INTERVIEWS

Shinishi Osawa

93年ですかね。 夜中なんで暑くもなかったし、いわゆるフェスティバル形式でのDJのイベントは海外でも何度かやっているので、わりと違和感なくすごく楽しめました。 僕は学生をドロップアウトしてるんで、あんまり学生をやったっていう意識がないですね。まったく学校行きませんでしたから。滋賀県の大津なんですけど、京都の横ですね。中学校2年ぐらいのときには自分で演奏したりしてましたよね。 実はとりたててなくて、今でもそうなんですけど、職業としての音楽家ということには興味がなくて、どっちかというと1番好きなことだから、あえて2番目ぐらいにしておいて、「仕事的には2番目に好きなもの」ぐらいの方がいいのかなぁと今でも思ってますし。きっかけっていうのもさほどなかったんですよ。偶然京都で活動していて大阪に行ったり、東京に行ったりってことだったんで、デビューするために、このためにものすごい努力をしたっていう感じではなかったですね。 基本的にはそうですね。その90年代に3つぐらいやってましたね。最終的にデビューしたのは今もやっているMONDO GROSSOというユニットなんですけど、基本的にはバンドというか、僕がいて、時々必要な人選をしてっていうユニット形式ですね。 そうですね、意味がわかんないってよく言われました。説明するのに苦労もしましたし、1番最初に契約したレコード会社にいたっては「その形では契約できないのでバンドのメンバーを固定してください」と言われて、やむなく4人ぐらいにしぼって一応形にしたという記憶もありますね。 正直なこと言うと自分でもわからないし、唯一なんとなく自分なりに理由をつけるとしたら、迎合しなかったからというか。マーケットに媚びを売らないうか。自分の1番好きなことがあって、それに対してウソをつかずに、ブレずにやるっていうことなのかも知れないなぁと。 うん。だからたとえばこれが2番目とか3番目に好きなことだったらいいと思うんですよ。人によってはそういう人もいるだろうし。ただ1番好きなことで1回ウソをついちゃうと、それを訂正できないじゃないですか。たとえばものすごいぶっちゃけて言っちゃうと、本当に1番やりたい音楽があって、それに対して「こうやった方がもっと売れるんじゃないの?」とか「この人とやった方が売れるんじゃないの?」とかそういうよこしまな気持ちが出ちゃったときに、それで売れれば、ものすごい大ヒットすればそれはそれで楽しいのかもしれないですけど、逆にぜんぜんダメだったときに誰にも言い訳できないんですよ。「あれは誰かにこうしろっていわれてこうなったんだから」とか、そういう言い訳の必要がないことを常にやれてるかっていうのが僕の中で1番重要ですね。 ん~、やらないですね。やっぱり少ないながらも僕にもいくばくかのコアなファンの人がいて、多分彼らが僕のボトムラインを支えてくれている人たちなんですね。マーケット的に言うと、いわゆる「ブラック」っていう人たちなんですけど。その人たちは僕の音楽性とか、僕が作る音楽とかをもちろん好きでいてくれると共に、多分僕がマーケットに迎合したり、自分にウソをつかない姿勢を好きでいてくれると思うんです。

なので、瞬間的に僕がこういう風にひねってこういうものを作ったら、マーケット的に何百万枚売れるようなポテンシャルを秘めるプロジェクトがあったとしても、そこで僕がそういう風に魔がさして、そっちの方にいっちゃうと、途端に僕の1番大事なボトムラインになっている「ブラック」の人たちが興醒めしてしまうというか。

それでなくてもそういう人たちって、そういうのにすごい敏感で移ろいやすいものなので、僕にとっては1番の宝なんですよね。 そうですね、僕のこだわりはスタイルをコロコロ変える傾向にあって、ジャズっぽい感じやラテンぽい感じや、いわゆるJ-POPといわれるようなスタイルのソングライティングをしたり、はたまたクラブでDJをやるときは、もうちょっと激しいというか、普通の人が理解できないようなかなりトランシーなとらっくをプレイしたり作ったりもするんですけど、さっきの嘘をつかないということにも通じますけど、結局過去に縛られて自分のイメージを1つのイメージに固定しないということですかね。で、誤解を恐れずに、常に新しいことに自分が反応できるように新しいことをやるとか。 その中で1つの音楽性に固定されるのって、リスナーにとってものすごい窮屈なことですよね。クリエイターにも実は同じことがいえて、たとえばサザンオールスターズがまったく違うテクノみたいなことを始めたら、それはそれでみんな反感を持つじゃないですか。でもそれって僕は本当はいいことだと思うんですよね。当然おんなじことを続けていくスタイルの人、たとえばチューブが毎年夏になったら、夏っぽいアルバムを作るっていうのは伝統芸能に近いし、ただ僕はそこにはいないし、それを否定したいし、毎回違うことをやりたいし、今1番自分がフレッシュに感じられることをやりたい。そこですかね、こだわりというかは。 だから、小室哲哉さんとか1番いい例で「何でそんなことやるの!?」ってみんなが思ってるようなことをやるわけでしょ?トランスが好きになったら、そのままトランスやっちゃうし。で、それが成功か失敗かっていうのはマーケットとかみなさんが判断することじゃなくて、基本的にクリエイターっていうのは自分なんで、彼が満足してればそれでオールオッケーなわけで。もちろん経済の問題とかもありますけど、やっぱり表現者である限りは自分が納得できるものを創る。その結果いいものができたらみんなに知らしめるっていう順番なんで、すごいいい例だと思いますけどね。 ニューアルバムというか、個人名義では初めてのアルバムです。どっちも1人でやってることなんで、いまいち違いがわからない方もいるかもしれませんけど。違いがわかっていただけるのはごく限られた方だと思うんですけど(苦笑)。 縦横無尽に好き勝手やってる感じです。タイトルは「The One」といいます。1枚目っていうこともあるので。最近の僕のDJとしてのテイストを全部反映した形になっていると思います。1曲だけカバーがありますが、基本的にオリジナルですね。 9月26日になります。 僕すべてのメディアとか雑誌でも何でもそうなんですけど、メッセージを贈らないことにしてるんですけど、基本的に僕は音楽家なので、僕の音楽がすべてを代弁しているといいなぁと思いつつ、音楽を聴いてもらえればうれしいなぁと思います。 大沢伸一で「OUR SONG」。 ありがとうございました