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Rennie Foster

Rennie Foster(以下R):そもそも僕のこれまでの音楽活動の拠点やマーケットは、僕の母国カナダでも、ここ日本でもなかったんだ。僕のレーベルFutago Traxxのディストリビューション オフィスもニューヨークだし、ヨーロッパとアメリカの音楽シーンでのレコーディング環境でやってきたので、あくまでも今住んでいるのが東京というだけであって、常にボーダレスな状況での活動をして来たんだ。

ただ、今回のNEWアルバムに関して言えば、僕が初めて日本で制作し、流通も全て日本発信で行う作品になっているという点はこれ迄と違い特に思い入れがあるかな…。そして今、僕は日本拠点で日本のアーティストを世界に発信して行く環境という意味でとてもチャンスを得て居ると思うんだ。僕のレーベルの一つでもある"Dirty Works"は、NOP, Itokim、Rhythm Droid、と言った東京ベースのアーティストだけでなく、 Beat Theory という宮崎のアーティストや、 Ryoma Sasaki という京都のアーティスト他、Hiroshi Watanabe、Shane Berry等、地方を含めた日本中のアーティスト達と交流しながら日本発信のレーベルとして世界に影響を与えて行けたらと思っているよ。 R:僕が沖縄の音楽に非常に興味を持ち始めたきっかけは、98年にTalvin Singhの"OK"という曲を聴いてからなんだけれど、沖縄音楽の保つユニークな構造の不協和和音と憂鬱感が大好きで、以来そこからリサーチを始めたのがきっかけ。まああくまでもこれは1つの例で、他にも色んな要素から興味を持ち始めて、それと同じような理由から、僕の音楽制作は全体的にアジアの音楽に非常に興味をそそられて曲作りに反映していると思う。

例えば、僕の音楽のメランコリックな部分を、よく“デトロイトテクノ”に例えて要約されがちだけれども、こうしたメランコリックなメロディーの影響派はデトロイトテクノ的解釈に限らず、アジアの音楽他、様々な要素に影響を受けているんだ。

で、そんな中ELLYの沖縄民謡を起用したきっかけとなったのは、数年前にたまたま同じイベントでBremenと共演する機会があってね、その際、Elyの歌声に感動したんだ。彼女はステージ上でのカリスマ性ももの凄く放っていたし、本物のパフォーマーと感じたよ。そんな共演がきっかけで彼女と会話を交わした際、音楽の趣味等の話で意気投合して親しくなったんだ。この曲“Midnight Sun”はDerrick May, Laurent Garnier を始め多くのDJ達がヘビープレイしてくれたおかげで既に日本以外では大ヒットしていて、Raudive, Mark Broom, DJ 3000, Gary Martin等が手がけてくれた多くのリミックス作品もリリースされ、様々なレーベルのコンピレーションにも収録されていて今回のアルバムの中でもとても手応えを感じている作品なんだ。 R:Devil's Waterは僕にとっても最も思い入れがあるトラックなんだ。今、僕は音楽的なダークサイドというものを探求している最中なんだけれども(ダークと言っても、ハードだったり、恐怖だったり、アグレッシヴという意味合いでのダークではないよ)誘惑とかメランコリックな感じでのダークサイドなんだけれども、哀愁とか絶望感の中にある美しさのようなものを表現したかった。世の中には光輝いた楽しい事だけではなく、暗い出来事も多くあるけれど、そうしたダークな要素の中にも美しさは存在するというビジョンが僕の中には存在していて、光と闇、破壊と創造、そこに宿る美しさは僕にとって同じように重要で、近年制作している僕の楽曲はこうしたテーマの元に制作されているものが殆どで、Devil's Waterはこうした方向性を僕に位置つけるきっかけとなっただけでなく、多くの人々に共感されて行ったんだ。最初のリリースはイタリアのRebirth Recからだったのだけれど、これ迄にもJames Zabiela, Youngsters, Kiki, Dave Dresden他、多くのアーティストにリミックスされて来た。昨今ではTrentmollerのMixアルバムに収録されたり、James Holden, Sasha, Pete Tong, Dave Seaman, Ben Watt (Everything but the Girl), Layo and Bushwackaがもの凄くサポートしてくれたりと、こうした様々なジャンルを超えての反響の凄さには、僕自身もびっくりしているんだ。 R:自分の頭の中の構想を他人に説明するのは凄く難しいんだけど、僕が作曲する際にはいつも象徴的なものが核にあるんだ。まあ、ある意味それは僕個人に取って映像的なイメージで現れるんだけれど…。

基本的には、僕の曲は単なるダンスミュージックとして制作していないという事がジャンルを超えて評価してもらえる所以かもしれない。僕にとっての楽曲内でのメロディーラインは、詩的であり、感情を表現する大切なパートなんだけれど、ここでの感情表現は単に楽しい事だけでなく、哀しさや切なさも表現したいんだ。僕にとってダンスフロアは現実の生活感情の状態を探索する儀式の場。だから現実の生活で沸き起こる全ての感情を盛り込んであるんだ。僕の作品は「踊って現実逃避しよう!」というようなたぐいのダンスミュージックでは決して無いからね。そうした意識が単にダンスミュージックという方向に偏らずバランスが取れているんだと思う。そこが最終的にジャンルを超えて人々に共感を与えているのだとすれば、光栄だよ。 R:そうだね、今回の作品は前作と対照的だと思うよ。前作は非常に現実的な事柄をテーマにアルバムを制作したからね…。それと比べて新作は神秘的な要素の探査というような難解なコンセプトに挑んでいるし…。わかり易く言えば“魂”の探求というか、超常現象的なものをテーマにしたりもしているし…。この辺をインタビューで説明しようとすると自分自身も収拾付かなくなっちゃうから… どうしようかな… 前作よりも楽曲、アートワーク、コンセプト全てがミステリアスでダークで、美しい儀式的作品になったという事でまとめさせてもらっちゃあダメかなあ…!?。

音楽的なテーマというか方向性で語るならば、僕はこれまで1度として、特定のジャンルやアーティストを意識して曲を作る事等無かったので、テック・ハウスのフォーマットを踏襲とか、ジャンルをクロスオーバーするというような事も全く考えてはいないんだ。

ジャンルに縛られた音楽制作って、そのジャンルが持つルールに従って創るという事になるだろう?僕の音楽の作り方は常に「ルールには従わない」という事を意識しているから、僕の楽曲制作は常に冒険的で実験的さ。だから制作途中の失敗とかも全然恐れてはいないし…。様々なコンセプトを混ぜてみたり…。コンセプトという意味では“コントラスト”“均衡”“不均衡”というものを僕なりの感情表現でリスナーに伝える「感情的なコミュニケーション」というのが今作の狙い!かな!? ELLY:ケント・デリカット似の柔らかい雰囲気漂うカナディアンと出会ったのは3年前の六本木COREにて。BREMENのライヴ後につぶらな瞳をより大きくしてオファーを頂いて。 文化も言語も何もかも違えど、DEEP FORESTが大好きという共通点から話が弾んだんです。「midnight sun」は私のネイチャーな部分をレニーが自然に引き出してくれて出来た曲。是非聞いて舞って下さいな。