- Laurent Garnierが"BoilerRoom"でKyodaiのトラックを2曲かけていたんだ。本人に「僕たちWagon Cookinだけど、Kyodaiのトラックをかけていたよね?僕たちがKyodaiなんだよ!」って教えたらすごくびっくりしてたよ。 -
- 音楽は、お父さんの影響でクラシックやジャズからスタートされたそうですね。
Javier(トップ写真左):音楽学校でサックスの講師をやっていた父の影響で9歳の時に音楽を聴き始めたんだけど、父はクラシックとジャズに精通していたんだ。
Luis(トップ写真右):父はスペインの学校で初めてクラシックではなくジャズという音楽を教えた人なんだよ。だから僕たちは最初からジャズとクラシックを聴いていたんだ。
- 9歳から音楽のキャリアがスタートしたと考えると、今年で何年目になるのでしょうか?
Javier:沖野修也と同じくらいになるんじゃないかな(笑)。でも9歳くらいから音楽を聴いてはいたけど、実際に音楽を作り始めたのは18歳くらいからだからね。
父は音楽学校の講師でもあったけど、パンプローナにあるクラブのオーナーでもあったんだよ。そこでよく仕事を手伝ったりしていたんだ。毎週ジャズばっかりだったんだけど、週末はハウスとかガラージみたいな、90年代の当時に流行っていたダンスミュージックを流してほしいと頼んだんだ。93年くらいからテクノやハウス、ガラージも流すようになってDJとしての経験を積んで、99年にWagon Cookinを結成したんだ。
- 90年代にエレクトロニックミュージックに興味を持つ様になったそうですが、そのきっかけなんだったのでしょうか?
Luis:僕らがクラブでハウスやアシッドジャズをかけていた92年から96年くらいの時に、自分たちのクラシックやジャズの知識を活かしてトラックを作れるんじゃないかって気付いたんだ。
Javier:それまでテクノばっかりかけていて、せっかく持っていたジャズやクラシックの知識を全く反映できていなかったんだよ。
Luis:でも当時のテクノロジーではテクノとジャズをミックスするのは技術的に難しかったんだ。Wagon Cookinの活動の後、94年から99年の間はプロダクションがどう機能しているのか、エレクトロニックミュージックがどのように作られているのかを勉強していたんだ。
Javier:以前は自分たちで作ったトラックをライブで流すだけだったんだけど、99年にWagon Cookinが起動に乗り始めたからファーストアルバムの「Appetizers」をリリースしたんだ。そしたらレーベル〈ODORI〉のChris Duckenfieldが、過去のトラックもたくさんあるんだし、レーベルを立ち上げるべきだって言ってくれたよ。2002年にはWagon Cookinで初来日して、"Blue Note Tokyo"と"Motion Blue in Yokohama"で公演もしたよ。
- Wagon Cookinのライブセットはどんな編成で行われたのでしょうか?
Luis:時期によって違うんだけど、初期の頃はセミライブバンドで、その後ヨーロッパでツアーをした時はフルバンドでライブをやっていたよ。
Javier:サックス2本、フルート、トランペット、ベース、パーカッション、ドラム、ピアノ、シンガー2人っていう編成だった。大勢いて大変だったよ(笑)
- "Blue Note Tokyo"と"Motion Blue in Yokohama"の公演はどういった編成で行ったのですか?
Javier:セミバンドだね。エレクトロニックシンセに生音をのせてハウスをやってたよ。
Luis:サックス、シンガー2人、パーカッション、シンセっていう編成だった。
- これまでWay OutやBassfortなどのさまざまなプロジェクトや、エレクトロポップ、ロックのプロデュースもされてきましたよね。そうしてさまざまな音楽を作っていくのはお2人の性格なのでしょうか?
Javier:初めはハードテクノにフォーカスしていたWay Outからスタートしたんだけど、94年から99年まで活動して何もリリースせずに終わったんだ。その後にWagon Cookinを始めて、ある日友達とパーティーで遊んでるうちに新しいプロジェクトBassfortをやってみよう、っていうノリになって始めたんだ。
ずっといろいろな名前で活動してきたけど、Kyodaiを始める時にこれまでのキャリアを公表せずに活動することにしたんだ。僕らが何者か知らない人たちがどういう反応をするか見てみたかったからね。沖野修也とかGilles Petersonがリミックスを依頼してくれたり、いろんな人がKyodaiを評価してくれたけど、誰もKyodaiをWagon Cookinだって知らなかったんだ。Laurent Garnierが"BoilerRoom"でKyodaiのトラックを2曲かけていたんだ。本人に「僕たちWagon Cookinだけど、Kyodaiのトラックをかけていたよね?ぼくたちがKyodaiなんだよ!」って教えたらすごくびっくりしていたよ。Wagon Cookinみたいな有名なユニットがこんなに若い2人だと思わなかったって言ってたよ(笑)。
ほとんどの人がアーティストの名前を見て、彼らは今どんな音楽をやっているんだろうっていう多少の偏見を持ってショーを見に来るから、完全に何も知らない、無知の状態で僕らの音楽を聴いてほしいと思ったんだ。
- 彼は「Still In Love」の時から時間もエネルギーも制作費もたくさん費やしているわけだし、彼にとってとても価値のある作品だから、それに見合う価格を設定したんだと思う。とてもいいアイディアだと思うよ。 -
- 沖野修也とは今作で関わる以前から面識があったのでしょうか?
Luis:もちろんだよ。2002年の"Blue Note Tokyo"の公演は彼がオーガナイズしたものだし、それよりも前からお互い知っていて長い付き合いだよ。
Javier:このリミックスのオファーが来たときも、彼はKyodaiがWagon Cookinだって知らずに連絡してきたんだ。僕らは「修也からオファーが来た」って面白がっていたよ(笑) 。だから今回の来日で彼に会うまで僕らがKyodaiだって言わないようにしたんだ。周りのみんなにも内緒にしててもらって、日本に行った時に「僕たちがKyodaiなんだよ!」ってびっくりさせようと思ってた。だけど昨年カザフスタンの「Jazzystan Music Festival」に出演した時の写真を見て僕らがWagon Cookinだってバレちゃったんだ(笑)。
- なぜ沖野修也がこのリミックスをKyodaiに依頼したのだと思いますか?
Luis:彼は「Breaking」が好きだったし、僕らのJoey Negroのリミックスを聴いてとても気に入ってくれたんだ。そしてちょうど「Still In Love」のリミックスを誰に依頼するか探しているところだったから、僕らを信頼してオファーしてくれた。
Javier:いろんな作業があって完成するまで3ヶ月かかったんだ。修也が個別のパートを送ってくれたんだけど、どれも素晴らしくて感動したよ。ミックスの作業はすごく刺激的で楽しかった。
■iTunes
https://itunes.apple.com/jp/album/still-in-love/id867518435
- どういったアレンジにするか決めてから作業をされたのでしょうか?
Javier:原曲がすごく好きだったし、最初は恐かったよ(笑)。今までいろんなリミックスをしてきたけど、僕らにとっても修也にとっても新しいものを作ろうと思ったんだ。だから作業にはすごく時間がかかったよ。
- Kyodaiの楽曲を聴いていると、低域がすごい空間を埋めているように思います。「Still In Love」のリミックスでもパーカッシブで走り抜けるイメージですが、低音が空間を埋めていて軽くならないというか。そういった工夫はされているのでしょうか?
Javier:もちろん狙ってそういう音作りをしているよ。「Mistery Love」なんかではベースとドラムを除いたらジャズトラックなんだ。クラブミュージックの要素として低音を重ねているよ。
Luis:本物のベース音を重ねてもこういうサウンドにはならないよ。このリミックスにはサンプラーのベース音を使っているんだ。
- 本作は、ヴァイナルで1万円でリリースされたわけですが、そのことを初めて聞いた時はどう思われましたか?
Javier:素晴らしいアイディアだよ(笑)。音楽もビジネスだからね。 彼は「Still In Love」の時から時間もエネルギーも制作費もたくさん費やしているわけだし、彼にとってとても価値のある作品だから、それに見合う価格を設定したんだと思う。とてもいいアイディアだと思うよ。
- これは沖野さんが昔自身のブログでなぜ1万円のCDを売るのかについて書かれていたことの1つに、日本でCDはアルバムで¥3,000、iTunesで大体1曲¥200。これっておかしいんじゃないか。洋服だったらファストファッションから高級ブランドまで、ブランドによって同じような商品なのに値段は全然違うのに。この解釈に私は妙に納得したのですが、この話を聞いてどう思いますか?
Javier:その考えは間違いではないと思う。もっと音楽を信じてもいいと思うよ。
Luis:レコードは特別なものだしね。
Javier:確かに音楽は洋服や映画と似ていて、レコーディング、リミックス、マスタリング、プレスと、制作にとても時間と労力が必要で無料でできるわけじゃない。iTunesやSoundcloudでいくらでも楽曲が手に入るけどやっぱりヴァイナルやCDを購入するのは価値のあることだと思うよ。
Luis:キャリアも長くて、ヴァイナルがファンの手元に届くまでの過程を全部理解している修也だからこそできる設定だと思うし、すごくかっこいいと思うよ。
- カバーは原曲とほぼ同じことをすればいいけどリミックスは全く違うことをしつつ、オリジナリティーを残さないといけないといけないから難しいんだ。- - 曲をカバーするのとリミックスするのではどんな違いがありますか?
Luis:ジャズミュージシャンは既存のメロディーをスタンダードに演奏するのが普通だからね。カバーは、原曲とほぼ同じことをすればいいけど、リミックスは全く違うことをしつつ、オリジナリティーを残さないといけないといけないから難しいんだ。
Javier:昨年は23曲もリミックスをしたんだ。どの曲も全く違う仕上がりになっているよ。
- 今回、4ヶ月という早いペースで再来日なのですが、前回の"AIR"でのパーティーはいかがでしたか?また、今回はライブでも出演ですが、どういったパフォーマンスになるのでしょうか?
Luis:"AIR"でのパーティーは、今年1番といえるくらい最高だった。今回はキーボードとパーカッションだけ生音で演奏するよ。
- 今回の公演のラスト2時間はKyoto Jazz Massiveとの兄弟Back to Backと伺ったのですが。
Javier:僕らがプレイを中断すればそうなるね(笑)。今回のギグの後、寝ずに上海に飛ばないといけないんだ。だから2、3時間B to Bをやってそのまま会場を出るんじゃないかな。
- いつ日本に着いたのですか?
Luis:水曜日の朝だよ。
- 今日のギグ以外に何かプランはありましたか?
Javier:飲んで遊んで飲んで遊んでって感じだよ(笑)。前回来た時はオフがあまり無かったから、今回はオフが2日あって日本を満喫しているよ。修也は、次来る時は1週間とか15日くらい滞在した方がいいって言ってたよ。僕らは日本の文化が大好きだしいろいろなところにも行ってみたいから、次はそうしようと思う。
- どこか行きたい場所はありますか?
Javier:次こそは東京タワーに行きたいよ。本当は今日行こうと思ってたんだけど雨がひどいから止めたんだ(笑)
Luis:今回は浅草にも行った。料理にも興味があってレストランもたくさん行ったよ。
- 今後の予定を教えてください。
Javier:「Sound Of the Falls」のLPが今月リリースされるよ。10月にはレーベル〈Mother Recordings〉から、11月には〈Poker Flat〉からもリリースが決まってる。今年はリミックスよりオリジナルの制作に重点を置いているんだ。Gilles Petersonのリミックスも今作業中だよ。〈Sonar Kollektiv〉レーベルのSPRINGのリミックスも手がけているところだよ。