INTERVIEWS

Introspective

すべての始まりは90年初期からヒップホップ&クラブミックステープを集め始めた時からだと思う。そのDJ達の音楽を聴くことは、僕にとって、とても新鮮&エキサイティングなもので、2つのレコードを一緒にミックスする考えは、その時完全に僕の興味をそそったんだ。

家にあった父親の古いファンクレコードや、両親が持ってたホントにお粗末なターンテーブルとテープデッキを使って、レコードとカセットを実験的にミックスしたことを覚えてるよ。ほんとバカだよ、だってそれにはピッチコントロールがなくってさ。だから、自分の手先を使ってピッチの速さを調節したり、テープを止めて頭出ししなきゃならなかったんだ。だけど、僕は気にならなかった。それがかっこいいと思ってたんだ。これがきっかけで僕はUKのクラブカルチャーにのめり込み、Technicsの機材を買って、お金を全部レコードに費やすようになった。それから何年か自分でDJスキルを練習したあと、自分の音(ビート)を作ることにさらに興味を抱いていることに気が付いたんだ。

マンチェスターのレコード店で働いていた時、ブレイクスに出逢った。ある日の仕事の帰りに、そこで一緒に働いてた友達のGregが、彼のフラットで僕に何曲か(ブレイクスを)聞かせてくれたんだ。それを聞いて僕は「Woah!何じゃこりゃ???」って感じになったよ。たぶんそこで僕が聞いた最初のブレイクスはTipperの曲か、Marine Paradeの最初のリリース曲のどっちかだと思う。とにかく僕は、それが自分の好きなダンスミュージックすべての要素を合体させたようなものだったんで、ぶっ飛んでしまったよ。ちょっとドラムンベースっぽくって(その時ドラムンにはまってたんだ)、だけどもっと美しくて、もうちょっと「大人」っぽい感じがした。
んー、音楽に関わってる人、すべてに対してはちゃんと言えないんだけど、僕にとってブレイクスって、違ったスタイルの音楽を集めた融合体みたいなものかな。僕が思うに、このジャンルの良いところはファンク、ソウル、ハウス、テクノ、エレクトロ、サイケ、IDM、ジャズなど、自分の好きな音楽要素のほとんどを、一緒にして試せるって点。それぞれ異なる音楽のバックグラウンドをもった大勢のDJやプロデューサー達は、すでに彼らが熟知し愛する音楽を組み合わせた「何か」を欲しがっていて、その結果ブレイクスが登場し、また、いくつか新しい音楽のジャンルを創出しているんだと思う。僕にとってブレイクスのスゴいところは、世界中のシーンに、プロデューサーやDJのグループがいて、それぞれのサウンドを手掛けているということなんだ。クラブでDJするとき、これらすべて異なったタイプのブレイクスをミックスしプレイすることができて、観衆はそれに耳を傾けてくれる。

音楽的に、ブレイクスに辿り着くまでに、ヒップホップからテクノ、ドラムンベースまで全部、僕は、たくさんの違うスタイルやクラブシーンを経験してきた。先に言ったように、僕がブレイクスに惹きつけられる最大の原因は、ブレイクスが僕の好きなダンスミュージックの異なるさまざまな要素すべての融合体みたいなものだからだと思う。何年かいろんなスタイルを試してみたけど、100%満足いかなかった。ブレイクスは僕に「ぴったり」だって感じがするよ。 UKでブレイクスシーンは、いまだに大きくなっていってるよ。今のところ、ロンドンがブレイクスの中心地だと言って間違いないと思う。マンチェスターに住んだあと、ここ(ロンドン)に来て2年の間、2つの街の大きな違いが見えてきた。「ブレイクスピープル」の大多数はロンドンをベースにしている。だから、ここではいろんなことが起こるんだ。Humm、Chew The Fat、Platforn 12、 EargasmのようなクラブイベントがFabricであるし、レーベルではSinisterはもちろんのこと、Lot 49、Fat、Finger Lickin’、TCRなどなど、挙げるといっぱい出てくる。もちろん、UKには他にも素晴らしいパーティーがある。たとえばリーズでTechnique、マンチェスターではTangledやFuse、バーミンガムのDrop Beats Not BombsにシェフィールドのUrban Gorillaなどね。

国際的にも、ブレイクスはいい傾向にあると思う。世界にはスペインのPeter Paul、イタリアのSantos&Madox、オーストラリアからDopamine、Nu Breed&Infusion、ハンガリーではPSure、Amb & Kevin FCB、カナダのInfluenzaなど、トッププロデューサー達がいるしね。

UK外での経験が僕にはあんまりないけど、ポーランド、ラトヴィア、エストニア、ロシア、スペインでDJをして気が付いたことは、そこには小さなブレイクス好きのDJ、プロデューサーのコミュニティがあって、UKや、それ以外に優れたブレイクスシーンを持っているオーストラリア、カナダ、アメリカなどからDJ達を呼んで、イベントを行っているんだ。このシーンが日本に浸透するのも時間の問題だろう。きっと、もっとたくさんのDJ達がブレイクスのサウンドをプッシュしてイベントを行い、欧米からより多くのDJ達を招聘すれば、もっとみんなこのジャンルに気付き始めると思うよ。 このプロジェクトの仕事が僕に回ってきたとき、日本の人達にブレイクスの違う面を示してみる絶好の機会だと思った。ジャンルの中で異なるスタイルをうまく見せるトラックを選びたかったんだ。

CDで曲順を調整する時、DJがクラブでPLAYするようなセットを再現したかった。出だしはウォームアップにちょっとプログレッシブで、その後、みんながノってくるように、少しファンクを加える。それからアルバムはもっとテッキーで激しくなっていく。その時、願わくは、僕に観衆の視線は釘付けになるんだ。それは自分がDJしている時と同じコンセプト。観衆を見抜き、彼らに反応すること、またその上でフロアをさらに盛り上げ、おもしろくさせることが重要だと思っている。

明らかにこのアルバムは自宅で聴く人がターゲットになっているので、激しくって、速いブレイクスばかり12曲を収録するのはふさわしくないと思った。だから、変化に富んだ、おもしろいものを作りたかったんだ。

僕にとってのアルバムの聴きどころはGroove Diggerz 「Big Bad Bruiser」のDivertedリミックスだな。クラブでかかるとフロアは盛り上がって、とっても良いトラックだよ。この曲は、今年の初めに行われた 「Drop Beats Not Bombs festival」 を、いつも僕に思い出させる。
その時、僕は夜中の1時に900人の観衆の前でこのトラックをプレイしたんだ! そうだね、アルバムには2曲、僕のトラックが収録されている。今年の初めリリースされた「Inside」とニューシングル「Devil Theory」。どっちもSinister Recordingsから。

スタジオに居る時、「なんでこのトラックを作ってるんだ?」とか「トラックの意味は何だ?」とか、そういうことはあまり考えないようにしていて、自分の直感や感性にしたがい、思いのままに行動しがちだね。僕がインスピレーションを感じたら、曲のベースを作り始め、アレンジの中に、できる限りたくさんのアイディアを取り入れるようにしている。僕にとってトラック制作は自分がやってることを楽しもうとすることだよ。

結局、Introspectiveとして僕が制作しているトラックは、主にDJ, クラバーをターゲットとしていて、だから、僕があるサウンドやリズムに刺激を受けたら、それが他の人にも同じ反応を与えることができると願っている。スタジオに居る時、僕はフロアのためのトラックであるという事に焦点を当てて、自分の思っていることがその環境でうまく働くように、DJ活動や自身がクラブで踊っていたような、以前の経験を利用してトラック制作を行っているんだ。
Sinister RecordingsはToryumon(日本のモバイルとデジタルミュージックの配信業者)の傘下としてAlex LeeとPaul Kiernanが2002年に設立。インターネット上のプロモとして僕のシングル「Time Travel」をAlexが取り上げてから、03年に僕はレーベル参加したんだ。最初に3曲の契約を結んで、それからここが僕のホームだよ。

Siniste の一員でいることは良いことだよ。レーベルのために初めてやったリミックス(Splitloop 「Klaxx」)は04年Breakspollのベストリミックスにノミネートされ、僕のセカンドシングルはBreaksbeat world salesチャートのトップ3、そしてDJ MagazineのBeats and Breaksチャートで2ヶ月間11位をキープした。これはその時、シーンで新たなプロデューサーとしては素晴らしい成果だね。

UKで(音楽を)デジタルダウンロードするブームが来た時、Toryumonを通してダンスミュージックをモバイル、デジタル配信することはまた、Sinisterのチームを優位にした。音楽産業で働いていることから得た知識のおかげで、ここUKでのMP3ブーム初期段階から、僕らはそれに携わっていた。MP3ダウンロード向けのカタログも僕らは持っていたし、それはレーベルのアーティストにとって、別の収入を得るのに好都合だったね。プロデューサーとしてSinisterの一員でいるもう一つの利点は、僕がやりたい制作やリミックスをできる、創作の自由を与えられていること。トッププロデューサーとして僕を見てくれる、レーベルの一員でいられるのは素敵なことだよ。 できる限り僕はあらゆるミュージックスタイルから、影響を受けるようにしている。音楽に関わる仕事についていることは、一日中音楽が僕を取り巻いて、自分自身では取り上げないような、違うものも聴けるチャンスがあるってこと。僕が主に影響されたものとして、1つのジャンルをピンポイントにすることは本当にできないんだけど、僕はブレイクスのプロデューサーとして働いてるので、明らかに他のものよりこのシーンに焦点を当てている。家に居る時は、ブレイクスはあんまり聴かず、CDプレイヤーでDJ Shadow、Zero 7、Leftfield、Coldplayなどのような、もっとチル系の音楽を聴いているかな。尊敬するその他ブレイクスではないアーティストはNinja TuneのAmon Tobin。彼のトラックは非常に圧倒的で恍惚的、そして彼はとっても控えめなプロデューサーだと思う。

ブレイクスでは、Hybrid、Elite Force、Plump DJs、Hyper、Crystal Method、Uberzone…などのプロデューサー達をいつも尊敬し、影響を受けている。これらすべてのプロデューサーは素晴らしいトラックを制作していて、彼らの生み出す全体的な音はとても格好いいよ。 今のところ、Sinisterでトラック制作をしたり、他のレーベルから仕事が入ってきてリミックスをしたりすることは幸せだよ。良い経験を積んできている。ブレイクスのシーンの中で、色々なパーティーへ行き、たくさん楽しい時間を過ごせて、物事が毎年上手くはこんでいると思う。

制作方面では、最近Tiff Laceyを起用した「Sum of Fears」というトラック制作をスタジオでMatt Dareyと共に行っている。このプロジェクトは、僕がリミックスしたAtomic Hooliganの「Shine a Light」をMattがラジオで聞いたことから始まったんだ。Mattはこのトラックに刺激され、それで、彼のシングル「Eternity」のリミックスを僕に依頼するため、コンタクトを取ってきたんだ。リミックスを手掛けてから、僕達は「Sum of Fear」共に制作活動を行うことに決めたんだよ。刺激的なプロジェクトで、僕達は一緒にうまく働いている。これができたらプロデューサーとしての僕の地位を向上させるものになれば、と思っているし、将来的に彼ともっとコラボレーションを行っても不思議じゃないね。

また、Introspectiveとしてのアルバム制作が進行中だよ。これに踏み込むのはどのプロデューサーにとっても、ある意味手強い挑戦だけど、僕には自分がそれをできるってわかってる。アルバムをいつまでにって、締め切って作れないんだけど、時間があればいつもスタジオにいてビートを制作、トラックを手掛けているよ。

今年、DJとして、ここUKの’Drop beat Not Bombs Festival’に参加したし、アルバムコンピレーション‘Nu Awakin’ Rhythm’のプロモートのため、日本へ行くことも決定している。そして10月にはIntrospectiveのシングル‘Devil Theory’(スペインのナンバー1プロデューサー、Peter Paulがこのリミックスを手掛ける)のプロモートのためにスペインへ行く計画もしている。今、自分が置かれている状況にハッピーだけど、プロデューサーとして出来る限りのところまで辿り着いたと感じるまでには、まだ長い道のりがあるなって思う。 自分の音楽スタイルをもっと広げて、できるだけいろいろなスタイルの音楽を聴くことをお勧めするね。あらゆるスタイルのダンスミュージックがある、ここUKにいれて、僕達はとってもラッキーなんだ。たぶん、それを当たり前のように受け入れているんだと思う。

ブレイクスやダンスの他のサブジャンルをサポートすることは、ショップやクラブでプレイする時のトラックの選択肢を広げることにすべて役立つんだと思うよ。
結局のところ、何でも人生の中で自分が選んだことを楽しんで欲しいな! どうも。インタビューをありがとう。ダンスフロアーで会いましょう!!