Paul (Strangefruit)
「分かんないな…ただ思いついたんだよ。君たち日本人には奇妙に聞こえるかも知れないけど、僕自身はそんなに変わった名前だとは思ってないんだ。エキゾチックだけど新鮮な響きの名前だと思ってるよ。
国名のモンゴル(=Mongolia)とは関係ないんだ。多くの人はそう思ってるみたいだけど、まぁ、分からなくはないよね。言ってしまえば、"Mongolian" Jetsetでもあるのかもしれないし。でも、それだとなんだか間抜けな響きでしょ。だから、国みたいな、フルーツみたいな何か…って感じかな?」v
Knut
「そうだね…メンバー構成は、その時の楽曲やプロジェクトによって変えているよ。時にはほとんどすべての人間が揃う時もあるんだけど、その中でも、僕らがよく一緒にやるパフォーマーがいるんだ。
The Mungonettesは、4人のソプラノと4人のアルトで編成された8人の女性によるコーラスグループ。
The Knights of Jumungusは、彼ら自身がバンドのような感じで、彼らとやる時は、高いお金を出して雇わなきゃいけないんだ。3人から4人編成で、ホルンやストリングスなどの伝統的な楽器を使った小さなオーケストラだよ。」
Paul
「あと、Pizzy Yelliottもね。彼は悪戯好きのコミックバンドみたいな感じ。あとは、Jamine Tonto、The Dhaqwaan of Pu Lonteなどなど…そんな変わった連中の奏でる音が、Mungolian Jetsetサウンドの異なる側面を創り出してるんだ。」
「Krise Studiosでいつも活動しているよ。基本的にはレコーディングスタジオで、僕らのすべてのレコーディングや他の人のレコーディングなども、そこでやってる。」
Knut
「もちろん、僕らはノルウェーのシーンから何かしらの影響は受けているよ。僕らは友人達がやっている活動を常に見ているし、クラブシーンやジャズシーンからだけではなく、現代アートやクラシック、ロック、メタル、どんなジャンルからでも影響は受けているね。オスロには多くの異なる音楽シーンが共存していて、それが、小さな街ではあるけれど、オスロを音楽制作に適した場所にしている理由なんだ。オスロにいる多くの人達がジャンルやスタイルを超えて、お互いの活動に興味を持ち合っているのを感じるよ。
少なくとも僕は、ほぼ全てのジャンルの音楽をチェックしたいと思っている。でも、全てのノルウェーの音楽がとてもオリジナリティに溢れているかと言うと、そうは思わないかな。海外のミュージシャンと比べると、ノルウェーのミュージシャンの多くが、ガンマンや農夫、木こりにしか見えないってのは断言できるけどね。」
Paul
「身近にいる人間の人となりやメンタリティがどんな状態にあるかっていうのは、もちろん自分の行動に影響を与えると思う。でもそれだけじゃなくて、自分がまだ知らない未知の世界、街、国、メンタリティ、文化に向かって想像を広げていく…そんなファンタジーも大切だと思うんだ。少なくとも僕はね。」
Knut
「デトロイトテクノ、90年代初頭のイギリスのレイブカルチャー、60年代のジャズ、サイケデリック、ハードバップ、ディスコ、バロック、ノイズ、後期ロシア・ロマン主義、ブラックメタル、ダルムシュタット・スクール、ミニマリズム、ジャワガムラン、ヒップホップ、ドラムンベース、レゲイ、ノルウェーフォーク…全部だよ。これまで色んなものに熱中してきたけど、いまだに新しく発見することの連続さ。自分の立ち位置だけは、いつもエレクトロニックシーンに置くようにはしているけどね。」
Paul
「Knutがほとんどまとめてくれたね。僕らが影響を受けたものは、まるでメルティングポットのようなもので、どんなところからでもやって来るんだ。」
Knut
「その時の状況によるかな。ジャムセッションはするけど、毎回いつもというわけじゃないよ。僕らはたいてい、レコーディングをしてはそれを捨てて…という作業を繰り返しているんだ。それをジャムセッションとも呼べるのかもしれないけど、そこまでフリーフォームということではないかな。
新しい曲を作り始める時、僕らはその場で思い付いたアイデアもレコーディングしていきながら、同時に全体のアレンジ作業も並行して進めていくんだ。いつも『これをしたい』もしくは『これにトライしたい』っていうアイデアのようなものがあって、僕らはキーボードをいじって試行錯誤をしたりしている。でも個人的には、僕はノートからノートへとアイデアを書き出していくやり方が好きなんだよね。ノートに書き出していくと、それが最後にはまったく違うものになって出てくることがあるんだ。僕らはたくさんの音楽的アイデアを投入して、それらがまとまるように、曲全体として馴染むように時間をかけて作業していくんだ。常に新しいことにはチャレンジしようと思っていて、ある特定のスタイルに凝り固まって、行き詰ってしまわないようには注意してるよ。僕らは古いレコードからのサンプリングもたくさんしていて、それを僕ら自身のサンプルと混ぜたり、新しい違ったものへとアレンジし直したりしている。」
Paul
「で、僕とKnutはそれぞれ違ったアプローチをとっているんだ。Knutは音楽的にも技術的な面でもきちんとしたトレーニングを受けてきている。僕はもっとDJ的なアプローチ…つまり音楽を、聴いて、プレイすることで学んできた人間なんだ。だから多くのサンプリングは僕のレコードコレクションからのもので、僕らは毎回、テイストのバラバラな異なるサンプルをひとつの曲の中にまとめ上げようとしている。バラバラのサンプル、それぞれ単体ではピンとこなくても、それらが集まった時にうまい具合にハマってくれるようなサンプルをね。
僕が思うに、ほとんどの僕らの音楽は、様々なアイデアのミックス、チャレンジ、失敗、そして遊びの中から生まれてくるんだ。僕は誰かのレコードを聴いてアイデアが湧いてくることが多くて、それは誰か他人が作った音楽や何かを、僕なりに解釈したいっていうことなんだと思う。もちろん全部をコピーしようなんて気はさらさらなくて、その音楽の断片だったり、その音楽を聴いた時の感情だったりを使って、Mungorealize(※)したいのさ。 (※MungolianとRealizeをかけたPaulの造語のようです。)」
Knut
「たいていは作業をしている時に、突然、今やっていることが正しいと確信できて、たくさんのアイデア…しかもそれが、この後ハマることが分かっているアイデアが次から次へと湧いてくる瞬間だね。あとはそのアイデアを実行すればいいだけなんだから。」
Paul
「そうだね。それから、何かの作業を進めている時に、その終わりがハッキリと見えている状態ってのはいつも楽しいよ。その作業の間に何をしたかなんて覚えてもいないけれど、ともかくその音楽が持つ流れだけは、不思議とちゃんと捉えられているんだ。
そう考えると、音楽ってのは自然が与えてくれたちょっとしたミステリーとでも言えるのかもしれないけど、もちろんそれはひとりでに起こったわけではなくて、自分がそう願ったから起きたわけでね…
ひょっとすると、David Lynchが映画と対峙する時に似ているのかもしれない。彼がいつも言っているのは、彼はアイデアをピックアップしたら、直感をコンパスがわりにしながら、ただ『次が起きる』のを待つんだ。すごく根本的なアプローチだと思うし、だからこそ彼の映画はミステリーに溢れていて、本当にあらゆる解釈が出来る余地を残している。ただ、あまりにも単純化された、ともすれば仏教的とも言える観点で作られているとは思うんだけどね。」
Knut
「ラップトップとDJを混ぜたような感じになると思うよ。次のアルバムからの曲もいくつかプレイするし、昔のMungolian Jetsetの曲もスペシャルバージョンでやろうと思ってる。」
Paul
「僕はDJをして、Knutがラップトップを使ってelectronicな面を担当する感じ。もちろん、そこには色々な他の音楽もミックスされていくはずだよ。」
Knut
「レコーディングをされた音楽ってことで言うと、まずは、すべて自分たちの音源だけでまとめられたMungolian Jetsetのアルバムをリリースすることかな。個人的な活動だと、ジャンルを超えた色々なアーティストと協力し合って、小さなEPのシリーズを作りたいな。あと、Mungolian Jetsetでアコースティックなアルバムもやってみたいとも思ってる。ライブに関しては、僕は、舞台のプロダクションから教会のコンサートまで、いつでもあらゆる経験を得たいと思っているよ。それか、映像だけをやって音楽をやらないとかね。全部、これからの未来の話だよ。」
Paul
「僕はMungolian Jetsetが、Sonic YouthやBeck、Brian Enoなどのアーティストと同じことをやっているのが見てみたいな。様々な異なるジャンルの音楽で、あらゆる解釈がなされた、常に変化のあるリリースをMungolian Jetsetという同じ名前…少なくともその名前の一部を使ってやっていきたいと思ってる。世の中に溢れているアーティストや音楽が、あまりにも商業的なルールに縛られすぎてしまっていて、どんどん狭まってしまっていると思うんだ。歯磨き粉のブランドのように差し出される音楽には、もう飽きてしまったのさ。」
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