INTERVIEWS

CLASH 10TH ANNIVERSARY SPECIAL INTERVEIW - オーガナイザーに聞く10年の軌跡-

 クラベリアでコラムページを書かないかというお話を頂いた。オーガナイザー目線で僕がシーンに感じていることなどなんでも好きに書いていいということなので、是非やらせて頂こうと思いパソコンに向かった。

 ちょうど自分が"ageHa"で2004年から続けてきたパーティー「CLASH」の10周年のアニバーサリーを5月10日(土)に開催することもあり、せっかくなので自分がやってきた「CLASH」の10年間を振り返りながら、これまでやってきたこと、やろうとしてきたことなどを赤裸々に書いてみようかと思った。でも自分のパーティーについて書こうと思ってもどうにも、なかなか筆が進まない。

 そこで、インタビュー形式というか対談形式であれば話が進むかなと思い、今度「CLASH」10周年でもアリーナに出演してもらうアーティストYOSAに聞き手になってもらい、これまでの自分のオーガナイザー人生や「CLASH」の歴史について一緒に食事をとりながらいろいろと話をした。
 YOSAはまだ25歳と若く、僕とこうしていろいろと話すようになったのもここ1年ちょっとと比較的最近のことで、僕自身の活動についても昔から知っていたわけではなかったので、興味深く話を聞いてくれた。ここではその一部分、特に「CLASH」にフォーカスした部分についてを皆さんに紹介したいと思う。

Interview : YOSA
 
- 「CLASH」をやったり"ageHa"でパーティー出来るのは本当に楽しかったけども、やりながら最初の頃はもうどこかでレギュラーっていうのは止めたくてしょうがなかったんだよ。 -
 
 
- 荒木さんが「CLASH」を"ageHa"でやり始めたのって27歳の時ですよね?その時って怖くなかったですか?あんなでかい箱でパーティーやるのって、、、

 なんで?全然怖くなかったよ。

  - 人が入らなかったらどうしようとか思いませんでした?

 いや大丈夫。まだその頃は"ageHa"自体お客さん入ってなかったから(笑)。
  もともと俺が"ageHa"に関わり始めたのって、お店が始まって1年ちょっとくらいでお客さんがまだついてなかった頃で、そこから"ageHa"をどうしていこうとか、みんなでそこからいろいろと作っていこうっていう時期だったから、どうやったらお客さんが入るかとか、いろんな企画を試せるような時期でもあったからね。だからそこで何かやって失敗してどうこうとかそういう感じでもなくて、ダメだったらどうしようっていう怖さは全くなかったかな。

  - どちらかと言うと外れて当たり前だったり、自信はないけどとにかくやってみようみたいな?

 たぶん今より当時のほうが、自分がパーティーをやることに関してはよっぽど自信があったと思う。根拠なんかないんだけどね。その頃って自分がオーガナイザーとして確立してきた時期だったし、やっと仕事としても成立してきて楽しくもなってきてて、やる気もあるし、若くてイケイケだったからね。

  - それって当時からそういう自覚ってあったんですか?

 当時ちゃんと本当のところを理解出来ていたかは分らないけど、自分がノってきている自覚はあったと思うよ。たぶん"ageHa"での仕事が始まって、28歳を過ぎたくらいの頃かな?ちゃんとこの仕事で稼げるようになってきたし、「CLASH」以外にも他の箱やいろんな場所でもどんどん仕事に繋がっていって、実際に広がっていくのを感じてたからね。
 若いうちはいろいろと無茶も効くからとにかく出来る仕事は片っ端からイケイケどんどんでやってたよ。ちゃんと結果も出してたしね。
 
- なるほどすごいっすね。。「CLASH」は始まった当初から毎月くらいのペースでやっていたんですか?

 最初の頃は月1ペースではなかったよ。初めの頃はたしか3ヶ月に1回くらいの不定期開催だったと思う。それからだんだん回数が増えていって、隔月になって、ほぼ毎月やるようになっていったね。

  - でもだんだん回数が増えていくってことはパーティーとしてお客さんもついてきたってことですよね?

 どうだったかな?まあたぶんそうなんだと思うけど、当時は「CLASH」がっていうよりも"ageHa"がだんだんまとまってきて盛上がってきたからじゃないかな。
 そういえば「CLASH」は、初めの頃金曜日だったしね。土曜は「ageHa Live」という帯のレギュラーをやってたからね。それ以外の単発の企画ものとかは金曜日にやってたから「CLASH」も金曜だった。

  - 最初「CLASH」は、企画物の1つとして始めたパーティーで、レギュラーパーティーって感じで始めたものではなかったんですか?

 そうだねー。初めの頃は特にレギュラーパーティーで続けていこうって感じではなかったんじゃないかな。もともと1番最初の「CLASH」は、俺じゃなくてコウスケさん(現"ageHa"企画部マネージャー)が作ったパーティーだったんだけど、それを2回目以降から俺が引き継いでずっと担当してるんだよ。
 あんまり覚えてないけど、初めは「CLASH」でこれがやりたいからこのアーティストをブッキングしようっていうよりは、こういうアーティストの話がきたからこれだったら「CLASH」にハマるよねっていう感じでやってた部分はあったと思う。今でもたまにそういう事はあるけど。

  - あった話の受け皿的に「CLASH」が機能してたってことですね。でもそうやっているうちにどこかで月1になっていくとか「CLASH」自体が主体的に変わっていくようなきっかけがあったわけですよね。軌道に乗りだしたきっかけや、実感みたいなことはありましたか?

 たぶんあったんだろうけど、、、それがどこだったかっていうのは覚えてないな。でもレギュラーパーティーとして進んでいくようになるタイミングっていうのは何かあったはずとは思うけど、うーん、覚えてないな。でも正直なことを言うと、もともとは俺自体があんまりレギュラーパーティーという形でパーティーを作っていくこと自体得意じゃないんだよね。

  - そうですよね。今までいろいろ「CLASH」を始める前の高校生位からの話を聞いていても、そういう部分を感じていて、荒木さんが10年間もパーティー続けているのがなんか違和感を感じていました。

 そうなんだよ。俺のパーティーの作り方って、決まったこういうアーティストでこういう音楽をみんなに好きになってもらいたいとか広めたいとかは無く、なんか筋の通ったやり方じゃないんだよ。なんか表現が難しいんだけど。決まったものっていうか固まったものが苦手というか。でもレギュラーパーティーをやっていくのって少なからずレジデントがいたり、そういうのを続けていくことを強いられる側面があるでしょ。なんかそういうのがあんまり得意じゃないんだよね。
 だけど、いちいち毎回毎回イベント名考えたりするのも大変でしょ?だから俺がやりたいアーティストとかでハマりそうなものを「CLASH」にはめていくうちに回数を重ねてしまった。「CLASH」はレジデントDJとかいないんだけど、バラエティーに富んだ振れ幅のあるブッキングはしていても、しょせん俺がやっていることだからどこかそれが「CLASH」らしさにもなっていって。そうしていくうちにレギュラーパーティーとして周りにも認知されていったんだと思う。
 それでも「CLASH」をやったり"ageHa"でパーティー出来るのは本当に楽しかったけども、やりながら最初の頃はもうどこかでレギュラーっていうのは止めたくてしょうがなかったんだよ。

   
- レギュラーパーティーを作るのが苦手のはずの自分が、やってるうちにパーティーを長く続けていくことで得られる良さとか楽しさみたいなものに、徐々に気付かされてきていた。-
 
 
- 縛られるのとか、それに規定されちゃうのが嫌なんでしょうね。


 そう。もうレギュラーは止めたかったんだよ。

  - ずいぶん早いうちからそんなイヤだったんですか。面白いですね。

 だからといってそう簡単に投げ出すわけにもいかないし、明確に止める理由があるわけでもないしね。でもどこかで自分の中で区切りを付けないとやってられないなというか、モチベーションも保てないと思っていて、それで自分なりに区切りとして決めていたのが、「CLASH」を50回までは続けるということだったんだよ。50回で「CLASH」はきっかり止めようと。だから初めの頃から「CLASH」はタイトルにもナンバリングをしていたんだよね。
 
- そうだったんですね。でも結局「CLASH」は止めずに続くわけですよね。それはどうしてだったんですか?

 ちょうど50回が見えてきた頃になって、「CLASH」が自分が思っている以上に世の中に認知されているというのをとても感じるようになってきたんだ。例えば「CLASH」いつも楽しく遊びに行ってますとか、そういう声が今まで以上にどんどん届いたり感じるようになってきたの。
 
- それはもう50回もやってればそうなりますよね。ちなみに50回を迎えたのっていつ頃なんですか?

 2009年12月だね。「CLASH」の1回目が2004年の2月だから数えでちょうど丸々6年経ってるからね。その時点で俺が自分で今まで続けてきたパーティーではもちろん最長だし、自分の人生でも6年間同じこと続けてきたのなんて小学校に6年通ったこと以外ないからね。もうだいぶ長いよね。

  - 確かにその時点でけっこう長いレギュラーパーティーですよね。それは確かに周りからは当然認知度は高まってるしシーンの中核として大きな存在になってますよね。それは確かに簡単には止められない。

 そう。止められなかった。。止めようと思ってたけど。自分が思っている以上に世の中の「CLASH」の認知、需要は当時はとても大きくなっていたし、それをすごく感じるようになってきた。しかもレギュラーパーティーを作るのが苦手のはずの自分がだんだんやってるうちに、パーティーを長く続けていくことで得られる良さとか楽しさみたいなものを徐々に気付かされてきていた。

  - 確かに続けていくことの美学みたいなものも当然ありますもんね。では、周りの雰囲気や状況的にも自分の気持ち的にも続けていこうと。

 うん。止められなかった。

   
- 俺が作るパーティーは常にシーンに対して意味があって、何か役割を担うようなものでありたいんだよ。長く続けることが目的ではないからね。- 
 
- 話は変わりますけど、荒木さんは知る人ぞ知る東京エレクロトシーンの仕掛人の1人として一大ムーブメントを作ることに貢献したわけですが、「CLASH」とは同時並行でやってたわけですよね?「CLASH」にエレクトロを取り入れたりとかそういう事はしなかったんですか?

 ・・・えーと。そういう事はやっていないと言い切りたいんだけど、そういう要素はやっぱりヴィジュアルとか、演出、ブッキングに多少なりとも影響していたと思う。別にブレていたわけではないけど、当時のエレクトロシーンは本当に面白いことが起きていたのは確かだったし、そこに関わっていて少しマンネリ化したテクノシーンにもなんとかそういう息吹を注入したいというような気持ちはあったと思う。
 それにもともと「CLASH」はテクノパーティーと言っても、ARENAの外タレだってテクノの中でも相当幅のあるブッキングをしてきたし、メインフロアー以外はずっとジャンル的にもバラエティーに富んだブッキングをしているしね。やっぱりそこは"ageHa"という箱の特性上もあまりシリアスになりすぎずというか、幅の広さというのは必須にもなってくるのもあるし。まあそこはどこまでどういう内容を許すのかというバランスに対しての戦いの歴史でもあったんだけどね。

  - 確かに今までブッキングされたメインゲストを見てみてもかなりバラエティに富んでるし、コラボレーションをいろいろなところとしていたり、1つのパーティーとしてはあんまり拘りが無いというか、変な気負いを感じませんよね。でも後付けなのかもしれないですけど、そういうなんでもありなものがちゃんと「CLASH」という入れ物にうまくハマっている。それでも「CLASH」らしさというか「CLASH」というパーティーがブレているようには見えてこない。

 けっこう俺の中ではいつの間にか「CLASH」って、良い意味で懐の深さっていうのがパーティーのコンセプトのようなものになっていて、みんなにもそう言ってる。まあ悪い言い方すると節操がないとも言えるんだけど。「CLASH」っていう入れ物自体はしっかりしてるから、そこに何を入れてもちゃんと「CLASH」に見えるっていうね。

  - それもやっぱり年輪ですよね。長く続けてきたからこそ出てきた味というか。

 そうかもしれないね。あとは俺の人柄なのか、みんな俺に向かって言いにくくて言えないだけなのかもしれないけど。他のパーティーとかオーガナイザーがやったら普通は無しなことでも「CLASH」だったらブレないというか許されちゃうみたいなところはあるかもしれないよね。

  - 確かに。そういう懐の深さは感じますね。でもその辺はちゃんと荒木さんが「CLASH」らしさみたいなことを分っている中でやっているからOKなんだと思います。でもそうやって「CLASH」自体が自由度の高いパーティーに変わってきたというか、そういう「CLASH」らしさを作れたことがレギュラーパーティーを足枷のように感じなくてすむ部分は大きいのかもしれないですね。

うん、そうかもしれない。

  - でもさすがに50回で止められなかったといはいえ、まさか10年続けられるとは思っていなかったんじゃないですか?

 そうだね。もちろん流行らなくなって"ageHa"からもう止めろっていつ言われるかとか、そういうプレッシャーは常にあったしね。でも50回で止められなかったら次の止め時はいつか?っていうのはずっと考えていた。それでいうとやっぱり10年100回というのが次の目標であり、そこが「CLASH」の節目だなとはずっと思ってやってきた。
 やっぱりね、パーティー作りってそんな簡単じゃないからね。ほぼ毎月「CLASH」やってるわけでしょ?良い時もあればもちろん悪い時もあるしね。モチベーションを高く保ち続けるのってけっこう大変なんだよ。その為にもやっぱりどこかで区切りをつけないともうこれ以上先に進めないっていう気持ちがある。それにパーティーってやっぱり生き物だからさ。俺が今までシーンを見てきて思うんだけど、やっぱりその時々でシーンに対してすごく影響力を持っている良いパーティーっていうのがあるんだけど、そういういい時期っていうのは続かないんだよ。だいたい2年くらいだよ良い時期ってさ。その後はやっぱりパーティーが無くなったり、続いていてもその存在自体の意味合いってやっぱり変わっちゃうよね。そういう意味では「CLASH」はもう10年以上続いてるわけで、シーンに対してはもうしっかりと役目も果たしてきたようにも思う。俺が作るパーティーはやっぱり常にシーンに対して意味があって、何か役割を担うようなものでありたいんだよ。長く続けることが目的ではないからね。

  - あれ、今度の「CLASH」10周年って何回目ですっけ?まだ100回目ではないですよね?じゃあ100回目で「CLASH」は止めるつもりなんですか??

 今度の5月で95回目ということになっているから、今のところの予定では年内に100回目を迎える予定かな。もしかしたらちょっとこぼれる可能性もあるけど。まあとにかく今はこの10周年イヤーと100回目までなんとか思いっきり盛り上げていくことしか考えていない。その後のことまでは今のところまだ分りませんということにしておいてください。
 
   
- なんかイヤだったんだよね、なんだか知んないけどアニバーサリーっていうだけでみんな有り難がる感じがさ。だったら普段から遊びにきてくれよとも思うしさ。-
 
- 「CLASH」ってアニバーサリーをやるのは今回が初めてなんですよね?今までやらなかったのは、なんなんですか?

 それはね、「CLASH」っていうのは話をした通り、最初のうちは特にレギュラーパーティーっていう感覚ではじめなかったでしょ?だからここから初めて1年経ちました2年経ちましたっていうような感覚がなかったんだよ。ナンバリングはしてたけど、それは俺が50回までなんとか頑張るぞって意味で付けてたものだし、何周年て言う感覚自体がなかった。それで50回で止められなかったからそこから先はナンバリングするのもアホらしくてやめたんだけどさ。

  - でもオーガナイザー的な観点からしたら、アニバーサリーって盛上がるし、お客さんも入るじゃないですか?そうは考えなかったんですか?

 それは、今考えるとやっぱりやればよかった(笑)。その意味でいうとやっておけばよかったとちょっと後悔してる。どっかのタイミングで1回アニバーサリーやってしまえば、その次の年以降はそこでアニバーサリー出来るもんな。でも、そうすればよかったなと思うんだけど、やりたくなかった。

  - それはなぜ?

 だってねー、嫌だったんだもん。世の中がさ、いつの頃からかみんなアニバーサリーパーティーをやるようになったじゃない?箱もそうだしパーティーもだけどさ。まあそれも全然分るんだけどさ。毎月やってるでしょ、俺とかさ?毎月毎月やってると、やってる方としては実際のところアニバーサリーもクソねえんだよ、本当はさ。ずっと続けてやってるうちの1回でしかないわけ。他の人だって本当はそういう感覚のはずなんだよ。俺だけじゃなくてさ。なんかイヤだったんだよね、なんだか知んないけどアニバーサリーっていうだけでみんな有り難がる感じがさ。だったら普段から遊びにきてくれよとも思うしさ。
 
  - まあそうかもしれないですね。

 だけどYOSAも言ってる通り、パーティーをより盛り上げる為だったり、お客さんにたくさん来てもらう為にそういうのやるのももちろん全然理解しているよ。でもいつの頃からかみんなアニバーサリーやるようになって、年に1回とか2回しかやらないパーティーが毎年やる度にアニバーサリーやってたりさ。

  - ははは、そういう流れには乗りたくなかった。

 乗りたくなかったね。今の時代は特に、毎月やるパーティーの利点なんてほとんどないし、年に3回とか4回とかのペースでやるっていうのは全然いいと思ってるし、理にかなってるよね。でもそれがさたかだか1年やったとか2年やりましたで誇らしげにアニバーサリーやってるの見ると、俺はなんか恥ずかしくってアホらしく見えてきちゃうんだよ。だからなんかやりたくなかった。
 
- その意思を貫いてきたんですね。

 そう。でもやっぱりやっておけばよかった(笑)。そしたらもっとお客さん呼べたもんねー。

  - お客さんを呼び易いですもんね。でもそこが自覚的だったのは意外でした。

 5年も過ぎて、いきなりアニバーサリーやろうにもなんとなくタイミング外して出来なかったというのもあるんだけどね。まあ愚痴ですこれは。アニバーサリーの恩恵に与って来れなかった者の愚痴ですただの。
 
- でも10年目はさすがにアニバーサリーやるぞと。

 ここまで我慢してきたんだからここはやりますよと。やらせてください。僕にもアニバーサリーをやらせてください(笑)。

   
- 特にテクノシーンは厳しいところもあって、「CLASH」にとってもあまり良い状況ではなかったから、そこを払拭する為にもテクノのアーティストだけでもこれだけすごいことが出来るというのを見せたかった。-
 
- そこで5月10日、間もなくですが、「CLASH」初のアニバーサリーでしかも10周年が行なわれるわけですね。僕も出させて頂くわけですけども、「CLASH」の10年間で培われてきたものが集約されたパーティーなんだなと、端から見ていてもとても強く感じます。

 まあ10周年のパーティーをやろうとは思ったもののすんなりとここまできた感じでもないんです。でも上手いことRichie Hawtinがブッキング出来たり、あとは今回特に拘ったのは全エリアを使ってテクノ系のアーティストで、しっかりと人も入れて集客的にも内容的にも盛上がったパーティーを作りたいということ。
 ここ数年間は、シーン的にもあまり良い状況とは言えない状態が続いてもいるし、特にテクノシーンは厳しいところもあって、「CLASH」にとってもあまり良い状況ではなかったから、そこを払拭する為にもテクノのアーティストだけでもこれだけすごいことが出来るというのを見せたかった。まあ今までジャンルや内容的にもいろいろと幅広くやってきた「CLASH」だけども基本的にはテクノというのを軸にやってきたし、1番軸になる部分で勝負出来なくなってしまったら元も子もなくなってしまうから。今回はそこ1本で勝負したかったし、テクノの底力とかすごさみたいなものを見せたかった。

  - まあRichie Hawtinは当然すごいですけど、それ以外の国内アーティストが勢揃いしていてホント総力戦と言うかすごいですよね。

 うん。今回は、テクノシーンの勢いみたいなものをやっぱり見せたかったっていうのもあるし、その為にそれぞれシーンで頑張っているみんなの力を借りて、それを集めてやらしてもらいたいっていうのはあったんだよね。
それに「CLASH」をずっと続けていて、もちろん海外ゲストがメインでいるんだけど、他のフロアーも含めて外タレだけじゃないっていうか、どう国内アーティストを盛り上げていくかとか、国内のシーンを盛り上げていきたいっていうのが自分の中で一貫して持ってきた姿勢なんだよね。

  - ただの外タレ頼りのパーティーにはならないとか、そういう想いをずっと持ってやられてこられていたんですね。

 そう。だから「CLASH」でも年に1度は海外ゲストなしの日本人テクノアーティストだけでやるパーティーというのも毎年ずっと続けてきたしね。

  - うん、でもそうじゃないとシーンは育っていかないですもんね。

 これは「CLASH」に関わらず俺のやってるパーティーとか仕事全般に言えることなんだけど、やっぱり国内シーンをどう盛り上げていくかっていうのは1番重要なことだと思う。その中でじゃあ「CLASH」っていうのはシーンに対してどういう立ち位置でどういう役割が出来るのか、「CLASH」がどう機能しているか、そういう事はずっと考えてやってきたよね。それで言えばやっぱり「CLASH」は"ageHa"でやっていることからもアンダーグラウンド過ぎず、シリアス過ぎずというのがあって、その中でもしっかりとした立ち位置や存在意義のあるパーティーであることが出来るかどうかというのは、俺に取って常に大きな課題だったよね。それはブッキングに関してもそうだし、アートワークにしてもそう、プロモーションとかそういう事に関しても表れていると思う。だからあんまり「CLASH」が日本のテクノシーンの王道みたいないわれ方するのはちょっとやりにくさを感じたりする時もあるんだけど、俺的にはけっこうポップでメジャー感のあることも意識したり、良い意味で「CLASH」はチャラいパーティーだと思ってるから。

  - 変にアンダーグラウンドである必要もないですからね。

 そうだね。だいたいそんなシリアスでアンダーグラウンドなパーティー作り俺には出来ないし、そういうものは別の人が別のところでしっかりやってくれれば良いと思う。それがあってこそ「CLASH」のようなパーティーが存在する意味がより出てくるし。

  - 小さなところやアンダーグラウンドなところで活躍している人や若いアーティストの受け皿としても「CLASH」は機能していますよね。

 そうだね。やっぱりいつかは「CLASH」に出てみたい、アリーナでプレイしたいとか思ってもらえるパーティーでありたいとは思っているよ。
「CLASH」がシーンに対して影響力のある存在でありたいと思ってるからね。「CLASH」だけに限らずだけど、もしそういうものが無くなればきっとパーティーを続けないと思うし、すぐに今の立場から身を引くよ俺は。

  - なるほど。それにしても「CLASH」10周年はいろんなところからも反応があって良いんじゃないですか?どうですか実感としては?

 初めのうちは、いざアニバーサリーやると言ってもあんまり実感てなかったんだよね。でもパーティーを作っていくうちにRichie Hawtinが決まって、それ以外のところをどんどんブッキング進めていくうちにみんなにBack to Backでやってもらうことにして、それが情報として世の中に発信されて反応がきて、なんかそういうものを積み重ねていくうちに少しずつ実感が出てきたのかな。この前、出演者やスタッフのみんなで決起会みたいのやって飲んだでしょ50人くらいで。普段ああいうの毎回やるわけじゃないから。ああいうところでみんなと話したりね、あとみんなから10周年のお祝いメッセージを書いてもらってそれを読んだりするとね、今こうして話していることもそうだけど、そうやっていくうちにこの10年間のこととかもいろいろ考えたり思い出したりするからさ、それでいよいよやっと実感が湧いてきたって感じかな。

  - でも僕なんかから見てると10年間このペースであの規模のことを続けてこられたのって、ホントすごいと思うし相当に鍛えられてきたんじゃないかなと思うんですけど。

 そうかもしれないね。パーティー1つ1つ思入れを持って作ってきてるからね。1回1回終わった後って結果が良ければいいけどそうじゃない時もあるから、そういう時はめちゃくちゃ落ち込むんだよマジで。でもそこでへこんでいられないっていうか、もうすぐ次のことやらなきゃならないからね。あんまり後ろ向いている暇がない。ずっと前を向いてやってきたからね。
 こうして10年間のことを噛み締めながら考えることもあんまり無かったから、これはこれで楽しいよ。でも今回の「CLASH」10周年はある意味今年の始まりのようなものでもあって、ここから10周年イヤーをどうやって盛り上げていくか、まだまだこれからいろいろと考えていることもあるし、とにかく100回目指して今はまたがむしゃらにやっていこうと思っているので。
 まずはみんなに5月のパーティーを一緒に楽しんでもらえたら嬉しいけどね。

  - 話は尽きないんですが、それじゃあ一旦ここで今日はひとまず終わりにしましょう。この続きは皆さん是非5月10日の「CLASH」に遊びに来てもらって、またいろいろと実際現場を見て感じてみてください。ありがとうございました。

 こちらこそ。楽しくお話し出来ました。また是非やりましょう。どうもありがとう。

- Event Information -

タイトル:CLASH 10th ANNIVERSARY
開催日:5月10日(土)
会場:新木場"ageHa"
時間:23時
料金:ADV. 3,500yen Door 4,000yen ageHa Member 3,000yen
出演:【ARENA】 RICHIE HAWTIN, DJ SODEYAMA + GONNO, YOSA + SEKITOVA, VJ NAKAICHI + VJ MANAMI 【ISLAND】 KEN ISHII + Q'HEY, FAKE EYES PRODUCTION -Live -, [SHIGEOJD + SUPERMAAR], DJ WADA + DJ YAMA, A.MOCHI + DR.SHINGO, TARO + TIMO 【WATER】 SATOSHI OTSUKI + KIKIORIX + DJ PI-GE, KABUTO + DEN, TAKUYA + SHINTARO.D, NAOKI SERIZAWA + EITA 【BOX】 NEWDEAL + MASAYASU, AQUIRA + JULIEN SATO, HYOTA. + KYOHSUKE TANIGUCHI, SHIGETO TAKAHASHI + SHUN OTOKAWA, MIDORI AOYAMA + SIO  
Yasuhiro Araki

1976年7月21日生まれ。東京都出身。イベントオーガナイザーとして様々なライブやパーティーの企画制作を手掛ける。「CLASH」@"ageHa"等多数、その他アーティストマネジメントやラジオ・WEBなど様々なメディアで企画をプロデュース。
https://twitter.com/Araki33
https://www.facebook.com/araki.33
   
YOSA

DJ/Producer。
高校時代をフランス、イギリスで過ごし、帰国と共にそのキャリアを開始。
2008年、若干19歳でのデビュー以降、その楽曲がJosh Wink、Guy Gerber、Joris Voorn、Funk D’Void、Larent Garnier、Ewan Pearsonといったビッグネーム達から絶大なサポートを得る他、Compost RecordsやClassic Music Companyなどからも作品を発表するなど、その音楽性は幅広いジャンルから支持を得ている。2014年7月、待望のファーストアルバムをリリース予定。
http://www.yosatokyo.net/