INTERVIEWS

dtf

自分が好きなバンド、Joy Divisioの「digital」という曲があるんですが、その詩の一節から拝借させていただきました。和訳すると「明けても暮れても」ですね。アルバムのコンセプトに合っているかな、思いまして。 「現実」ですね。具体的に言うと……、夢や理想を抱えながらも、叶わずに畑違いの仕事をしている人ってたくさんいると思うんです。でもそれは決して恥ずべきことではなくて、生きていくには仕方のないことで。自分はこうして運よくCDをリリースすることができましたが、現在も仕事と両立しながら音楽をやっていますし、時には悩むこともありますし。 現実を受け入れ、日常を送る上での心情の変化、それに伴う感情の起伏を音楽で表現しました。 やはり最終曲の「Monday morning」ですね。月曜の朝が嫌で嫌で仕方がなくて「仕事サボろうかなぁ」とか、他にいろいろ妄想して現実逃避するんですが、結局受け入れてまた1週間が始まるという。裏で聞こえる声や足音は、実際に月曜日の朝に自宅や会社でサンプリングしたものです。「Scavenger」は自分が繰り返し見る夢を題材にした曲で、その不思議な感覚がうまく音にできたと思います。その夢というのが、スラムというかとても貧しい街を自分が旅行者として訪れるといった内容で。九龍城のような大きい雑居ビルや薄汚い工場、諦めたような表情の人々、さまざまなものがひとつの夢の中で展開されるんです。なぜこんな夢を繰り返し見るのか、謎です。 システム自体はあまり変わっていませんし、表現したいこともPersistence時代と変わらずです。エレクトロニカやアンビエントなテイストの曲を作るにしても、インダストリアルやノイズの要素は欠かせません。ただサウンドの幅は広がりましたね。グリッチ音や変拍子を多用してみたり、Persistenceではやっていなかったこと、あとは誰かの真似をするのではなくオリジナリティを出すことに努めているつもりです。自分のわがままでPersistenceやembalmment3の活動を停止してしまった以上、前と全く同じことはできないし新しい表現をしなくてはならないし。それが仲間への最低限の礼儀だと思っています。 このアルバム……というかは自分がこれまでに、そしてこれからも音楽をやる上でSteve Reichはあまりにも大きすぎる、神のような存在です。「Music for 18 Musicians」は自分の中で最高の楽曲です。あとは青春を共にしたレーベル"Warp Records "関連の音はいつまでも変わらずに好きですね。 テクノに関していえば「ディープか、ハードか」といったようにハッキリしていますね。それぞれのジャンルをストイックに追求しているといった印象です。 気付いたら機材から煙が出てたとか、自分ら(Persistence結成時)の番だけ音量下げられたとか……。あ、それは苦い思い出として(笑)。British Murder BoysやOscar Mulero、Christian Wunschといった海外の第一線で活躍しているアーティストとの共演ですかね、やはり。簡単にできるようなことじゃないですから、良い経験になりました。パーティーを通じていろいろな仲間と知り合えたのも大きな収穫です。 ディープからハードまで幅広く、でも決してミーハーにならずに押さえるとこは押さえてる。オーナーさんのセンスの良さがわかりますね(笑)ここに行けば探している音がきっと見つかりますよ。今回リリースする「AY」なんですがアンビエント~ダブ路線を主としていながら、ちょっと捻くれた自分の作品も採用していただいて……、懐が深いレーベルだなぁと(笑)。コンスタントに作品をリリースしてますし、運営も本当にきちんとしたレーベルでいろいろな意味でレベルが高いと感じました。今後も有名アーティストのリリースが決まっていたり、今急成長のレーベルです。注目ですよ! リリースから2日後の9月9日に地元山形の酒田市にある"MUSIC FACTORY"にてDJの予定です。そこで定期的に行われている「OVeR」というパーティーに出させてもらいます。(レジデントDJにWIREにも出演するTakaaki Itoh等:http://ssrecords.exblog.jp/16149151/)あとは年末に同じく「AY」からリリース予定のコンピレーションに参加予定です。こちらもぜひチェックしていただければ。 音楽業界自体元気がなく、風営法や条例改正等も相まって日本のクラブシーンは厳しい状況にあると思います。そんな中で自分達ができることといったら、やはりこのシーンを続けていくことだと思うんです。一度音楽から離れた自分が言うのもなんですが、「継続」しかないと思うんで。作り手はどんどん前に出てアピールして欲しいですし、リスナーもパーティーに行って楽しんでもらいたい。音楽を作り、人前で発表する。その音楽を聴いて踊る。形はどうであれ、自分を表現することができるというのはすばらしいことです。