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Kenny Dope

実際には初めてというわけではないんだよ。1992年にFREEZEというレーベルから出したKenny Dope Presentsの「unreleased project」があって、shaggyやSuper Naturalなんかをフューチャーしたんだ。あと、1995年にはKenny Dope Presentsの第2弾として「Bucketheads」をリリース、これは世界中で200万枚くらい売れたよ。今回のアルバム「BLACK ROOTS」では、誰もやってないようなことにトライしたかったんだよね。みんな、ヒップホップやR&B、ディ-プハウスに走ってるなかで、レゲエやアフロサウンドを押し出したものをやってみたかったんだ。でも、こうやってちゃんとコンセプトのあるアルバムというのは、今回が初めてかな? 前のはリミックスなんかを合わせたような作品だからね。 そもそも僕はアート好きで、ジャケットも音楽と似たような表現をしたいと思って、アフリカ大陸をモチーフに選び、色合いも緑、赤、黄を使ったんだ。ある朝パッと目が覚めたときに「俺は『BLACK ROOTS』というアルバムを作るんだ!」って思ったんだよね。それが、そのままタイトルになっているんだ。シンプルに、土くさくて黒いものをやりたいという想いが、こういうアルバムを生んだんだと思うよ。 いや~、そういうわけじゃないんだよ。造語も多いかなぁ。1曲目の「COPTA」は警察のヘリコプターを指すスラングだし、3曲目の「Tuck」はBarbara Tuckerのことを考えながら作った曲だから。4曲目の「Asian Afro」は日本を思わせるような楽器の音が入っているんで、こうしたんだよね。まあ、そんな感じなんで、僕自身は意味がわかってるんだけど、みんなからすると、わかりにくいかもね(笑)。まあ、これも僕の「音楽って楽しくなくちゃ!」って思うところの一環なんだよね。こういうタイトルにすると、みんな「何このタイトル?どういう意味?」って思うでしょ?そういう、みんなをおちょくるようなところが、何だか楽しいんだよね(笑)。 これもトラックの響きで作ったというか、パッと浮かんできたんだよね。15年もの間、世界中のあちこちを旅してDJしていると、たとえば空港で聞いた音やタクシーの中で運転手がラジオで聞いていた音楽、そういうのが国の印象と相まって、中国や日本など、いろんな国が浮かんでくるんだよね。「Saigon」という曲は今回のアルバムのために作ったわけではなく、もとから寝かせていた曲なんだけれども、最後にくっつけておこうかなっ、と思ってラストの曲になったんだ。今回、アフロなイメージのアルバムといいつつ、日本のレーベルから出してもらえるという状況もあったしね。ちなみにこの曲には心臓の音が入っているんだけれど、「僕の心臓の音はまだ止まっていない、鳴りつづけていて、また次がくるかもよ?」というニュアンスを残したんだ。
ただ、はっきり言っておきたいのが、こうやってアフリカ、アフリカ言いながら最後にSaigonって出てきちゃうと「この人あんまり国名とか、世界のこと知らないんじゃないの?」って思われちゃうのは困るな。ちゃんと日本と中国の違いとか、わかってるから誤解しないでね(笑)。 そうだね。まあ曲というのは1曲生まれると、それがインスピレーションになって、また次が生まれてくる。Masters At Workでやっているのもそうだけれど、すべての作品は「旅=Journey」なんだと僕は思っているんだよね。こちら側が伝えたいストーリーが必ずそこにある。おっしゃる通り、まあ唐突に思えるかもしれないけれど、最後に「Saigon」という曲を持って来たのは着地点として、ここに到達したよっていうのもあるかもしれないね。 「They Can't Stop It」がメインカットかなぁ。全曲インストなんで、メッセージがあるというわけではないけれど、たとえば「Asian Afro」なんかが、日本の洋服屋で流れていたらクールだよね。 あはは。クールだね。そうなるとうれしいけど。 少しはね(笑)。ただ、保有しているレコードの数がすごいんで、ちょっと収拾がつかなくなってきてるんだ。だから、これ以上はストップせざるを得なくなってきてるんだよね。集めるのをストップした分、今まで集めたものをゆっくり楽しんで聞こうと思ってる。ただ、こうやって日本に来てレコードを買うのかと聞かれたら、答えはイエス!(笑)。今まで、いろんなコンピレーションをいろんなレーベルから出しているけれど、それは自分が発見した音楽を若い世代とシェアしたいからなんだよね。最近、特に音楽って変わってきてるでしょ? だからこそ、「こういうレコードもあったんだよ」っていうことを、ちゃんと若い世代にも知ってもらいたいんだ。DJ SPINNAやMUROなんかもそういう想いからコンピレーションを作っているんじゃないかな、と思うけどね。自分が影響を受けたソウルやファンクなどの音楽をどんどんプレイして、前面に押し出しているDJやプロデューサーって世界中にいるでしょ?僕の姿勢もそれに似通ったところがあるんだろうね。 ずっと応援してくれていてありがとう。今回のアルバムは今までとは、また違った一面が出ているので、楽しんでくれよな。