「baby's choice」をリリースしてからは、さらにバンドサウンドを突き詰めたいと思っていたから、"JAZZY SPORT"はきっとこれから俺がやりたい音楽性を理解してくれると思ったんだ。プレフューズ73との「AKASATANA」、「baby's choice」、そしてMICROPHONE PAGERとしての「王道楽士」と続いて、自分の作品に嫌気が差すとかそういう意味ではないんだけど、正直トゥーマッチになっていたところがあった。トラックを聴いてラップを16小節考える。フックを決めてターンテーブルでライヴをする――そういった一連のルーティンに興奮しなくなっちゃったんだ。そういった転機は時々訪れるんだけど、ペイジャーで頂点に達して、TwiGyとしての次作をその延長線上のものにしたくなかったから、しばらく休もうと思ってね。その期間にMACSSY(※女性3人組ヒップホップグループDERELLAのメンバー)と出会って、バンドで曲を作ろうって話になったんだ。そこででき上がったのが今作にも収録されている「Spot」の原型なんだけど、そこから次作のビジョンが浮かび始めて、(プロデューサーの)mabanuaくんと、俺の考えるイメージをシェアして作っていったんだ。
単純に「Twigy」という名称から連想されるものを排除したかった。すでに自分自身が拒絶していたくらいだったからさ(笑)。言葉数の多いラップで埋められたトラック、ラップするための曲を作りたくなかったんだ。これまでの俺は、ある種の使命感のようなものに従って作品を作っていたと思う。でも、俺が本来持っている音楽性やセンスはそこにとどまるものじゃないし、それをもう一度改めて提示したかったんだ。昔建てた家をもう一度建ててください――それはときめかないよ。自分にとっても悪循環だし、相手に対しても悪い。それが近年はステージ上にも出てしまっていて、達成感も緊張感もない状況で、しばらくネガティブな時期もあったからね。
とにかく音数が少なく、曲としてトラックが誇示しないもので、それに自分の声を乗せてから考えていくことにしたんだ。これまではヴァースを録音したらそれで終わりだった。でも、今回は一曲一曲を大切にしたくて、歌詞の書き直しや歌い直し、初めての作業工程が多かったんだ。とはいえ、歌詞の内容は結局は俺自身だから、面倒なものが多いけど(笑)、余計なギミックなんかはすべて省いて作った。「Bag」や「Stay」とか、これまでのリスナーに対してのサービス的な楽曲も収録はしているけどね。その方が、よりわかりやすい形で俺の感覚が伝わると思ったから。
思い返すと意識的だったのか無意識だったのかわからないんだけど、生まれてくる言葉を抑制したくなかったんだ。言いたい言葉はそのまま活かす。じゃないと、本来次に出てくる言葉が失われてしまうかもしれないから。同じ言葉であっても、曲でどう使うかが重要で、そこに説得力や深みがあればあるほど、どんな単純な言葉であってもその人が発する言葉は抜きん出て聴こえるものなんだよ。ヒップホップはもともと芸術性の高い音楽なのに、いつしかマテリアリスティックになってしまった。俺はもう過去の人間だと思っているし、いまのシーンの中には存在しないと思ってる。意識的に離れていっている自分もいるけど、もともとそこにはいない。リスナーが俺をそこに当てはめたいだけなんだ。俺としては、何事においても「本質」が大事だと思ってる。それが最近はMCやDJだけじゃなく、ミュージシャンやシンガーで思いを共有できて、かつ表現することもできるからね。今回のアルバムの収録曲は10曲だけど、ちょうどいいんじゃないかな。雑味をなくし、余計なものは一切省き、シンプルにまとめた作品。ここから派生する次の作品のビジョンも、もう見えているよ。
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