INTERVIEWS

Ryuhei The Man

―『NEXT MESSAGE FROM THE MAN』シリーズは"2000年以降の未来のレアグルーヴ"にこだわっているわけですが、まずはその理由を改めて教えてください。

レアグルーヴって、圧倒的に60~70年代のイメージが強いじゃないですか。でも2000年以降も、かっこいいファンク/ソウルの7インチはたくさんリリースされてるんですよ。僕が『Next Message From The Man』に入れてるような新譜の現行ファンクは60~70年代のクオリティを持っている曲ばかりですが、1000円ぐらいで7インチが買えるんです。どのシーンにも同じことがいえると思うんですけど、やっぱり新譜って大事だと思うんですよね。そういう意味で視野を広く持ちたいし、それを知ってほしいので、僕が好きで、普段からプレイしてる曲を選んだんです。
 
― たしかに、それは大切ですね。

僕もレアなものをたくさん買ってきましたし、そういうものを中心にかけるDJだと思われてたこともあったと思うんです。でも1枚に数万円、数十万円もするレコードを買い続けるのは自分には無理だったので、そういうレアなものでアクセントをつけつつ、定番のものや、新譜を織り交ぜてプレイするのが今の自分のスタイルだと思っています。ジャンルや年代や国は関係なく、ただシンプルに"良いものは良い"、それだけだと思っています。
 

 
― そもそも、どうしてそういうスタイルに行きついたんでしょうか?

まだ学生だった90年代前半に、イギリスに留学してた友だちが7インチを買ってきてくれたんですよ。Bus People Expressの「Augusta Georgia」っていう曲で、聴いてみて70年代の曲かと思ったら、現行のバンドの新しい曲だって聞いてものすごく衝撃的で。アシッドジャズとはまた一線を画してるソリッドな音というか、どういうことかちょっとわかんなくて(笑)。で、そのあと、レコード屋で働いてた時代にも、買い付けに行ったニューヨークで同じようなことがあって。それで、「今を見逃すとだめだぞ」と思ったんです。なので90年代前半から、新譜は必ずチェックしています。あと、これはいやらしい話なんですけども、新譜のファンクをかけてる人あまりがいなかったので、僕のスペシャル感は出せると感じて。で、「これ誰ですか?」って聞かれても、「いま出てるやつだよ」って伝えられるじゃないですか。お客さんら、それをすぐ買えるわけですし。ですから新譜は、昔のものと同じ割合で毎日チェックしてます。
 
― チェックの方法は?

日本だと、入荷が早い"JET SET"さん。あとは知り合いから、「これかっこいいらしいよ」って情報が入ってきたり。海外だと"JUNO"のサイトですね。ただ、意外と日本に入ってこないものも多いんですよ。すごい話もあるんですよね。たとえばKings Go Forthっていうバンドがファーストシングルの"One Day"っていう曲をリリースしたとき、あまりにもかっこよかったのでイギリスのコレクターがほとんど買い占めちゃったんです。で、次に市場に出たときは50ドルになって、80ドルになって、200ドルになってみたいな感じで、日本に入ってこないまま高くなったりとか。そういうレコードはありますね。イギリスのノーザン・ソウル・シーンでも、10枚見つかったら9枚は割ってしまって、1枚だけにしてレアリティーを上げるっていうようなことを聞いたことがあるんですけど、そういう気質がもしかしたら続いてるのかなとは思います。
― ところで作品のテイストですが、今回は前作よりもファットな印象があります。

おっしゃるとおりで、今回はファンク/ソウル色が前回よりも強めなんです。というか、今お話ししたとおり『Next Message From The Man』の原点が"現在進行形のファンク"なので、そこに立ち返ってみたんです。そういう部分を聴いてもらいたかったし、フックになるような部分が欲しかったので。あと全シリーズのコンセプトとして、"誰でも踊れる"っていうことは意識はしてます。
 
― その一方で、後半のスロウな流れも1つのポイントになっていますね。

そうなんです。後半のElectric Empire"I Just Wanna Give It"からDJ Mitsu the Beats"Promise In Love feat. Jose James"までの4曲のスロウな展開は、今回初めての取り組みですね。クラブの現場では踊らせることが目的なので、こういう流れを作ることはほとんどないんですよ。でも、こういうラブリーな雰囲気も(笑)好きなんですよね。ですから、新たな側面として楽しんでいただければうれしいです。
 
― DJについての質問です。分岐点はいつでしたか?

たぶん分岐点になったのは、2001年にD.Lさん(元DEV-LARGEさん)とDJ DENKAさんとKASHI DA HANDSOMEさんと僕の4人でリリースした "BROTHERS ON THE RUN"っていう2本組のミックステープだったと思います。それを出したぐらいからちょっとずつ、全国の熱心な方々が呼んでくださるようになったんです。で、東京でも徐々に増えていき、そこからちょっとずつ。地道に1年に1枚くらいのペースでミックスCDを出して、みなさんに少しずつ気にかけていただくようになりました。
 
― 結果、DJとしても勢いづいていますが、その中心的な位置にある渋谷"The Room"の「WAH WAH」も盛況のようですね。

おかげさまで、状況は始めたころとあんまり変わってないというか、順調です。むしろ、勢いはどんどん加速している気がします。もちろん、結婚して家庭を持ったり、仕事が忙しくなったり、ちょっとシーンから離れた人などもいますけど、そのぶん若い子が入ってきてくれている。決して派手ではないですけど、地道にシーンは守られてる感じがします。
― お客さんの年齢層はどのくらいですか?

30歳ちょっと過ぎぐらいがメインですかね。まれに20歳くらいの子もいますけど、平均したら30前半から中、後半。
 
―『NEXT MESSAGE FROM THE MAN 4』を聴いて、イベントに行ってみたいと思う新しいファンが増えるかもしれませんね。

もしそうなれば、それはとてもありがたいことです。事実、『NEXT MESSAGE FROM THE MAN』シリーズは、普段の現場のプレイをそのままのかたちで再現しようという気持ちで作っているので。

  ―ファンク・バンドQ.A.S.B.でのプロデュースワークが印象的でしたが、プロデューサーとしての新しい展開は?

現時点で名前は出せないんですが、今某ヒップホップアーティストの曲をQ.A.S.B.さんで弾きなおす企画があります。スラム・ヴィレッジのエルザイがナズ『Illmatic』のカヴァーアルバムを出したんですけど、そのバックで演奏していたウィル・セッションズみたいな雰囲気ですね。ヒップホップと生の音を、うまくクロスオーヴァーさせたいと思ってます。
― INFOMATION

タイトル:NEXT MESSAGE FROM THE MAN 4
アーティスト:Ryuhei The Man
形式:CD
発売日:2月13日
料金:¥2,200-
 
 
 
 
 

 

●トラックリスト
1. Visioneers / Shaft In Africa (Addis)
2. The Mighty Mocambos with Afrika Bambaataa, Charlie Funk & King Kamonzi/ Zulu Walk Part 2
3. D.L a.k.a. Bobo James / Funk Bomb 2011
4. MURO /A Head Of The Game Part 1
5. Tom Middleton Presents The Chiswick Reach All Stars/ Nutsin (Guynamukat-Dirty-Blaxploitation Funk Edit)
6. Sugarman 3 / Funky So-And-So
7. Sharon Jones & The Dap-Kings / Pick It Up Lay It In The Cut
8. Third Coast Kings / Tonic Stride
9. YOSUKE TOMINAGA / Magnetic
10. Hypnotic Brass Ensemble / Starfighter
11. Mountain Mocha Kilimanjaro / Stompin' Joe
12. Q.A.S.B. + RYUHEI THE MAN/ The Mexican Pt.2
13. Rhymester / K.U.F.U. (Instrumental)
14. Orquesta De La Luz / LA PUERTA-Yukihiro Fukutomi Remix-
15. Shuya Okino / Look Ahead(Shuya Okino Re-Edit) feat.N'Dea Davenport
16. South Bronx Community Youth Project / Dance Freak
17. The Super Phonics / Have A Good Time
18. Willie West & The high Society Brothers / She's So Wise
19. Myron & E / On Broadway
20. Gizelle Smith /Jonny Part.2
21. Speedometer / Lover & A Friend feat. Ria Currie & Myles Sanko
22. Al Supersonic & The Teenagers / Paint Yourself In The Corner
23. Electric Empire / I Just Wanna Give It
24. ROOT SOUL / My Dream Came True feat.Leon King
25. As One / I Love You
26. DJ Mitsu the Beats / Promise in Love feat. Jose James