ただこの作業にかかるありとあらゆる労力を無視して同じ効果を得られるのがサイドチェイン。メインのトラックにかかるコンプに対して2つ目のオーディオ信号を通すことができるコンプ方式である。一般的な使い方として有名なのが「ダッキング」。これは例えばバックグラウンドの音楽に声を乗せる時、声が被さる瞬間にそのバックに流れる音楽の音量を瞬間的に落とし、声が乗る隙間を与えてくれるテクニック。ダンスミュージックのプロデューサーがよく使う手法としてはキックドラムの音の通りを良くするために他のオーディオトラックからサイドチェインをかけ、キックが入る度にそのオーディオの音量が瞬間的に下がり、結果的に音のスペースが産まれ、よりキックが際立つように鳴る。テクノやハウスの楽曲でオーディオ全体が呼吸し、跳ねているように聴こえるあの効果である。
自分の場合は曲の中の要素からフォーカスしたい音を出し入れするのに便利なツールとしてサイドチェインを使っている。これによりあらゆる音の優先順位を付けることが可能になるのである。以下は自分がよく使う例である。
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サイド・チェインインサート / メインオーディオ信号
キック・ドラム / サブベース、ベースライン、バックのノイズ等
スネアもしくはクラップ / ストリング、パッド、長い音やリバーヴ等
ヴォーカル / ギター、単音系楽器、明るいシンセ音、ホーン等
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以上は絶対的なルールというわけではないが、自分がミックスダウンをする場合は主に自分の曲のどの要素をリスナーに特に聴いてほしいか、どの音に優先順位を置くかを注意している。サイドチェインは曲の重要な要素にフォーカスさせるのに最適な素晴らしいツールだ。
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自分はこのプログラムをプロダクション用途に使っている。自分は伝統的なトレーニングを積んだ音楽家でもなければ、ピアニストでもなく、まして音楽理論が理解できる訳でもない。自分の耳だけを頼りに作業しているため、アイデアに困った時や行き詰まった時には自分の楽曲を出力し、Mixed in Keyで分析し、他の何千もの曲と比べるようにしている。時にぴったりと合う古いソウルやディスコのサンプルを見つけたり、ベースラインのアイデアを探す手助けになってくれている。
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以前筆者はありとあらゆるサンプルを全て1つのフォルダに保存していた。新しいサンプリングCDを手に入れたり、曲を分解したり、リミックスのパーツを受け取るたびに全てこのフォルダに入れていたため、終いには乱雑に幾重にも連なったフォルダ階層のおかげで自分の探しているサンプルを見つけるのに非常に手こずることになった。さらにやっかいだったのがFL StudioとAbletonの作業中のファイルで、サンプルの場所を違う階層やフォルダに移動させるとFL Studioはサンプルを自動で再読み込みすることができなくなるのだ。
このどうにもならない状態から最終的に抜け出したのが自分の創造的スランプだった。あまりのファイルの不整理から自分の作業に支障をきたして遅くなるばかりか、必然的に創り始めたどの楽曲も最終的には没にせざるを得ない状況になってしまったのだ。
というわけである日決心をして自分のサンプルを整理し直して自分が見つけやすいフォルダを作り直すことにした。以下が自分のライブラリー階層構成である。
●製作中音楽ファイル
作業ファイル (FL Studio と Ableton ファイル)
カット
>映画とテレビのカット
>音楽カット
>ヴォーカルカット
ドラムループ
>各種
>サンプル・ファクトリー・ライブラリー
ドラム
>クラッシュ (各種)
>ハイハット (各種)
>キック (各種)
>パーカッション(各種)
>スネアとクラップ(各種)
>サンプル・ファクトリー・ライブラリー
FX
>各種
>サンプル・ファクトリー・ライブラリー
ヒット(爆発音やコードのパーカッシヴなサウンド)
>各種
>サンプル・ファクトリー・ライブラリー
Impulse Responseファイル (IR's for convolution reverbs)
インストルメント・バンク (Halion, Battery, Kontakt, Reaktor等のファイル)
Jacob London Sample CD (自家製エフェクト・サンプル)
MIDIファイル
音楽ループ (コンストラクション・キット)
ベース (ワンショットのベース音)
シンセ (ワンショットのシンセ音)
ヴォーカル (アカペラ、サンプリングCDのヴォーカルセクション)
初心者にとっては少々大袈裟な構成に思えるかもしれないが、急激に増える自分のサウンドライブラリーにすぐ驚くことになるだろう。自分のライブラリーは現在300GBを超えたが、このシステムを使うことで自分が必要なサンプルをすぐに見つける事ができるようになった。
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録音機が無ければ映画用等の環境音ライブラリーのサイトは山ほどある。ほんの数ドルで自分の探しているありとあらゆる環境音を買うことができる。最近自分が購入しているのはhttp://www.pond5.com/ だが他にもたくさんある。