SHIGE(以下S):いやあ、すっきりしたなあって。良い意味で。それとうちの嫁の評判がとても良いんですよ。それだけでも本当に良かった(笑)
TUYOSHI(以下T):そこの評価が意外に重要なんです(笑)。なかなか良い視点で聴いてくれるというか、僕らにはない指摘をしてくれるので。
S:とりあえずは前回のアルバムよりも断然好きみたいですね。よく聴いてくれてます。
T:曲ごとにはあるんですが、アルバム全体としてはこれまでと同様、その時々にやりたいことを形にするというのが大前提ですね。
S:これというコンセプトがあるものを作れるものなら一度作ってみたいですね(笑)。結局僕らは、“真面目に音楽をやること”自体がメッセージなのかなって。
TAKUMI(以下TA):3作目もそうではあったけど、特定のジャンルに囚われないっていう部分が、さらに洗練されたのかなって。
T:確かに、より自然になったって部分はありますね。それと最近思うのは、アルバム一枚を追うごとに演奏はもちろん、曲作りも録音もいろんなスキルが上がっていくことで、具現化できるものが随分多くなったなあって。そういう面では、今作は最高傑作かなと。
S:いろんなスキルが上がったってのは、まさにその通りだと思う。悪い言い方をすれば、要領が良くなった。まあ、みんなもう30半ばですしね(笑)。
T:そうですね、やっぱりそれは変わらないです。
S:結局、今回も「ひ~」「く~」って言いながら作ったし。やっぱり要領は全然良くないですね(笑)
T:この曲はリハーサルスタジオでジャムった時に生まれたものを、後日スタジオで一発録りしたものですね。今回はそういうのがけっこう多くて、06「Hummin' feat.ダブゾンビ」や08「(4 the)Love I Need 元晴」なんかは、スロバキアのライブ後にセッションしたやつをたまたま録っていて、それをスタジオで“せ~の”で録った感じです。
TA:02「ERA 02」も姫路のライブ後の酔いどれセッションで出てきたヤツだよね(笑)。
T:03「Swinger Than Doubt」や09「Acid Typhoon」みたいに、ライブでずっとやってるうちにどんどん発展していって、今の形になったって曲もありますし。
T:同じくセッションから生まれた曲でも、今まではスタジオで曲作ろうぜっていうパターンが多かったかもしれません。そう考えると今回は、スタジオ外でのライブやセッションから引っ張り出した曲が明らかに多いですね。偶然にも。それって、その場にいるお客さんをジャムセッションで楽しませるっていう、ある意味で本当に純粋な曲の成り立ち方かもしれませんね。
TA:やっぱり覚えてるんですよね、あの時のあのセッションって絶対かっこ良かったよなって。
S:サービス精神が出過ぎちゃったり、酔っぱらい過ぎちゃったりって時に、意外に良いものが生まれたりね。でもホントに面白いですよね、今まではすごい作り込んでガ~って苦しんでいたのを、そんな風にしてパッとやったのがすごく良いって言われたりして。
S:本当に儀式の曲なんですよ。IZPONがキューバに住んでいた時に、そういう儀式に行って曲を習ったそうです。で、僕たちとやってみたら、これはヤバいぞってなって。
S:本当に神が現れる、みたいな(笑)。
T:きっかけはロイ・エアーズのツアーへお誘いいただいたことからでした。周りの人から「もしかしたら一緒に曲作れちゃうんじゃないの?」なんてつつかれて、それはないでしょとか言いつつも、せっかくだから曲作って送ってみようかってことになって(笑)。で、会った時に「あの曲良かったぞ、やろうぜ」って言ってもらったんです。
S:もうほとんどツヨシ任せで(笑)。でも本当に良い曲ができたと思います。
TA:すごくロイ・エアーズっぽい曲ですよね。
T:トラックを作る前はいろいろ考えたんですよ。これまでにないような形でロイ・エアーズをフィーチャリングしたいとかっていう野望もなくはありませんでした。でも結局はこれが一番自然な形だし、一番ロイ・エアーズの良い部分が出せたんじゃないかなって。
S:彼のバイブと声が入っただけで、僕のドラムもツヨシのベースもタクちゃんのコードも、とても力強く聴こえるんですよ。ドラムなんてまるで巨匠のドラミングみたいで(笑)。やっぱりロイ・エアーズはすごいんだなあって思いましたね。それとすごく良い人で、あったかかった。ちゃんと輪になって話ができる人でしたね。
TA:やっぱり演奏に対するモチベーションなんかは、ヨーロッパツアーの後にかなり変わりましたね。
S:確かにロイ・エアーズとツアーして、さらにヨーロッパツアーをした後の、油の乗った演奏がちゃんと録れたんじゃないかなって思います。
T:とはいえ帰ってみると、東京が一番刺激的だなってあらためて思ったり。これだけ毎日どこかで何かが行われている場所もないんじゃないかなって。
S:本当に東京はすごい所ですよ。でもその一方で、ヨーロッパには音楽を楽しむっていう文化がしっかり根付いてる。だから観に来る人は絶対に盛り上ろうとするし、反応もでかいんですよね。あとは40歳とか50歳くらいの人が、普通にクラブで若者たちと一緒に遊んでいたり。そういう部分はうらやましいなあとは思いますね。
T:クラブみたいな所にドレスアップしたご夫婦がいたり、かたや60歳くらいのイカしたおじさんが踊りまくってたりってね。日本にもないわけではないけど、ヨーロッパほどの土壌はまだないじゃないですか。
S:そういう、“年季の入った遊び人”みたいな人には、東京はちょっと住みづらいかもしれないですよね。
T:そういった意味での“社交場”みたいなものを、僕らがつくっていけたら良いなあって。
S:たぶん3人で音を作るっていう作業は永遠に続けていくことだから、ずっと続けていきたいことだから、だからこそ個人個人ががんばって、それぞれの立ち位置で戦っていかないと、cro-magnonは前に進まないと思うんですよ。やっぱり3人でやる時には、良くも悪くも全員が合わさっちゃうわけなんで。その意識は、1stアルバムの頃に比べたら格段に高いと思います。そういった意味では僕もツヨシもタクちゃんも、痛々しいまでに毎日がんばってると思う(笑)。
TA:毎日お酒飲んでワーってやってるだけにも見えるかもしれませんが(笑)、そうやって毎日ヒーヒー言いながらがんばることこそが、僕らはちゃんと生きてるんだぞっていう証だと思うんですよね。
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