今年29周年を迎え、多くのドラマとアクシデントを経験した老舗は、誰よりも様々なセッションを観てきた。全ては予定通りにはいかず、タイムテーブル通りに終わらなかった夜もある。音楽は娯楽のようなもので、あってもなくても生きていける。それでも音楽が助けてくれた夜があると信じたい。いくら準備しても、変わらずアクシデントは起こり、コントロールできない.....ナイトクラブは生き物のように畝り続ける。提供するのは音楽だけでもなく、人間関係だけでもない。全ての要素が交わり合って、一夜が出来上がる。その完成度の基準というのも、自分が固執した桃源郷にすぎず、何を得たか得られたか、それは娯楽に関係ない。飲む、笑う、目を閉じる、傾聴する、会話する、音楽に夢中になる、etc…. その場所にいる理由を咎める必要はなく、その夜が思わぬ潤いを与えてくれるか。その期待の一心で匿名者たちが集う。生まれるかわからない、音楽と人間、空間との新たな出会い、傾倒する音楽への憧憬を目指す胸の高鳴り、未知への遭遇は知識の有無には留まらず、新たなる感情の獲得は夜に生きる者たちに拓かれた背徳の一歩だ。

多くの時間を過ごした歴史の重みが語るclubasiaにて、零からスタートするWHITE NIGHTでは全フロアを開放、それぞれのフロアに世代を超え、多くの場面を目撃してきたアーティスト達が集結する。

Main Floorをつかさどるのは6組の異分子。
なのるなもないとの2MCスタイルで始動したヒップホップグループ降神での活動を皮切りに、その後MC bleubirdとビートメーカーScott Da Rosの3名で構成されたTRUINE GODSと、謀らずもヒップホップの渦中で頭角を表し、その後日本語表現探求の道へと進み、舞台芸術、古典芸能の分野に至るまで、多岐に渡り活動する志人を招く。ラップやフロウという枠組みを超えた言語表現の領域にいながら、探求する中で見つけた微動だにしない不動の韻律、硬い踏韻、”ラッパー” “ヒップホップ”というラベリングを優に超え、伝道師さながらの言語を紡ぎ出す。
さらにアヴァンジャズ、即興、フリーフォームの代名詞と言っても過言ではない、BLACK SMOKERを取り巻く3名、K‑BOMB、BABA、伊東篤宏がライブセッションを披露。ビートメイカー、MC、ラッパー、プロデューサー、サウンドアーティスト、音響作家と、マルチタレントな3者のセッションは、予測不能の展開を見せてくれるに違いない。そして同レーベルBLACK SMOKERよりミックスCD「Mekano 1974-92」をリリースし、八王子の最深リスニングバーSHeLTeRにてレジデントDJを務め、大小留まらず多くのヴェニューに現れ、フロアと呼応する深い知覚音楽への鋭敏さで右に並ぶものはいないDJ/選曲家 AKIRAM ENと地肩の強いラインナップが続く。
世代を隔して覆面集団 Rave Racersのwarai_motokoと松果体主宰UGによるスニッフィングミュージックデュオ GIZMOのモダンな見た目に反した徹底的な現場主義の2人が奏でるセッションにも期待がかかる。東京屈指のローカルグラウンド下北沢をホームに、DJバーMEIMEI、ブックカフェ気流舎の運営に携わり、身体が獲得した死生観と身体表現を紐付けDJへと包括していくsavezearth、そして主催を務めるDef Der Die Dasがメインフロアを轟かす。

Second Floorには、オルタナティブの旗手たちが集う。日本初のダブステップレギュラーパーティとして名高いBack To ChillでレジデントDJを務め、ダブステップを主軸に、インダストリアルなエクスペリメンタルミュージックへと展開し、独自のサウンドスケープを描くHELKTRAMを筆頭に、悦楽奇祭 魔界難入 のオーガナイザーの1人Daichi Wagoと魔界難入vol.3に出演したビートメーカー Nobou、名古屋は栄の薬膳BAR sakaeの番人Iriyama、日本のフォンクシーンで名を馳せるGUNDARIを主導するitako、阿吽の呼吸で重なり合う OKBOY×Dogwoodsの2名によるライヴ、正則変則全方位型 DJのsuimin、さらに名古屋を拠点にワールドツアーと日本縦断を繰り返す電子音楽家 食品まつり a.k.a foodmanがライブセットで登場。面妖なエクスペリメンタルミュージックの臨界点を探る実験場になることだろう。

Lounge Floorには、真髄のエンターテイナーが大集合。
神宮前の魔境bonoboのオーナー SEIを筆頭に、ジャグリングマスターDOMMY、ポリリズミックなトライバル名手hinaruko、MELTYを主催するMasato Chiba、RAWとRAPTUNTEによるDJユニット142857が登場する。場数に裏打ちされたスキルを打ち出さず、フロアとの音楽コミュニケーションを重点に置く、快楽主義者の楽園の悦びを感じて。

ノイズの効いたプログラミングを操るTASCのヴィジュアルアートの刺激が伴い、知覚は最骨頂まで研ぎ澄まされる。お腹が空いたらKIDOTAMAのフードで腹拵えをする。踊ることだけがナイトクラブじゃない。全てを総括した無双かつ夢想のラインナップが揃った。

夜は白いのか?はたまた黒いのか?
今目の前にある規範やモラルは果たして正しいものなのか?ビビッドな色彩の装いや、常軌を逸脱したアイコニックなファッション、耳に開いた大きな穴は、オルタナティブの証明書になるのか?

断続的な懐疑心が進歩を促進し、レジェンド達は大きな背中を見せながら、追いつかせてはくれない。新しさや斬新さは世代と時間の流れから隔絶された、普遍的なフィロソフィーに収斂されるだろう。ストリートカルチャーに紐づいたヒップホップをバックボーンに、異なる場所で暗躍する世代を超えた異文化交流の行く末やいかに。この文言に心当たりのある迷い人こそ、契機になりうるこの一夜を逃してほしくはない。

プリミティブな自問自答は善悪真偽の二項対立を超えたグレイエリアに到達し、懊悩や自罰すらも包括した精神世界を剥き出しにしていく。視覚に依拠した存在証明を凌駕するエピキュリアンたちの集いが誘う、凶器だけに赦される甘美な侵犯のパラディソへ。足がすくむほど鋭い狂気の結晶体を目に焼き付けよ!