その彼が、10月24日(土)に新木場ageHaで開催される「WIRED CLASH」で初来日を果たす。そのサウンドはいかにして生まれたのだろうか。UKシーンや来日への思いを含め、彼に話を聞いた。
Interview & Text:GREYHOUND
「僕にとって、何もないところからエレクトロニック・ミュージックを制作することは、たった一度の人生を経験していることと同じなんだよ」
——こんにちは。まずはあなたのことを知らない日本のみんなに自己紹介をお願いできますか?
ありがとう! 自分のことを説明するのはちょっと恥ずかしいし、多分それよりももっと重要な話があるだろうから、申し訳ないけどここは飛ばさせてもらうことにするよ(笑)。
——(笑)。では、名前のことから聞かせていただけますか? “Citizenn”という名義は、日本のアニメ『AKIRA』に出てくるバイクに貼ってあるステッカーから名付けたとお聞きしました。『AKIRA』との出会いはなんですか? この話を聞いただけで日本のみんなはあなたに対してすごく親近感を抱くと思いますよ。
僕は以前、いや、正直今でもものすごい漫画ファンなんだ。最初に漫画を好きになったのは『吸血鬼ハンターD』(エピックソニー)だった。友達のお兄ちゃんがVHSを持っていて、両親に隠れて一緒に見ていたんだ。シャワーシーンなどがあってR指定だったからね(笑)。それから漫画に興味を持つようになって集めるようになったんだ。けっこうなコレクションだったよ。子供のころに見た『AKIRA』は本当に衝撃的だった。そして大人になった今見ても熟成したワインのように深い面白みがある。最初にキャリアをスタートさせたとき、部屋の壁に『AKIRA』のキャラクターの金田が乗っていたバイクのポスターを貼っていたんだ。バイクにいくつか貼られているステッカーの中で"CITIZENN"と書いてあるものがひときわ目だって見えた。もちろん、時計のブランドだってことは知っていたんだけど、そこに秘められた反逆性を感じ、また字面がすごくきれいだったから、そこから名前をとる事にしたんだよ。
——これまでにあなたは<20:20 Vision>や<Madhouse>といった良質なレーベルからリリースをしていますが、今年<Crosstown Rebels>から発表した『Human Interface』は本当に素晴らしい作品でした。デビューアルバムとしてどんなことを表現しようと意識しましたか?
まず、アルバムを通じて僕自身のプロセスを表現しようと思った。スタジオで毎日を費やしている機材たちと自分自身との、ありのままの相互作用を表現したかったんだ。アルバムを作る前までは自分の製作したものがコンセプチュアルなレベルにまで達することはなかった。それまではパーティやレイブなどで自身が得た経験を音楽に落とし込んでいただけだったから、機材がどのように動作して音楽を奏でているのかをもっと深いレベルで探索したかったんだ。その探索によって僕たち人間は常にテクノロジーと接し、それらは人々の一部となり、テクノロジーに依存するように育ち、常にある自然との闘いのなかではそれなしでは生きていけないという考えに至った。僕にとって、何もないところからエレクトロニック・ミュージックを制作することは、たった一度の人生を経験していることと同じなんだよ。
——まさに今おっしゃったことが如実に現れた作品だと思います。生々しい肉体のようなサウンドとエレクトロニックなサウンドが絶妙にブレンドされていると強く感じました。アルバムタイトル『Human Interface』もそういった思いから付けられたのでしょうか?
どの曲も人間と機械によって構成されているからね。当たり前のようだけど、そこにはコンセプトがあって、その2つを混ぜ合わせることによって僕たち人間の姿を音楽に投影させているんだ。
——声ネタを使った楽曲が多いのも特徴ですよね。それらの音の断片が重なり合い、楽曲に暖かみを持たせている気がします。そういった楽曲を制作したのは意図的ですか?
そのとおりだよ! アルバムのコンセプトを体現するために生の声や楽器演奏などの要素を意識的に取り入れていったんだ。
どの曲も人間と機械によって構成されているからね。当たり前のようだけど、そこにはコンセプトがあって、その2つを混ぜ合わせることによって僕たち人間の姿を音楽に投影させているんだ。
——声ネタを使った楽曲が多いのも特徴ですよね。それらの音の断片が重なり合い、楽曲に暖かみを持たせている気がします。そういった楽曲を制作したのは意図的ですか?
そのとおりだよ! アルバムのコンセプトを体現するために生の声や楽器演奏などの要素を意識的に取り入れていったんだ。
——同レーベルからリリースした『Tied EP』に収録されている「Together As a People」では、あなたの別の一面が垣間見えたような気がしました。鬼気迫る展開で、UK特有のレイブ・ミュージックを彷彿とさせるサウンドもすごく印象的です。「FACT magazine」で公開されたミュージックビデオもとてもクールでしたね。
「Together As a People」 はほとんどアルバムの反動のような曲で、ダンスフロアから得た感覚を曲に落とし込んでいる。アルバムの制作がちょうど終わったころ、頭の中でボーカルが聞こえて。まるで、海の中で迷い込んだ異教の賛美歌のようにね。もしこれにデジタル・ディストーションとドラムマシーンが合わさったら……って生まれたんだ。まるで、ぼんやりとスカイネット(映画『ターミネーター』シリーズに登場する架空のコンピューター)に導かれたようだったよ(笑)。
——今のUKの音楽やファッション、そういったUKカルチャーは世界的に見ても勢いを感じます。あなたから見たUKのシーンについてお聞きしたいのですが。
UKのシーンは大好きだよ。常に革新的で、これまでも、そしてこれからもそうあり続けるだろうしね。シーンには必ずそのときの社会や政治的な観点から影響を受けたセンスが反映されているんだ。僕たちは主張と表現の民族で、たくさんの偉大なものがその理想の元に生まれてきたんだよ。
——ずっとイギリスで育ったのですか? どんな音楽を聴いて育ってきたのかすごく興味があります。エレクトロニック・ミュージックとの出会いやきっかけ、今までに影響を受けたアーティストなどがいたらぜひ教えてください。
ロンドンの北にあるノッティンガムという小さな町で生まれたんだ。大学のときにロンドンへ引っ越してきて、それからずっとロンドンに住んでる。ロンドンには僕らが恋に落ちる不思議な魅力がある。ここに住んだ皆がそうなるんだ。初めてエレクトロニック・ミュージックに出会ったのは正直いつだったかよく覚えていないんだ。エレクトロニック・ミュージックはイギリスの音楽カルチャーにおいて、とても大きな部分を占めていて、生まれたときからすでにあったからね。たくさんのアーティストの影響を受けているけど、その多くはミュージシャンではないんだ。僕は思想家や空想家、哲学者が大好きで、皮肉に聞こえるかもしれないけど、好きな哲学者の何人かはある種ミュージシャンみたいなものなんだよ。
——今回が初来日になりますが、日本についてどんな印象をお持ちですか?
日本に行くのは初めてだからとても興奮しているよ! 訪れてみたい国のひとつだったからね。多少は日本のカルチャーの事を知っているけど、日本にいる間は偏見を持たずに、目と心を開いて、ありのままの印象を楽しみたいと思うよ。
——日本でやってみたいことや、行きたい所などがあったら教えてください。
とくに決めてはいないから、その時々で面白そうなことをするつもりだよ。偶然に面白いことがあればいいな。サプライズが好きってわけではないんだけどさ(笑)。
——10月24日(土)の「WIRED CLASH」でのパフォーマンスを楽しみにしています。Richie Hawtinや、同じイギリス出身のRadio Slaveといった素晴らしいアーティストがラインナップされていますが、どんなパーティを期待していますか?
2人とも現存するシーンの偉大なレジェンドだからね。もちろん、絶対にクレイジーな夜になると思うよ。
——最後に日本のファンに、DJの意気込みやメッセージをいただけますか?
Live long and prosper!(スタートレックのバルカン人の挨拶より)
- Event Information -
タイトル:WIRED CLASH
開催日:2015年10月24日(土)
時間:23時~
会場:新木場ageHa
出演 : Richie Hawtin, Radio Slave, Takkyu Ishino×Ken Ishii, Joel Mull, Hito(ENTER.Sake), DJ Sodeyama, JIA(6AM/LA), Sunseaker, Citizenn, KINKY GROOVE (ALPH ZEN & Hiroki Yamada & Yoshiki Funatsu), The Beautiful Noise(NESS), Pleasure Cruiser × Sunda, Kazizi(GREYHOUND / GLIESE)REMO-CON, ni-21, Morphonics a.k.a 紙袋, BEPPU (U/X-TRAIN), ROLF U DIV (TCPT), Яinaly (TCPT), yucci (TCPT), Sayatec, keita×SHAKA
■clubberiapage
http://www.clubberia.com/ja/events/242565-WIRED-CLASH/