INTERVIEWS

TICON

 プログレッシブトランスのパイオニア、Filip MardbergとFredrik GilenholtによるユニットTicon。今やプログレッシブトランスシーン最大のレーベルに成長を遂げたDigital Structuresから「rewind」「Aero」などのヒットを記録し、現在も世界中のフェスやクラブからのオファーが、あとを絶たない彼ら。世界的なトランスブーム復活の中、待望の来日公演が実現する。11月14日(土)渋谷SOUND MUSEUM VISIONでの公演を控える彼に、音楽制作に対する思いやこだわり、現在のトランスシーンについて話を聞いた。

 

 

 
取りかかっているアルバムのテーマは、いわば「プログレッシブトランスのルーツ」というコンセプトで制作しているよ。
 

 

 

 
ーーTiconという名義でのキャリアは何年目になりますか? そもそもどういうきっかけで曲を作るようになったのですか?

 
自分たちはかなり若い頃からちょっとした音楽制作に触れてきたんだ。90年代の初頭だったかな、その頃はアンダーグランドなウェアハウスパーティーに毎週のように顔をだしてはスピーカーの真ん前で踊っていたよ。自分たちが住んでいるスウェーデンのマルメにはSon-Kiteたちも住んでいて、ちょうど2000年に彼らが始めたDigital Structuresというレーベルで新たなアーティストを発掘しようとするフェーズだったんだ。僕らとSon-Kiteたちはパーティーを通じて顔見知りだったし、ちょうどその頃Fredrikは機材屋さんでシンセサイザーを売ったりしていたのもあって、ある時「レーベルをやるから曲を作らないか?」という話をされたのがきっかけかな。それからSon-KiteがDATテープ(Massimo VivionaやDer Dritte Raumなどが入っていた)でお気に入りの曲を僕らにわたして、こんな方向性でレーベルをやっていきたいんだけど、近い感じの印象で作れないかな? と依頼してきたんだ。それをヒントに最初に作った曲で契約することになったんだ。Ticonという名義では1999年から活動してるけど、曲の制作自体は90年代半ばぐらいからスタートしていたかな。
 

 

 

 
ーーシーンの変化の中で、自分たちがどのように変化してきたか、苦労してきたこと、うまく行ったことなど教えて下さい。

 
まず、僕らは曲を作る時に迷ったら自分たちの感覚を信じて、正直に従うようにしている。アルバムを制作する時は、必ず前作と違う何かにチャレンジすることを忘れないようにしている。まぁ、それが上手くいく時とそうじゃない時があるんだけど。でもリスクを冒さずして新しいものは生まれないわけで、それがあるからアーティストとしてやってこられているんじゃないかなと思う。楽曲制作を始めた20年前でさえも、その曲が持つ感覚や感情を常に追い求めていたし、それこそが今でも自分たちの原動力だと信じている。制作環境が時代とともに変わり、技術的に進歩していくことはもちろんだけど、音楽的にも自分たち自身へのチャレンジを忘れないようにすることでトランスシーンにアプローチすることを心がけているよ。そもそもヒット曲を生み出す前は、Ticonっていう名前さえ誰も知らなかったし、その頃にチャレンジしようとしていた初心を忘れないようにしてるかな。ミュージシャンとして今言ったような進歩、進化していくことは音楽制作をするうえでは必要なことだけど、一方で「らしさ」を維持することも当然重要だよね。Ticonにとってのそれは「エモーションとエナジーを併せもったグルーブを常に維持すること」かなと認識してる。まぁ音楽のことを言葉で説明するのは難しいんだけど、そこをブレないようにしているし、結果としてそれがTiconらしさとして認識されているんじゃないかな。ちなみにちょうど今取りかかっているアルバムのテーマは、いわば「プログレッシブトランスのルーツ」というコンセプトで制作しているよ。もちろん長年いろいろと試してきた経緯がある中で、自分たちはサイケデリックトランスやゴアトランスのシーンで育った経緯があるから、改めて原点回帰してみようかなって。
 

 

 

 
ーーとくにここ数年で世界的にもトランスシーンが再燃してるようにみえますが、自身でツアーを回り、実際に肌で感じることはありますか?

 
それはもう、本当にそうだと思う! そもそもトランスシーン自体が盛り上がっては落ち着いて、を繰り返しているから、今回のブームが再燃という感じでもない気もするけど、でもここ2~3年は大きな盛り上がりをみせているのは事実だね。あとはただ繰り返しているだけではなく、当然ジェネレーションとともに変化している。この流れを予測するのはもちろん難しいけど、年々ダンスミュージックシーンにいる若者たちも入れ替わりを繰り返している。エナジーにも波がある。ひとつだけ言えることは、僕らもこのダンスミュージックシーンに溺れた1人として、プログレッシブトランスの価値を最大限に引き上げて行きたいなと思っているよ!

 

ーー音楽を作るうえで、自分たちがこだわっていること、常に意識していることがあれば教えてください。
 
ダンスミュージックのすべてはダンスフロアで起きているわけで、僕らは左右のスピーカーからピュアに聴こえる場所が聖地だと思ってる。だから制作の際も必ず良いスピーカーの前のその場所に、そこがダンスフロアだと思って位置を取るんだ。まずそこで熟考する。曲の出来具合を確認する時も、それがエンジニア視点で音響的にどうかってことよりも、ダンスフロアに立つひとりの客だったらどう感じるか? を想定するように心がけている。これは制作を始めた頃から変わらずにやっているんだ。最近このアイデアを外で実験したことがある。スウェーデンの森の中で小さな家を借りて、森の景色を見ながら作業できるプリミティブなスタジオを仮設したんだ。そこでインスピレーションを得て、感じたままに出てきたアイデアを形にした、いわばワークショップ的なことを自分たちでやったんだけど、街中の普段のスタジオで生まれる音楽とは明確に違う何かがあったよ。街の生活だと余計な情報に囲まれてしまうんだ。ミュージシャンとしての競争や評価、くだらないことを知らず知らずのうちに気にして、ストレスを感じている…。 そこから一旦解放された環境は素晴らしくて、出てくるものも違うと感じたよ。また必ずあの森林ワークショップをやると思う(笑)
 

 

 

 
ーーTiconとしての制作活動において今後のビジョンなどはありますか?

 
ちょうど今、6作目となるアルバムの最後の曲を仕上げているところだよ。今回は本当に自分たちのルーツに立ち返った作品になっていて、実験的な意味でもよりディープでドライブ感のあるTiconらしさを表現できたと思う。来年Ibogaから発表予定だよ。あとはサイドプロジェクトとしてEmokとともに活動してるCritical Choiceのアルバムも制作していて、そっちでは別の実験としてオールドスクールな北欧トランスを試しているよ。
 

 

 

  
ーーまた日本に対し何か特徴を感じることがあれば教えて下さい。パーティーのことでも文化のことでも。

 
日本に住んでいると感じられないかもしれないけど、世界中のどこにも日本のような場所はないよ(笑)。日本に来た時はいつもエキサイティングだし、何か新しいことを知るし、親しい友人にも会える。本当に特別なチャンスだと思っているんだ。今回シンセサイザー屋さんは絶対にチェックする予定。あとは代々木公園に必ず行きたい。あとは焼き肉と餃子かな(笑)。
 
 
ーー日本にはTiconのファンがたくさんいますが、久々の来日に臨む意気込みを是非。
 
まずは、久々の来日が実現したことに対して本当に感謝しているよ。AtmosやSoといったラインナップとともに、この日は必ず最高の夜にすることを約束するよ! 楽しみにしています、どうもありがとう!
 

 

 

 
- Event Information -


タイトル:"Flux"
開催日:11月14日(土)
会場:渋谷SOUND MUSEUM VISION
時間:23時
料金:前売り 3,000円 W/F 3,500円 当日 4,000円
出演:【GAIA】"Flux" [LIVE SET] TICON [Iboga:Sweden], ATMOS [Spiral Trax:Sweden] [DJ SET] SO [Labyrinth/TRI-BUTE], DAIJIRO [Digital Block], Shinya Okamoto [Foureal Records] [DECORATION] KANOYA PROJECT
【DEEP】"Grasshopper Records & Green Magic" [LIVE SET] PROHECHT[Grasshopper Records] [DJ SET] HATTA[Grasshopper Records], DISC JUNKEY[Grasshopper Records], 426h [Green Magic], TAKU [Green Magic], MISTER [Green Magic] [DECORATION] GRASSHOPPERS
【WHITE】 [LINE UP] Daia Taguchi, aa, YUKINA
【D-LOUNGE】[LINE UP] HIYOSHI (Mindgames/Labyrinth). YUMII [ZENZEN] [DECORATION] AKARiYA

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