INTERVIEWS

浮気者

 
- やっぱり挑戦するしかないなって思います、自分が安心できるには。変な話ですけど挑戦するしか安心する方法がないんですよね。-
 
 
- 今回初めて武瑠さんのことを知ったのですが、過去の作品をリサーチしてみてすごくヴィジュアルに拘りのある方なのだなと思いました。人にどう見せるか?という部分に、すごく拘られてると感じました。


そうですね。音楽が好きというわけではないけど、このロックスター好きだなぁとかあったりするじゃないですか。音楽がもっとサビで盛り上がるようなポップスだったらいいのに、とか思うけども好き、みたいな(笑)。なので映っているものが格好良くないとだめだ、という意識はあります。
 
- 今回のMVはどのように作られたのですか?

監督にLIKIっていうチームと組んでいるんですけど、僕はこういうのがやりたいと要望を出しながら、お互いに話し合って詰めていきます。今回は、最初にジャケットのデザインが完成していたので、MVはそこから膨らませたイメージです。

 

  - 今作のMVだと制作にどれくらい時間がかかるものなのでしょうか?

撮影自体は1日ですが、あとはCGチームが寝ずに頑張ってくれたとしか言いようが無いです(笑)。相当頑張ってくれましたよ。もともと友達なんですけど、通常の企画では、できないレベルの作品だと思います。

  - 最近若いクラブ系の子がアルバムを出してインタビューを録ったのですが、クラブ系のアーティストはMVを作らないのがもったいないと言っていて、確かにその通りだなと思いました。YoutubeとSoundcloudに同じものをアップしてもYoutubeの方が再生回数が倍くらい良いらしいんです。武瑠さんのいるロック/ポップスシーンでは、インディーズの人もみなさんMVを作られていますよね。

でもエレクトロとかEDMだと相当良い映像作らないと、中途半端なことして失敗するのは怖いですよね。逆に初めて聴いたり見た人がどう思うんだろうっていうのは、めちゃくちゃ気になりますけど。この曲は、EDMとは言っているけど自分が育ったロックとかヒップホップとかEDMとかをぐちゃぐちゃに混ぜて再構築して作ったんです。例えばミニマムなものもできるけど、ミニマルに行ききるようなことは自分がやるべきことではないなと思ったので。

  - ちなみに歌詞に意味付けはされていますか?

そうですね、今回は「HELLYEAH」っていう意味だけ伝わればいいかなと思って作りました。リズムをすごく大事にしている曲なので、日本語の文法がそのまま通る曲を作ってもつまらないし、全部英語で作っても伝わらないし。リズム活かしてパズルみたいな形で書きました。「HELLYEAH」って「もちろん」とか「当たり前じゃん」という意味があるんです。「挑戦する?」とか「どこどこ行ってみる?」とかいう問いかけに対して、「当たり前じゃん」みたいな、そういった精神性を書きたかったのでそのフレーズをちりばめました。

  - 確かにパズルみたいな感覚っていうのは聞いてすっきりしました。言葉がリズムの1つという感覚は確かにありました。

そうですね、音としてリズムとして聴くことができて、歌詞カードを見たら歌詞が分かるようなバランスで書いています。

  - 映像主体で曲を作られたというお話がありましたが、なぜそういった経緯になったのでしょうか?

音楽を始めるきっかけがMTVだったので、MVをみて音楽をやりたいと思ったんです。ファッションとかこういう画を撮ろう、という想像から曲を作ったりします。

  - 最初に歌詞を見てドキッとしたんです。自分が好きな言葉に似ている言葉が入っていてちょっと嬉しくなったんです。「平坦なライフこそ恐怖」。自分の好きな言葉が、「リスクを背負わないことが1番のリスク」なんです。それとすごく似ていて共感できました。

意外と平坦とか平和って1番怖いなって思います。楽とかその時の気分で麻痺して、結局全部つまらないものになっていることって多いと思うんですよ。

  - ちなみに武瑠さん自身、そんな時期があったんですか?

SuGの活動休止から復活の流れを乗り越えて少し安心してしまったところがあるんです、やっと一息ついたな、みたいな。また始まったんですけど、ああやっと始まれたっていう落ち着きがあって、それが逆に不安要素になってしまったので。やっぱり挑戦しないといけないなと思いますね。変な話ですけど、挑戦するしか安心する方法がないんですよね。

   
- バンドやってた人じゃないと出せない世界観と、EDMを極めているTeddyLoid君のような人にしか出せない音と、いろんな要素が混ざり合って東京という雑多感が出た気がします。 -
 
 
- そこから浮気者がスタートしたんですよね?


そうですね、復活してから浮気者が最近始まって。SuGっていう本命がいて、いろんな人とコラボレーションする、浮気するっていう。意外とコラボレーションっていうのは、日本語にしたら浮気っていう言葉にはまるのに浸透しないのが不思議だなっていう感じです。

  - 前回ミニアルバムをリリースして今回がシングル1曲じゃないですか?それは何か理由があるんでしょうか?

やっぱり浮気者なんでね、フットワークは軽い方が良いかと。完成したらリリースして、間に合わなければリリースしない、という。あまり予定を決めるとつまらなくなってしまうので。
 
- 今回の浮気相手は、TeddyLoidさんじゃないですか?昔から繋がりはあったんですか?

SuGで夏にリリースした「B.A.B.Y.」というシングルで、初めてシーケンスアレンジしてもらったんです。その時に前回の浮気者の「I 狂 U」っていうMVがめちゃくちゃ良かったという話をしてくれて。僕も、もともとTeddy君の音が好きだったので「是非何かやりましょう」と提案したんです。そしたら「是非浮気したいです」とのことだったので(笑)。

  - 武瑠さんは曲も書かれるんですよね。

はい、今作も作詞作曲しました。メインフレーズのメロディーをもともとギターで弾いていたんですけど、それをTeddy君にシーケンスに変えてもらったんです。
 
- 実際にTeddyさんと曲を一緒に作られていかがでしたか?

「HELLYEAH」はものすごい化学反応が起きたと思っています。Teddy君が作った曲にも聴こえるし、自分のメロディーと歌詞の世界観もしっかり出せた。お互いに殺し合うことなく良い部分が出せたと思います。浮気者のコンセプトは東京なんですけど、この曲は本当に東京でしか生まれない曲のような気がします。歌詞や曲調、MVも含めて。日本人が今出す音楽と言えるんじゃないかなと思います。バンドをやっていた人じゃないと出せない世界観と、EDMを極めているTeddy君のような人にしか出せない音と、いろんな要素が混ざり合って東京という雑多感が出た気がします。

   
- 僕の音楽背景は、ほぼスカパーでできてます。スペシャとMTVでいろんなMVを見てましたから。-
 
- 武瑠さんは今までどんな音楽背景を通ってきたのですか?

カウントダウンTVくらいしか見てなかったですよ、埼玉に住んでいたので。
ただ映像が好きだったので中学生くらいでミュージックっていうスカパーの番組で、100位から1位まで全部放送する番組があったんですけど、それを12時間くらいかけてずっと見たりしていました。あの時本当に良いMVが多かったんですよ。僕の音楽背景は、ほぼスカパーでできてます。スペシャとMTVでいろんなMVを見てましたから。

  - 12時間見ているっていうのは本当にすごいと思います。本当に映像が好きなんですね。

今思うとすごいですよね。中1の時とか休みの日に1日かけて見てましたから。音楽を始めるきっかけがMTVだったので、MVをみて音楽をやりたいと思ったんです。ファッションとかこういう画を撮ろう、という想像から曲を作ったりします。
 
-当時だったら、普通みんなプレステとかやってますよ。

確かにそうですね(笑)。でも100位からだから先週の放送と30曲くらいは一緒なんです。これ覚えてる、と思いながら見てしまっていましたね。

  - 音楽活動はいつ頃から始めたんですか?

高校からコピーバンドを始めました。

  - 誰のコピーをやられていたんですか?

もういろいろですね。hydeさんのソロとかSadsとか、ORANGE RANGEをチューニング下げて重くしてやってみたりとか。周りがみんなバンドやってて、みんなSum 41とGreen Dayやってて。俺もめちゃくちゃ好きだったんですけど、みんなやってるからあえてhydeさんやってました。パンクロック全盛期でしたからね。みんなハイスタとかやってたんであえてグラムっぽいのをやりたいと思って。その反動でメイクしたりするようになったんだと思います。あとDavid Bowieとかその辺のヴィジュアルが新鮮で面白いなと思っていたので。

  - ちなみに4つ打ち系の音楽は聴いてましたか?

いやどうでしょうね。本当にちょっとずつオムニバスとかで聴いていたんで。これ電子音楽っていっていいのかわからないですけど、Plus-Tech Squeeze Boxっていうユニットがいて、SEとかを混ぜまくるんですけど、それが衝撃的に格好良くてめちゃくちゃ影響されました。テレビの音とかでよく使われてますよ。今は、浮気者のチームに入ってもらって一緒にアレンジとかしてもらってるんです。好き過ぎてオファーしたらオッケー頂けたので。
4つ打ちだとなんだろうな。。本当に代表曲をちょっとずつ聴く感じだったので、流行っている曲ばっかり聴いていたんです。UsherとかRihannaが4つ打ちやってみました、みたいな曲は聴いてました。サビが盛り上がる曲が好きなんで。やっぱりもともとコード進行が無いと無理で。それに4つ打ちをプラスした感覚が好きなんだと思います。あとCAPSULEはずっと好きですね。Perfumeより前の時期から。

  - やっぱりメロディーが好きなんですね。

そうですね、「I 狂 U」もこの言葉のメロディーから作った曲ですし。多分自分が4つ打ちやっててもコード進行とか展開を付けると思います。それが自分がやる意味だと思うし。

 

  - 次はこういうのを作りたい、っていうイメージはあるんですか?

あるんですけどちょっとできなさそうなんですよ、もうちょっと先じゃないと。MVがすごく大変なんで1回見送らないといけないと思います。桜をモチーフにした曲があるんですけど、ちょっとできなそうですね。やっぱり年間4本くらいが限界なので。録りたいMVがいっぱいありすぎて順番待ちしている状態なんですよ。アイディアを1つの曲に詰め切らないでいくつかストックしておいて、使う時に一気に肉付けするという作業が多いですね。「HELLYEAH」の時も2年前にデモは作っていたんで。

  - じゃあまだ寝かしてる曲もいっぱいあるんですね。

めちゃくちゃあります。

   
- ちゃんと奥行きがあって本格的な要素が入っているのに、「HELLYEAH」っていう言葉のキャッチーさやサビの開き方で、Jポップ好きな人もちゃんと聴けるようなバランス感がうまく出せたんじゃないかなと思います。 -
 
 
- 米原康正さんとも仕事されましたよね?これは武瑠さんのアイディアだったんですか?


月刊シリーズは米ちゃんのアイデアですね。
米ちゃんとの出会いは、渋谷"clubasia"の楽屋が初めてでした。その時「あ、このおっちゃん見たことある、たしか写真録ってる人だ」と思って。たしか装苑かなんかで連載を見ていて知ってたんです。台湾の雑誌で見て米ちゃんを知ったんですけど、すごく良い写真を撮る方だなあと思っていました。会った時に「写真好きです」って言ったら「何やってる人なの?」って聴かれて、「SuGっていうバンドやってます」って言ったら、知ってるって言われて。はい出た、業界あるあるだ!と思って、「いや絶対SuGなんて知らないでしょ」て言ったら「いや本当に知ってるよ!」って言われて(笑)。本当に知っててくれたんです。女性しか撮らないイメージだったんですけど、「むしろ格好いい人がいたら男も撮りたいと思っているんだよ、何かやろうよ」って言ってくれて。本当かなと思ってたんですけど、とりあえずライブ誘ったら本当に来てくれたんです。すごく格好良かったから何か一緒にやろうよって言ってくれたんですけど、ちょうど活動休止になっちゃうタイミングで(笑)。復活したら何かしようという話だったのでちゃんと連絡を取り合って仕事を始めたんです。
米ちゃんに写真を撮ってもらって、それに曲を書くっていうのをやりたかったんです。実際に1曲書いたのがいろいろあって未発表になっちゃったんですけど、その曲を写真集につけるっていう計画があったんです。で米ちゃんが月刊シリーズでやらないかって提案してくれて、今回の写真集を発売することになったんです。

  - 月刊シリーズはすごいですよね。コンビニに並ぶわけですから。

アーティストでは2、3人目くらいらしいですよ。俳優色も強いですが金子ノブアキさんが最初で、その後にだと雅-MIYAVI-さんと新田桂一さんのコラボがあったみたいです。
 
- アーティストとしてもそうなんですが男が写っていることが珍しい気がします。

俳優は結構やってるんですよ。アーティストはやっぱり出れないんですよね、特にバンド系は絶対出れないと思います。

  - MVも作って写真集も出して音楽も作られていますが、他の分野で何かやられてみたいことはありますか?

曲提供はやってみたいですね。思い浮かぶけど自分が歌うのはちょっとなあ、みたいな曲は誰か女の子にでも歌ってほしいなあと思いますね。あとは空間デザインとか。

  - 曲提供は浮気者のプロジェクトでやろうと思えばできますよね?

そうですね、それもありかなって思いますね。

  - あと空間プロデュースですか?

基本的に頭に浮かんだイメージを音楽かデザインかに出力しているんです。でもすでにいろいろやり過ぎてるんで。(笑)。
自分が立っている場所ってものすごい独特な立ち位置だと思うんですよ。何のジャンルって言っていいのか、何の職種なのかわからない。曲も書くし、絵も描くしパッチワークもやるし本も書くし。でも今ってそういう人が結構少ないと思うんですよね。自分が小学校の時は、アーティストが大体ディレクションしてると思ってたんですよ。本当のところは知らないですけど。大槻ケンヂさんみたいにバンドもやってコメンテーターもやって小説も書いて、みたいな。自然とこういう方向に向かっていたという感じですね。
- バンドもあって結構スケジュール大変なんじゃないですか?

そうですね、ずっと何かしらやっていますね。稼働が無い日に歌詞とか曲とかの制作を進めたり、後はリアルタイムで思いついたものをメモったりとか資料集めたりしてますね。そうじゃないと追いつかないんです。あんまり休みっていうのはないですね。

  - もし完全な休みがあったら何をされますか?

本読んだりとか、なにか制作に繋がるようなことしかしないですね。昨年は、活動休止してたんで結構いろいろやりました。今しかできないことをしようと思って。車で遠くまで花を見に行ったりだとか、ボルダリングをやってみたりもしました。

  - ボルダリングのイメージは無かったですね。

すごい楽しかったです(笑)。あとやっぱり1ヶ月ニューヨークに行けたのは大きかったですね。学校も行けましたし。

  - ニューヨークで何の学校に行かれていたんですか?

語学学校に行ってました。すごく広がりましたよ、1ヶ月とはいえ。

  - 何が違うんですか?あの街は。

観光で行った時は、1週間しかなかったので詰め込むぞーって感じで観光気分だったんですけど、今回はもっと時間があったので観光じゃなくて実際の生活をしてみるっていうのがテーマだったんです。観光スポットじゃなくて実際に住んでいる若者たちが実際に食事するところ、遊びに行くところに行こうっていう。ホテルとか泊まらずにブルックリンにホームステイして、毎日地下鉄で1時間半かけて学校に通いました。あくまで普通のライフスタイルをすることによって見えてくる風景が全然違いましたね。
なんとなく生活の背景とか生活感がよく見えて、良い意味で憧れが抜けたのかな。日本人だからダメだっていう感じは払拭できたと思います。言い合いになったとしても本気で言い合えば勝ったりもするし(笑)。外人に勝てないイメージあるじゃないですか?でも英語そんなに分からなくても分かる英単語だけ言って感情で責め立てると意外に相手が引いたりするんですよ。だから完全に負けるわけじゃないんですよね。
ニューヨークだからってみんながみんなカッコイイわけでもないし。学校行ってて1番おしゃれって言われましたもん。ファッションボーイとか呼ばれて(笑)。どこで買ってんの?とかよく聞かれましたよ。日本人って何しても勝てないイメージありましたけど、全然そんなことなかったですね。遊びに行こうとかむしろ誘われましたし。

  - 海外公演とかは考えたりしないんですか?

やりたいですもちろん。

  - Youtubeで見たんですけどフランスでやられてましたよね?あれは浮気者ですか?

あれはSuGです。

  - すごいですねフランス公演。

結構反応よかったですね。あの後ドイツのレーベルから話が来たりもして、確実に行くことによって何かが起こるんだっていうことが実感できました。アートワーク的にも海外の人で好きな人が多かったりもするので。そこは生かさないと日本で立場が作れないと思うので。
ちゃんとキャッチーな入り口を持って立体的で奥行きのある世界観を出せたら良いなと思ってます。「HELLYEAH」とかは、そのバランスがすごくよく取れたと思っていて、ちゃんと奥行きがあって本格的な要素が入っているのに「HELLYEAH」っていう言葉のキャッチーさやサビの聴き方でJポップ好きな人もちゃんと聴けるようなバランス感がうまく出せたんじゃないかなと思います。

  - 「HELLYEAH」のトラックは、バキバキのEDMトラックなので、普段ダンスミュージックを聴かない人にとって、興味を持ってもらえるような結果が生まれたらいいなと思いました。

そういうイメージですね。僕はアンダーグラウンドとオーバーグラウンドの架け橋というか、片方だけじゃなくてもっと深みに引きずり込む役でいたいなと思ってます。clubberiaに出てJUNONにも出てる人っていないんじゃないかなと思うんですよね。それが自分の中でも結構象徴的で、両側に立っていられる人でいたいです。欲張りですごく難しいことなんですけど、プレゼンターみたいな位置にいたいなって思います。

  - Release Information -

アーティスト:浮気者
タイトル:HELLYEAH
発売日:9月22日
価格:¥250

■iTunes購入ページ
https://itunes.apple.com/jp/album/hellyeah-single/id914505310

■浮気者特設サイト
http://uwakimono.ponycanyon.co.jp/