INTERVIEWS

TRAKS BOYS

─1stアルバムの『Technicolor』を出してから1年ほどのインターバルで、今回、2ndアルバム『Bring The Noise』のリリースってことになりますが、『Technicolor』をリリースしたあとの周りの反響っていうのは、どんなものがありました?

K404(以下、K):まあ、友だちレベルっていうよりは、今まで自分たちがいっしょにやってきた人たちからの反応はそれなりにあって。ただ、作品へのリアクションってあんまり聞いたことがないっていうか……。どうなんだろうね?

─元々、TRAKS BOYSがDJとして回すパーティーとか、あと、少ないながらも『Technicolor』リリース以前に世に出ていた音源ってあったわけじゃないですか。そういったものからある程度音の感じを予想してアルバムを聞いた人っていると思うんですけど……。たとえば、僕の個人的な意見だと、1stに関してはポップな作品であるという印象が強くて。そのあたりがどう受け取られたのかなって。

CRYSTAL(以下、C):DK SOUNDとかに来てるようなクラブ・ミュージック好きな人たちはもちろん聴いてくれたんだけど、そうじゃない人たち、いつもロックとかポップスとかに親しんでいるような人たちもTRAKS BOYSの音源に触れてくれたっていう感覚はあって、それはうれしかった。

─じゃあ、幅広く届いたという実感はある?

C:うん。あの中にはいろいろ入れてたから。

─いろいろ入れてたっていうのは?

C:“200 Traks”とか……。

─ああ!1分半くらいの強烈なインタールードみたいな曲。

C:あれに反応したのは瀧見憲司さんだけ(笑)。

K:そうそう、あれがベストだ!みたいな。瀧見さん、リリース・パーティーのときも来てくれてて、ライヴが終わってから挨拶に行ったら、「あの曲(“200 Traks”)やんないんだ!? いちばんいい曲なのに」って(笑)。

C:一応練習はしてたんだけど、ちょっとイマイチかなって。

─僕も、君たちが前にコンピに提供してた“TB 003”(※『Ghetto Beat Pusher's』収録曲)とか好きだったりするんだけど……。

K:あの曲知ってんだ!?(笑)

─うん、好きですよ~。で、それとかさっきの“200 Traks”とかに反応するような人からすると、『Technicolor』はメロディーとか、キラキラした雰囲気がすごく印象に残る作品だったと思うんですけど。

C:ExTのコンピに出した、……そんときまだExTじゃないか、20001だ。20001 in Sound(※永田一直の主宰するレーベル)のコンピに出した“My Machine Keeps Burning”とかが好きで、ああいうテイストの曲をかっこいいっていう人からすると裏切られたって感じはあったかもしれない。

─なるほど。多様な受け取られ方をしたアルバムだったといえますね。そういった以前からのファンの声なり、新たに開拓したファンからのリアクションなりが、『Bring The Noise』にフィードバックされたということはありますか。

C:もうちょっとライヴ寄りというか、現場寄りの方向になったっていうのはあるかな。

K:1stのときは結構衝動で作った曲も入れてたし、ライヴもやってなかったし……。趣きがだいぶ2ndで変わりましたね。現場で「こういう曲をかけたら盛り上がるんじゃないか」って思うような曲も入れたし。まあ、そういうのばっかじゃないんだけどね。 ─ライヴをする回数は増えてきたと思うんですけど、TRAKS BOYSとして、ライヴをするときとDJをするとき、それぞれどういう感じにしようと思ってるんでしょうか。DJだったら……、最近のDK SOUNDに顕著だと思うんですけど、わりと硬めのテクノっぽい感じがすごくいいなと思ってるんですが。

C:DJだと、たしかにテクノでハイパーな感じ。ライヴは、もうちょっと幅を広げようとしてるかな。ライヴするのは毎回クラブじゃないし、バンドとかに交じってもできる自負はある。バンドとかも出てるライヴの会場で、いきなりいつもDJでやってるようなテクノで押すっていうのも違うし。TRAKS BOYSのライヴは、クラブじゃないところでも対応できるような感じになってるんじゃないかって思ってる。

K:最近、DJはまあ、DK SOUNDで聞き慣れてるような感じだと思う。とりあえず一発目っていうか、さわりはそういうテクノな感じで入るよね、どこに行っても。ライヴは……特に「今日はライヴだ!」みたいに気負うこともなく、まあ、CRYSTALのいうとおりで(笑)。自分たちでライヴする場所とかシーンは絞っているわけではないし。

─ライヴをするときって、結構ガッツリ練習してやる感じ?

C:そう。練習して、ライヴに臨む。

K:ガッツリ仕込んで。

C:自由度も残しながら、かつ、キメるところはキメるみたいな。なんかタイプ的に、DJみたいなライヴの人っているよね。ミニマル・テクノっぽくビートがずっと繋がってて、みたいな。TRAKS BOYSはそういう感じじゃない。1曲1曲しっかりやっていくっていうか。

─最近だとどこでやったライヴがよかったですか。

K:ベトナム。

─ああ~、ベトナム行ってましたね。あれはベトナムの小さいフェスみたいな感じ?

K:うーん……、ベトナムの現地に住んでる欧米人? イギリス人なのかオーストラリア人なのかよくわかんないけど、彼らが主催してるイベントに呼ばれて行ったっていう。基本、バイクのイベントだった。一見、音楽のイベントだとは思えないような。でも、夜はちゃんと音楽のパーティーっていう。

─ベトナムは行ったことないんでよくわかんないんですけど、結構都市部で行われたんですか?それとも……。

K:いや、田舎。ハノイから2時間くらいのとこにあるリゾート。

C:普通にごはんとか頼んで、すぐ出てくる感じのリゾート。で、地元のバンドとかもいて。ヘヴィ・メタルのカヴァー・バンド。中学生か高校生みたいな。

K:いたねー、かなりのクソガキ。彼らが唯一の地元(ベトナム)の人たちで。

C:ガンズとかボン・ジョヴィとかのカヴァーをしてた。でも、欧米人的にはちょっと微妙な反応で。「何これ、学園祭?」みたいな(笑)。で、それから欧米人でビッグ・ビートみたいな音やる人が出てきて。

─この時代にビッグ・ビート!(笑)

K:それなりにだんだん盛り上がってきて……。

C:で、ウチら。

─反応は?

C&K:ウケた。

─おお!お客さんは、現地の人もいて欧米人もいてって感じだったんですか。

K:いや、お客さんに現地の人はほぼゼロ。ただ、あのあたりに住んでる欧米人全員集合みたいな感じ。

─そのときは『Bring The Noise』の収録曲もやったりした?

C:うん。"Can't Repair"とか"Unbroken"とか、……あと、"Starburst"。

─ウケた?

K:ウケてたね。

C:うん。そこから『Bring The Noise』ってタイトルも来てる。

─え、そうなんだ!?

C:そのときに現地の欧米人向けの新聞が取材に来て、ケンヤくん(K404)がインタビュー受けて。そのとき俺、寝てたんだけど(笑)。で、そのあと記事が届いて、見出し見たら「TRAKS BOYS Bring The Noise」って。

─へぇ~。いや、『Bring The Noise』って、結構強いタイトルじゃないですか。人によってはパブリック・エネミーを思い出すかもしれないし。

K:だいたいパブリック・エネミーはいうよね。

─でもベトナムから来てたんですね。なるほど。その現地の新聞記者が見出しに書いた「Noise」っていうのは、TRAKS BOYSの音の様子を指しながら、同時にライヴのときのオーディエンスの盛り上がりのこともいっているんでしょうね。

C:わりと今回のアルバムの全体を表現してるかもしれない。

─じゃあ、もう新聞の見出しを目にしたときにピンと来た?

C:「これ結構いいんじゃない?」って。

K:ちょうど「アルバムのタイトルどうしよっか?」って話してたときにその記事が来て、「これだ!」と。 ─このあたりで『Bring The Noise』の制作方法に話を移したいんですけど、どんな風に取り組んだんですか。役割分担みたいなものはあったんでしょうか。

C:アルバム制作前にライヴ用に機材を買って。ケンヤくんがMACHINEDRUM、リズムマシーンですね。で、俺がMC-808っていうシンセを買って。ライヴのときは、ケンヤくんがリズムで俺がそれ以外っていう分担なんだけど、今回はアルバム用の曲作りの段階からそういう役割分担になった。

─1stのときは違ったんだ?

K:そう。いろんな楽器を使ったり、いっしょにやったり。

C:リズムを俺がやることもあったし。でも今回は、機材の分担から曲作りでもそういう感じになっていった。

─曲を作る際の最初のとっかかりっていうか、アイデアっていうのは?

C:ケンヤくんから「こういうのどう?」とか来ることもあるし。あとは俺がデモ的なものを作って、簡単なリズム・パターンとかも入れて、そのデモを元につくっていくみたいな。

K:バンドっぽいかも。

C:曲を書いて、バンドで合わせる、みたいな。

K:さっきCRYSTALがいったデモ的なものを受けて、ふたりで「ここはこういう音色で」とか話し合いながらね。今回スタジオを使ったんだけど、スタジオにその音源を持って行って、取り込んで、それをまた持って帰ってきてっていうのを繰り返して。

C:だからやっぱ、バンドっぽいかもしれない。スタジオ行ってやることは、録音。その録音した音源を持って帰って、編集する。だからPCでシンセ弾いて、打ち込んで……っていうのじゃない。

─そこが1stとは大きく違うところなんですね。

C:あと、今回は得能くんっていうエンジニアもいたから……。

K:CalmとかEgo Wrappin'とかTHA BLUE HERBとかやってる、エンジニアの「得ちゃん」ね。

C:彼にミックスは任せてたから早かったし、音のクオリティーの面は安心して曲作りに専念できたかな。やっぱりミックスの部分はなかなか自分たちでやるのは難しいから。

─曲を作る際に明確な役割分担ができたっていうのは大きいと思うんですけど、今後もしばらくはその役割分担制で進めていくんですか。今はこの形がベストだってことなんだろうけど。

C:次はどうなるか未定だけど、今回はこの方法がいちばんいいなと思って。速いし。

─曲作りにおいて速さっていうのは重視したい点?

C:う~ん……、まあ、得能くんに会ったことが大きくて。あと、前とは状況も変わってきたし、……自然と。

K:うん、制作環境には恵まれたよね。

C:機材がライヴ用に買った機材だから、わりとサクサクっていうか……。あんまり考えないでバンバンできた。

─実質2ndの制作期間はどれくらいですか。作ってる間は、結構密度濃くやったって感じ?

K:本格的に着手したのは、今年の2月くらい?

C:うん、だから半年くらいかな。

K:その間もそんなに「ガッツリ合宿!」とか(笑)、そういうノリじゃないよね。週に1回とか、多いときで2回集まって。あんまり煮詰まることもなく。

─それだけ曲にしたいアイデアとかイメージがあったってことだと思うんですけど、『Bring The Noise』全体のコンセプトのようなものは最初から決めていたんですか。

C:それはなかったな。コンセプトっていうよりは、ライヴからのフィードバックとかわりと自然に出て、できた感じ。『Bring The Noise』っていうタイトルも後付けだしね。

K:後付けだけど、不思議とまとまった感じはある。

C:コンセプトってわけじゃないけど、「音楽的にこういうのをやりたい」っていうのはあって、それに100%近づけたっていうか……。

K:やり切った感はあるよね。

─アルバム『Bring The Noise』には10曲収録されていますけど、どういう順番で完成していったんですか。

C:"Starburst"、"Lou's Acid Wave"、"Unbroken"、"Can't Repair"、……で、なんだっけ?

K:"Heartbeat Crescendo"かな。

C:そうだ。で、あれだ。"Five O'clock Squall"。

K:で、"Bring The Noise"、"No Sun No Rain"、"Boy Meets Machine"。最後が"Mr. White Goes To Disco"。

C:うん、そういう順番かな。"Lou's Acid Wave"は2月にやったから、"Starburst"以外ではまちがいなくいちばん早くできた。そのほかの曲もだんだんできていって、アルバム全体の輪郭を見つつ、「こういう曲もほしい」とかいいながら作っていった。四つ打ちの曲とそうじゃない曲と、バランスを考えながらバリエーションが出るように。

─じゃあ、最終的な曲順とか全体像とか、そういうものは頭に常に描きながら作っていったんですね?

C:そう。だから、そんなに捨て曲……っていうか、ボツになった曲がないし。

─そうなんだ。では、作っていく中で、どのあたりで「このアルバムはこういうものになるな」っていう手応えのようなものを感じられました?

C:"Can't Repair"ができたときは結構盛り上がった。

K:そう、"Lou's Acid Wave"、"Unbroken"、"Can't Repair"って、トラック系の曲が先にできたよね。で、"Can't Repair"ができたときは、「バキッとくるやつができた」っていってた。

─僕もアルバム完成前に、マスタリング前のサンプル音源を2回くらい送ってもらって聞いてて。その中には"Can't Repair"が入ってて、あの曲を聴いたときには「いい!」って思いましたもん。「来た!」って。

C:あれは完全に12インチにする前提で作った、クラブ・トラックだね。

─"Lou's Acid Wave"なんかには、ある意味でDK SOUNDの空気感を反映させたような、重厚にじわじわ盛り上がる感じがありますよね。そういう感覚って今回のアルバムの通奏低音としてあるものだと思うんですが、どうでしょう?

C:それは意識したかもしれない。ゆっくり始まって、徐々にビルド・アップしていくみたいな。起承転結はつけようと意識してた。

K:今回は曲も長いしね。

C:そう。最近のクラブ・ミュージックは長い曲多いしね。 ─じゃあ、最近のクラブ・ミュージックってことに話を移すと、インスピレーションを受けてるアーティストとか、よく聴いてるアーティストとかってどのあたりになります。

K:う~ん……、Pig & Dan。

C:Pig & Danは参考にしたね。たぶん、わかりにくい形の参考の仕方だと思うんだけど、"Unbroken"で。すごい細かい部分なんだけど、ベースにフィルターをかけるっていう。

K:あと、あの人たち曲はかなり長いんだけど、展開がうまい。はじめのほうはリズムはなかったりして、3分くらい経ってようやくリズムが入ってきたりとか。展開の妙がある。

C:あとは、Dubfireとか。Dubfireはスタジオで爆音で聴いたりした。

K:Dubfireは本当、音の鳴りがすごいし。そのとき結構、サイン波とか意識したよね。

C:「こういうベースの音色にこういう音を合わせると、こういう鳴りなんだ」とか、そういう細かい聞き方をしてたかな。あとやっぱ、展開も。静かに始まってブレイクで爆発とか、そういうのは参考にした。あとダンス・ミュージック系だと、The Field。"Lou's Acid Wave"とかそうかもしれない。

─"Heartbeat Crescendo"もThe Fieldっぽいなって思ったんだけど。

C:そうだね。リズムはロックだけど。あえて四つ打ちじゃないリズムで作ったんだよね。これは初めていうけど、"Heartbeat Crescendo"はアジアン・カンフー・ジェネレーションを聴いてから作った。

─え、そうなの!? アジカンの、何?
C:「え?」とか思うかもしれないけど、新しいアルバムの先行シングル"転がる岩、君に朝が降る"って曲。それHMVで試聴して、「あ、いいな」って。

K:この話は俺も初めて聞く(笑)。

C:ひら歌の部分を延ばして、高揚感のあるものにしようって思って作った。そういう同世代の人たちが作るロックとかに、影響は受けてないかもしれないけど、刺激は受けてる。

─なるほど、おもしろいですね。では、参考にするしないは別として、国内国外問わずにシンパシーを感じるアーティストっていますか。

C:Four Tetはすごく好き。オーソドックスなテクノとかハウスじゃなくて独自の感じなんだけど、ちゃんとダンス・ミュージックになってるのがいい。

K:うん、Four Tet、The Fieldはいいね。

C:あと今年はサンボマスターのアルバムをよく聴いた。これも試聴機で聴いてから買ったんだけど。特に音楽的な影響は受けてないと思うけど、「やられたな」って感じ(笑)。説得力がすごかった。ボーカルの山口くん、彼の音楽の聞き方はすごい。

─たしか、結構ソウルとかブラック・ミュージック好きだったり、山下達郎を通過してたりするんですよね?

C:そう。あと普通にミニマルとかも聴いてるんだよ。最近だと、Circus Company(※フランスのダンス・ミュージック・レーベル)とかがブログに載ってたりして。

─サンボマスターのファンはわからないんじゃない?(笑)

C:Circus Company知ってる人は絶対少ないと思う(笑)。で、別の日はライ・クーダー紹介してたりとか。リスナーとしてもヤバい。年もたぶん同じくらいだし、刺激にはなってると思う。

─なるほど。まあ、サンボマスターなんかはTRAKS BOYSとやってる音楽のジャンルもずいぶん違うから全然ないと思うんだけど、よく「日本の若い世代のダンス・ミュージック・シーン」とかって括られることありますよね。仮にそういうシーンがあるとしたら、その中での立ち位置ってどんな風に考えてます?僕の印象だと、特にどことベッタリってわけでもないと思うんですけど。カッコよくいえば孤高みたいな。

K:どうなんだろうね? 知り合いは幅広くできてる気はするけど。

C:でも、そんなにガッツリいつもいっしょにやるっていう人はいないし。

K:自分たちでやってるパーティーもDK SOUNDしかないし。

C:DK SOUNDもそんなにゲスト呼ばないしね。なんだろうね?

K:シーン云々は、でも、周りが決めることなんじゃない?

C:別に意識してないんだけどそういうふうになってるってことは、そういうグループなのかもしれない。

─では、TRAKS BOYSのサウンドを定義するとしたらどういうものになりますか。自分たちだけのオリジナリティーは何でしょう。

C:高揚感。スネアの連打で盛り上がるとか、そういう上昇感。基本的にそういうのは好き。ふたりのDJもそうだし、これは重要。ノイズでドカーンとか。

K:「かまし」だね。バカなかましじゃないんだけど、一発かましたいっていうのはある。グワッと持っていく感じ。

C:ダイナミックさね。あと、じわじわいくところと盛り上がるところの振れ幅だと思う。ずっとアゲアゲでいくわけじゃないし、ずっと地味にいくわけでもない。どっちもちゃんとあるよっていう。

K:DJもそういうDJが好きだね。DJ Harveyとか。ずーっとゆるい感じできたと思ったらいきなりドーン!みたいな。ボリュームも超デカくなって。

C:そういう振れ幅。つまり、ドラマチック。

K:そう、TRAKS BOYSにはドラマがあります(笑)。

─ドラマチックという言葉が出ましたが、アルバム最終曲の"Boy Meets Machine"って、ある意味ドラマチックな曲だと思うんですけど、この曲について聞かせてください。

C:これはケンヤくんから、「シンセサイザーのアルペジオを使った曲ってどうかな?」って提案があったから、俺がまずシンセでアルペジオのフレーズを作って。で、当時、なぜかクラシックを聴いてたのもあって、「カウンター・テナーを使ったテクノを作りたい」って思って(笑)。実際、途中のブレイクのところに声みたいなの入れたんだけど。それらを合体させてレイヴ感を出そうと。アンダーワールドの"Rez"とか"Cowgirl"みたいな曲のTRAKS BOYS版を作ろうってことで。 ─では最後に、今後、TRAKS BOYSはどういう方向に進んでいくのかを聞かせてください。

C:確実なのは、海外進出。12インチがPrins Thomasのレーベルから出る予定だし、Beatportとかでも俺らの曲が買えるようになるし。

K:そうだね。そういう意味ではやっと始まった感じがするよね。

C:やっと始まったし、今後、さらに進めていきたいことではある。

K:あとは、ライヴやDJのバリエーションをさらに広げていきたい。今はまだそんなに大きいところでやったことはないけど、日本のデカいフェスみたいなところにも出て行きたいし。そういう場所でもしっかり盛り上げられるようにしたい。活動を充実させたいね。

C:そのほかの部分に関しては、さっき出たシーンの中での立ち位置の話につながるかもしれないけど、なんていうか、ニュートラルでいたい。あんまりいろいろ限定したくない。TRAKS BOYSはクラブ系で、テクノで、とか。その限定しないっていうのが、ひょっとしたらわかりづらさにつながるのかもしれないけど。まあわりと、のらりくらりと(笑)。

K:だからといって、特定の表現をされるのがイヤなわけじゃなくて。別に「テクノっぽいからWIRE」とかいわれたら、出てみたいし。

─じゃあ、「TRAKS BOYSはテクノ・ユニットです」みたいな紹介のされ方をしたらどうなんですか。それもちょっと違うって感じ?

C:テクノ、だと思う。テクノロジーから大きな恩恵を受けてるから。でも一般的に「テクノ」っていったときに多くの人がイメージするような……。

K:「ピュアなテクノ・アーティスト」っていうのとはちょっと違うかもしれない。だから、そういう意味ではわかりにくいのかもしれないけど、そんなTRAKS BOYSを受け入れてくれる人たちを増やしていきたい。

─たぶん、そのぱっと見での括りにくさみたいなものがTRAKS BOYSのおもしろさであり、魅力なんだと思います。

C:その中でいかに突破力を磨くかっていうのがテーマっていうか。イメージは限定しないんだけど、たとえば俺が試聴機でサンボマスター聴いたときみたいにドカーンとくるものがあってほしい。

─わかりました。ところで、ふたりはいつからの知り合い?

K:1999年とか2000年とか。

C:結構長いよね。

─それは何がきっかけで?

C:パーティー。

K:恵比寿のMILKっていうクラブで、ふたりとも別のパーティーやってて。お互い気になる存在で。

C:俺はその頃『モンスーン』って雑誌をやってて、それつながりでもある。そこにいろんな人が出入りして遊んだりしてて。そこに徐々にケンヤくんが前にやってたレッキンクルー(※『レッキンクルー』、『NEW』と2枚のアルバムをリリース)のメンバーも来るようになって。

K:自然となかよくなったっていうか。

─お笑い芸人のコンビはプライベートでは仲が悪いなんて話をよく聞きますが、TRAKS BOYSはプライベートではどうなんですか。

K:遊ばなくても会う機会は結構あるかもね。

C:遊ばなくても毎週会ってるから。どこかしら、パーティーとかで。

K:そうやって会ったときとかに、メシ食いに行くとか。それぐらい。

C:わざわざ会う機会作らなくても、曲作りがあるし、練習があるし、週末はパーティーで会うし。

─いや、なんかふたりって人として完全には同じタイプじゃないでしょう? それが見ていていつもおもしろいなって思うところでもあるんですけど。

K:ああ、ガッツリ遊ぶことはないかも。「昨日、ふたりで朝まで飲んじゃったね~」みたいなことはない(笑)。

─でも、「最近、コイツちょっと違うな」みたいな、そういうのもないんですね?(笑)

K:ははは(笑)。そういう感じじゃない。でもまあ、刺激にはなりますよ。

C:それがいいんだろうね。

K:ウザめの干渉はないっていうか。

C:練習とか曲作りとかするときも2時間くらいでサクッとやって、「じゃ!」みたいな。結構、勤勉さがある。

K:ふたりとも根は真面目ですよ(笑)。

─「曲を作るならやっぱりコイツといっしょに」っていうのはあるわけですね。

K:信頼感はあるね。

C:やったらちゃんと、曲できるし。

K:絶妙な距離感がありながら、いい感じで共有できてるっていうのはある。

C:共有できてる部分と違う部分がちゃんとあるんだよね。クロスするポイントは絶対にある。それがテクノっていうところだったりするのかもしれないけど。あと、最初はふたりとも単純に機材好きってところから始まってるから。

─TRAKS BOYSの名前の由来は、「Drum Traks」(※Sequential Circuits社製のドラムマシン)ですもんね。Drum Traksはもう使わないんですか。

K:今回は使わなかった(笑)。

C:でも、そのスピリットは受け継いでるから。