INTERVIEWS

World Sketch

堀内:最初は札幌のKING XMHU(キング・ムー)っていうクラブ、当時でいうディスコでデザイナーをやってたのが音楽業界に入ったきっかです。クラブのスタッフだったのでDJになるかとか色々あったんですが、僕はオーガナイザーを選びました。その仕事のおかげで当時だったら、アイス・キューブやデ・ラ・ソウル、ハウスだったらデヴィッド・モラレスとかのショーを間近で見ることができてクラブミュージックに圧倒されてしまい、それからはどっぷりですね。
そこを辞めてからは自分で会社を設立してレーベルを立ち上げてクラブやスタジオを作りました。スタイルも音もビースティー・ボーイズが大好きだったので、クラブで出来るロックバンドを探しててバンドのオーディションを始めたんですが、そのオーディションに守屋が出てたんですよ。それが最初の出会いですね。

守屋:当時ロックバンドをやっていて、たまたまオーディションを受けたら、その時の主催と審査員をやってたのが堀内だったんですよ(笑)その後、自分のバンド以外のソロで作ったデモテープを堀内に送ったんです。そしたらそれも気に入ってもらえて、いろいろなアーティストの作曲やアレンジサポートをしたりして本格的に一緒にお仕事をするようになりました。 堀内:そのころコンピレーションなどの企画物のプロデュースをやってて、その中のアーティストの何組かがメジャーデビューしたんですけど、悔しかったのが最初は僕達がある程度のプロデュースワークをして形を作ってきたつもりだったのに、メジャーに行くとまったく触れなくなったんですよ。みんな東京に出て行っちゃうから、それも悔しかったな。だからしっかりしたレーベルを作って、東京に出なくても札幌から全国区な音を発信できるように心がけてきましたね。その結果、ある程度思い描いていたことが形になってきました。
そうするとレコード会社からの発注も増えてきて仕事がもらえるようになってきたので、こういう音の方が受けるんじゃないかとか、今までクラブに携わってきた経験をふまえてこの10年間、レコード会社に沢山プレゼンしてきましたね。ただ、あくまでもアーティストがメインなので、僕らの意向が通らなかったことも多々あったりして悔しかったけど、やっぱりアーティストを立てるのが僕らの仕事なので、良い意味でアーティストにのまれてましたね。でも、今考えるとそれが結構いいストレスになって生まれるものも多かった。
あとは、絶対こうやった方がよかったとか後悔することもありました。そういうのは何年もたってから解ることなんですが、僕らの思ってたことが正しかったとか、アーティストも後で解ったことも多かったりして。そんな事を繰返してるとある程度自信がついてきて、自分達の作品も出してみようかって話しになったんです。そう考えると北海道で自分達の音楽ビジネスを形にするまで10年もかかったんですよね。 堀内:地元は札幌じゃなくて今までいろんな所を転々としてきたんですが、解ったことが雨が大嫌いなんですよ(笑)北海道って寒いですけど、雨はあまり降らないし降っても雪なんですよ。これはいいなーって思って。

守屋:札幌は東京にくらべると周りの刺激があまりなくてプレッシャーが少ないからそういう意味ではやりやすいですね。あれをやったらダメだよみたいな変な縛りがなくて、音楽的に凄く自由だから本当に自分の好きな音楽が作れる環境がいいですね。

堀内:僕らはわがままなので自分やりたい事をやりたいんですよ(笑)。最初イベントも普通にクラブを借りてやってたけど、融通きかない部分もあるじゃないですか。スタジオも時間いくらみたいなのが嫌だったし、だったらクラブもスタジオも自分達で作っちゃえみたいな。 堀内:そうですね、イベントによってですかね。僕が二十歳くらいだった昔みたいに通常営業で毎週末すごい人であふれかえってるとかブーム的な事は今は昔程無くて、DJやイベントによって盛り上がりも楽しみ方も様々ですね。でも今もとっても自由があって楽しいです。 堀内:実は元々はNYハウスとかあまり興味なくて、一番遠い存在だったんですよ。いきなりデヴィッド・モラレスって言われても入りづらくて、ジャミロクワイのリミキサーか位の印象しかなかったですね。でも仕事を通じて聴くようになって今では大好きですよ!考えてみると一番解らないジャンルや音楽って、逆に一番興味があるんだなーって思いましたね。

守屋:僕はR&Bが大好きなのでその延長線でハウスを聴いたり作ったりしてます。でもR&BにしろハウスにしろUSの音は基本的に好きですね。

堀内:色々なジャンルの音楽をやってきたけど四打ちってクラブシーンの王道っていうか基本だから、仕事としてもどっぷり漬かったよね(笑)守屋も僕もアナンダ・プロジェクトが大好きで、よく聴いたね。だから、今回アナンダのリミックスの仕事があって今度Kiss Kiss Kissのリミックスをやることになったのは嬉しかったな。 堀内&守屋:ありましたねー!! 堀内:そうだねー!すげー忘れてたよ!

守屋:しかもやけにカッコイイんですよね!

堀内:そうそう!懐かしいな。

守屋:USハウスはあたりまえだけど全部英語ってだけでカッコよく聴こえたし、やっぱりクオリティが高いですよね。

堀内:2人とも全然音楽のルーツは違うけど、僕は四つ打ちっていうジャンルだと、ぶっちゃけアンダーワールドが大好きだな。実は、今作にそれっぽい曲が1曲だけ入ってるんですよ。 堀内:この曲は飛ばされる(1曲進める)の覚悟で入れたんだよね。「絶対に飛ばされるでしょ!でもいいよねー」って(笑)

守屋:完全に大きい野外フェスのステージをイメージして作りましたからね(笑)

堀内:この曲はサンプル盤に入ってるバージョンからエディットし直してかなり良くなったよ。ギリギリまでリエディットしたし、さらに大箱感が出て攻撃的になったから期待してほしいな。 堀内:最初は曲に合いそうなシンガーを出来るだけ多くピックアップしましたね。King Streetのヒサさんにお願いしてNYのシンガーとヨーロッパのシンガーを何十人もピックアップしてサンプルを送ってもらい、この人が良いって言って歌ってもらっては、イメージと違うからやっぱり嫌だとか言って、その繰返しをしているうちに決まりましたね。

守屋:あそこまでやってもらって、ほんと申し訳ない気持ちですよね。

堀内:中でもジョナサン・メンデルソンっていうシンガーが気に入りましたね。 堀内:いや、僕も正直最初知りませんでした。でも歌も声も最高!すごくいいんですよ! 堀内:ですね。アメリカでも評価が高くて、いろんなプロジェクトでリリースもしてるんだけどこれからさらに展開するみたいですね。でも、本当にシンガー選びは無理難題を言いましたね。カイリー・ミノーグそっくりな声の人を探してくれとか(笑)ハウスだとある程度シンガーの名前って限られてくるじゃないですか?そういう枠も外したかったんです。 堀内:僕らのジャンルだとトラックメーカーはトラック制作で基本的なメロディーラインはシンガーが書くものみたいなんですよ。で、DJがトラックをつくるのが基本なんですが、僕ら2人はDJじゃないのでそういう手法を取っ払って、今回はメロディーも全部守屋が書いて、歌詞に関しても全部ディレクションを入れて作りました。

守屋:ほんと大変でしたよ。ある意味、僕らとシンガーとの楽しい戦いでした。

堀内:面白いのが、このメロディーで歌ってくださいってシンガーに依頼してシンガーも了承してるのに、守屋が「これ絶対メロディー変えてきますよ!」って言うんですよ(笑)連絡してシンガー本人が大丈夫って言ってるから平気だよって言っても、「いや、これ絶対変えますよ!解ります。」とか言うんですよ。で、シンガーから戻ってきて聴いてみるとやっぱり変わってるんですよ(笑)
本当に素晴らしいんです。でも今回はメロディーは自分等のものを採用したい。でもせっかくアレンジしてくれたものに嫌とか言うとシンガーも怒るじゃないですか?で、最近覚えたのが「変えて」の一言から「あなたのメロディーは素晴らしい!だから次回別のトラックで使いたいと思います。」って返し方ですね。本当に、そうやって生まれる曲もあるんですよ。

守屋:だけど今回は僕らのメロディーでお願いしますって(笑)そうするとすんなりいくんですよね。でも一番大事にしたいのはメロディー部分なので、正直シンガーには負けたくない気持ちは大きいですね。

堀内:そういうやり取りがいい意味での戦いというか、セッションになって面白いですね。シンガー達はたいてい守屋のメロディーを少しリアレンジしてくるんだよね。それを繰返してるうちに自然と良いものが出来上がりました。 守屋:音楽の趣味が幅広いっていうのもあるし、最初からハウスアルバムにする気は無かったし、色々とアレンジしていく中でR&B調の曲も出来上がったりして、自然とこういう作品になりました。これを四つ打ちだけと決めて作りだしたら制作段階で性格上、多分飽きちゃって僕らが最後までもたなかったと思います。

堀内:ハウスだけで育ってきたわけじゃないしね。四つ打ちはクラブで聴くと一番気持ちいいし、落ち着くっていうのがあるけど、家ではR&Bだし、バーベキューだったらアコースティックな音がいいし、ドライブだったら早い曲が気持ちいいし、そのシュチュエーションによって聴きたい曲があるのと一緒でアルバムもそうだと思うな。 堀内:アーティストアルバムというか、自分でプレイリストを作ってそれを良く聴いてますね。そういうプレイリストを何度も作って聴いているうちに、それがアルバム制作に上手く反映されてたりもします。

守屋:僕はブライアン・マックナイトのU Turnってアルバムかな。

堀内:あっほんとに古いけどビートルズのサージェント・ペッパーズは今でもアナログで聴きますね。ビートルズの何でも取り入れるごった煮感が凄く好きなんです。今も繰り返し聴くのはあれかな。 堀内:DAISHIくんがツアーで全国でかけてくれて、盛り上がるって言って会場の映像をたまに送ってくれるんですよ。すごくうれしかった。DAISHIくんも気に入ってくれたらしくてリミックスしてくれて、それを今回のアルバムの最後に入れました。

守屋:実はこの"Wanderful"って曲は7年位前に作った曲で、僕らが本格的にアーティスト活動をするきっかけとなった曲なんです。そこからアレンジされて少し変わってますが、一番想い入れのある曲ですね。 守屋:僕は3曲目の"The Light"ですね。やっぱりR&Bが好きなんです(笑)

堀内:これは守屋が最初にWorld Sketchで一生懸命作ったR&B曲だもんね。あとはやっぱり"Wanderful"かな。 守屋:アルバム全体のバランスには凄くこだわりましたね。クラブに特化したら家で聴けないし、その逆にするとクラブで弱くなっちゃうし、アレンジ的にもアコースティックな部分とデジタルな部分とのバランスに凄く気を使いましたね。 守屋:基本的にプロツールスを使って全部MACの中で完結させてますね。生楽器はゲストミュージシャンに演奏してもらってます。ロックバンドをやってたので、ある程度の楽器は演奏できるんですが、やっぱりプロの人には勝てないのでお願いしてる曲もありますね。11曲目の”It's Gonna Be a Good Day”は唯一全て生演奏の曲なんですが、これは自分達が本当に信頼しているミュージシャンと一緒に楽器で演奏した曲です。

堀内:この曲は合宿だったよね(笑) みんなでスタジオに泊り込みで作ったんだけど、守屋が初めて自分で生ピアノを演奏して録音した曲だよね。たまたま札幌にビートルズが使っていた何千万もするピアノがあったんですけど、それを使えるチャンスなんてめったにないので、守屋にそのピアノを弾いてもらって録音したんですよ。 堀内:声で選ぶのでこの人っていうのは居ないけど、個人的にはセクシーな声を持ってる若い子がいいですね。それでいて安心して聴けるような人を探してます。

守屋:僕は女性のR&Bシンガーですね。サマンサ・ジェームスは声が大好きなので是非やってみたいですね。 守屋:今回のアルバムは凄くバランスにこだわって、フロア映えする物と家でも聴けるようなポップスな部分をちょうど良く収録しています。音に関してもアコースティックな部分とデジタル部分のバランスに凄くこだわったので、その辺りも気にして聴いてもらえると嬉しいです。

堀内:クラブや夜に限定せず昼間でも聴けるようなアルバムを目指して作ったので、どんなシュチュエーションでも聴けるアルバムに仕上がっています。是非聴いてみてください!