ありがとう。"mule musiq"のためにミックスCDを制作することはとても光栄なことであり、大きな冒険でもあったよ。マーカスは現在DJ活動を休止しているけど、そのうちまた再開すると思うよ。僕ほど頻繁ではないかもしれないけど、やりたい気分になったらやるんじゃないかな。僕はマーカスと共に、minilogueとしてプレイするのが大好きで、特別なジャムセッションのように毎回楽しむことができる。それをDJプレイと比較するようなことはしたくないんだ。2つのまったく異なる活動だからね。両方とも人を動かし(自らの存在を実感し)、踊ることによる特別な体験を提供するもの。僕はひとりでさまざまな場所を訪れるのが大好きで、自分の心さえオープンにしていれば新たなものや人との出会いがたくさんあると思っているよ。
最初の影響はお母さんの心臓の音と、少々うるさいお腹の音だったはずだよ(笑)。 僕の人生において、音楽は常に大きな存在で、なるべくひとつのジャンルやスタイルにこだわらずオープンな姿勢で向き合おうと努力している。他の多くのものがそうであるように、音楽もまた、人生経験を豊かにしてくれるすばらしいツールのひとつだ。だからあまり固定観念を持たずに、ひとつひとつの瞬間を受け入れるようにしていけば、その体験はとてもすばらしいものに展開していく。音楽を素直に感じることは、このような瞬間を僕たちもたらしてくれるし、すべての音楽はそんな特別なできごとを引き起こす可能性を持っている。僕がダンスミュージックをやり始めた動機は簡単で、90年代半ばにテクノパーティーに行って、ダンスという強烈な体験にはまってしまったから。
すべての瞬間が偉大なインスピレーションになるから、僕は常に自分をオープンにして、僕がそのときに耳にしているすべての音楽、アーティスト、あるいはDJに身をゆだねて僕をインスパイアしてくれるような体験を受け入れるようにしているよ。
僕にとって重要なレコード、僕の音楽に影響をもたらした作品は何千枚もあるけど、ここに挙げた10枚は誰にでも自信を持ってお薦めできるものだよ。
Jan Johansson「Jazz pa Svenska」
最近僕はますます、ソロのインストゥルメンタル作品にはまっているんだ。1つの楽器の周波数だけで 僕たちの可聴範囲空間を作り上げているということがすごいと思うし、ひとつひとつの音符による表現と その存在感がしっかりあって、異なる音同士がアンサンブルの中でケンカしたりすることがない。Jan Johanssonはスウェーデンのすばらしいジャズピアニ ストで、惜しくも1960年代にとても若くして亡くなってしまった。彼の音の配分は、他の複数の音に邪魔されることなく、限られた音だからこそ全身で感じることができるということを示す好例だ。このアルバムは、スウェーデンの伝統的な民謡を彼なりの解釈で演奏したアルバムで、とても美しく、とてもスウェーデンらしい。
Harmonia & Eno '76「Tracks And Traces」
1970年代のクラウトロックにはすばらしいものがたくさんある。Harmoniaもその時代の偉大なバンドのひとつだ。中でも「Tracks and Traces」は僕がレコードプレーヤーに乗せる頻度がとても高いアルバムで、ミステリアスなのに高揚感のあるアンビエントな世界はすばらしく心地がいい。この作品はHarmoniaとBrian Eno(彼の音楽はどんな人にもお薦めできる)による共作。1976年に行われたスタジオセッションの音源なんだけど、テープが長い間紛失されていたので1997年に初めてリリースされ、2007年に"Gronland Records"から再発されたんだ。
V.A.「The Very Best Of Ethiopiques」
ワールドミュージックはあらゆる国の長い長い歴史を網羅する巨大なカテゴリー。中でもアフリカはたくさんの国とそれぞれの音楽がある、まるで大きな宝箱のようだ。エチオピアはその一例でしかないけれど「Ethiopiques」(全21枚)はエチオピア音楽の入門には最適なシリーズ。これはその21枚中のベストを集めた2枚組なんだ。偉大なムラトゥ・ アスタトゥケもこのレコード上のたくさんのヒーローたちの1人に過ぎない。
The Orb「Orbus Terrarum」
僕は90年代の前半から半ばにかけてエレクトロニックミュージックにのめり込むようになって、 当時の僕にはThe Orb、Orbital、FSOL、そしてUnderworldなどがとても重要な意味を持っていた。「Orbus Terrarum」は、それより少しあとになってリリースされたアルバムだけど、あえて選んだのはこれが今でももっともよく聴くアルバムであり、何度聴いても魔法のように僕の心を動かしてくれるから。
Tortoise「A Lazarus Taxon」
僕たちの誰もがインスパイアされた、すばらしきポ ストロックバンドのボックスセット。リミックス やB面曲を集めたCD3枚組で、いろんな映像が収められたDVDもついている。ポストロック入門に最適だ。数か月前に彼らのライブも観たんだけど、最高の体験だった。
Biosphere「Dropsonde」
僕のアンビエント作品を聴いてもらえばわかるように、僕はBiosphereの大ファンなんだ。深く瞑想的なループのサウンドスケープ!これは彼の最後のフルアルバムで2005年に発表されたものだ。彼のレコードはすべてすばらしく、とくに初期のものを聴くと、彼がどれほど偉大なテクノとハウスのパイオニアだったかがよくわかる。
Anouar Brahem「Conte De L'Incroyable Amour」
Anouar Brahemはチュニス出身のウード奏者で、アラブの古典音楽と民謡からの影響を強く感じさせる、とてもディープで穏やかなジャズをプレイする人だ。このアルバムは至福の1枚。もしこれが気に入ったら、彼が参加しているさまざまなアンサンブル作品も聴いてみるといいよ。
Cobblestone Jazz「23 seconds」
マシューとその仲間たち。すばらしい音楽を作っているテクノバンドだ。グルーヴィーでメロディッ ク、オリジナルでとてもソウルフル!彼らの新作もとてもいいけど、このアルバムはずっと聴いていて、そして今でもフレッシュに感じられる。
Mapstation「Distance Told Me Things To Be Said」
僕は音楽をカテゴライズ(分別)するのは好きじゃ ないけど、これに関してはしなければいけないかな。僕はダンスミュージックではない電子音楽もたくさん聴くんだ。それをエレクトロニカと呼ぶ人もいるね。Mapstationはとてもオリジナルでオーガニックなサウンドで、多様な音楽体験をもたらしてくれる。彼がBarbara MorgensternとPaul Wirkusとコラボレーションした作品もおすすめ。
Porn Sword Tobacco「New Exclusive Olympic Heights」
ラブ!
僕たちはモノに名前をつけて、いろんなフォルダーに分別するのが大好きだよね。こうすることで僕たちは「どこにも属していない」という不安を解消して、安心したいんだと思う。僕たちは 何かに属していたくて、現代社会では音楽も個人のイメージを左右するひとつのアイテムと化している。この性質のおかげで、すでにあるフォルダーに入れられてしまった人が、ほかのことをしようとすると なかなか興味を持ってもらえないことがある。Son Kiteはトランスシーンと強い繋がりがあるから、テクノやハウスと呼ばれる音楽が好きな人に僕らの音楽を聴いてもらうのはむずかしいと感じたんだ。 だからminilogueはそういった人たちに耳を傾けてもらうために始めたんだよ。それが達成できたから、またSon Kiteも再開させた。Son Kiteは 少し速めで激しくて、minilogueはややダーティーでスローなんだ。その瞬間にピッタリな音楽が何かは、そのときにならないとわからない。だから僕たちは、そのときそのときに最適な音楽を選んでプレイするようにしているんだ。だから、それがSon Kiteなのかminilogueなのかは僕たちには関係ない。僕たちの経験からは、Son Kiteの音楽は野外で聴く方がふさわしいことが多いね。
音楽以外では、僕の生活は家族と友人が中心だ。妻と娘とキッチンで料理をしながらよくダンスしたり、家族で本を読んだり。今気に入っている本は、小さなお婆さんと大きな熊が、声を交換する(?)という話!あとは、僕はメディテーションを日課としていて、それも僕の生活にはとても大切なこと。
そう、僕たちはそれぞれ田舎の方の家に引っ越したから、それぞれの自宅にスタジオを作る方がお互い楽だったんだ。僕たちの生活においてもいいタイミングだった。もう何年も2人で密に活動してきたから、ここにきて別々のスタジオを持つことで突発的に他の人ともプロジェクトをやることができるようになる。もちろんソロ作品に取り組む時間も増えるよね。それは僕の個人名である「Sebastian Mullaert」名義でやっていくよ。
はDJとしてはいろんなスタイルでプレイするので、ミックスCDを作るにあたって2つのエネルギーを選択しないといけなかった。1枚目のCDは遅めでよりエクスペリメンタルなダンスミュージック、そして2枚目は速めで夜の時間帯にふさわしい音楽だ。DJにとって大事なその場のフロウを生かすために、僕たちは実際に使う分の倍の数の曲をライセンスした。準備が整ったと思ったら、僕はとくに曲順を決めないでプレイしてそれを一発録りしたんだ。だからすべてのミスやハプニングも、実際にプレイしたときのままになっている。
そうだね、確かに意外だよね。僕たちはもう何年もやろうって話はしていたんだけど、 実際に行動に移すには僕1人の方がやりやすかったってことだろうね。
僕たちはmuleの音楽をずっと聴いてきていたんだけど、大阪にいる僕のとてもいい友人であるツジ・テルミさんが紹介してくれたんだ。それが「Ghost」というMuleからの最初の12インチリリースに繋がった。
それ、やろうよ!
僕が彼らの曲が大好きだからということと、友人としても大切だと思っているから。
僕はいつもロングセットをやるから、その夜によってどんなプレイをするか、かなり幅がある。夜は長いし、クラブの雰囲気というのは そこに集まった人によって作られるからね。お客さんが入り始める時間、ピークタイム、そして一晩中 踊り明かしたあとの雲に乗っているような感覚……。これらの異なるモードに合わせて音楽も変わる。でも2枚目のCDは間違いなく、僕の「夜セット」の一部になり得るね。
ああ、ほとんどの曲はミックスの感じを意識して作ったよ。
僕にとって他の人と音楽を作ることは、複数の人間それぞれの創造性によるコミュニケーションなんだ。そのコミュニケーションを通して、共鳴することができると、もうコミュニ ケーションさえも必要なくなる瞬間がある。同じひとつの音楽を奏でているからだ。自分ひとりで音楽を作るときは、自分を解放して自分の中にあるものを引き出す作業になる。その瞬間の自分の気持ちを外に吐き出すこと。それはメディテーションにも似ていて、スタジオ機材を使って自分の存在に呼びかけるんだ。
僕は常にいろんなプロジェクトを同時進行しているけれど、今もっとも多くの時間を割いているのがminilogueとSon Kiteのジャムライブ 盤。僕たちはそれをとても楽しみにしていて、何度もセッションを重ねているんだ。それ以外にも、 Kossや、Andreas Tiliander、Kristofer Stro"m、David Nordとのプロジェクトがあるほか、リミックスやソロ作品もあるよ。
Wa Wu We!みんなここに集まって、踊ろう。
INTERVIEWS